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22 レイヴンの一族 1
しおりを挟む眠っているブランシュを抱えて宿に戻ったちょうどその時、一羽の鴉がレイヴンの泊まっている部屋の窓を嘴で突いた。
結界魔法をかけていたのに干渉してきたソレをちらりと確認したレイヴンはブランシュをベッドに寝かせてから窓を開ける。
すると当然のように入ってきてレイヴンの差し出す左手の甲にちょこんと乗った。
「・・・何だ? 俺は用が無いが」
『俺が用があるに決まっているだろう』
「・・・・・・はぁ・・・」
面倒臭そうにレイヴンが鴉に声をかければ首を傾げて喋った。
コレは鴉一族が使う伝達魔法だ。
各々が自分の魔力を使って召喚する使い魔のようなモノ。
容姿が鴉なのは一発で相手先が分かるようにするためで、容姿は別に何でも良いのだが。
『おいおい、酷い対応だな。お前が嫁さん貰ったって聞いて駆け付けたってのに』
「・・・」
『黙秘したってもう一族皆に知れ渡ってるって! 諦めろ。明日で良いから里に顔見せに来い。良いか? 嫁さんの顔見せだからな? お前一人じゃないぞ。ちゃんと連れて来いよ、レイヴン。可愛い俺の弟ちゃん』
最後はハートマークでも付きそうな声音で言い放ち、イラッとするレイヴン。
「---分かったからサッサと去ね、クソ兄貴。---あ、その前に一つだけ・・・ブランシュは前世持ちだ」
『---おっとぉ・・・ソレは最新情報だ。了解。じゃあ明日、気を付けて来いよ』
「・・・分かった。昼には行けると思う」
『了解』
そう言って霧のように闇に消えた鴉を渋い顔で見つめた後、結界魔法を厳重にかけ直すとブランシュの元へ行き、靴を脱がせて衣服を緩めた。
寝衣に着替えさせようかと迷った末に、脱がせたらそのままでは終わらなさそうだとグッと堪えて、自分も軽く衣服を緩めるとブランシュの隣に滑り込んで目を閉じる。
---ああ、分かってたことだが面倒だ。
他のヤツの時は自分は無関係だとさほど気にも止めなかったが、いざ当事者となると面倒の一言に尽きる。
---だが、ブランシュを護るためにはコレはちょうど良い。
鴉一族は定期的に情報共有の為に集まる。
それ以外では一族の誰かが番いである伴侶を見つけたときに召集がかかるのだ。
まあ、定期的とは言いつつも鴉一族は毎分毎秒単位で情報を得ているので、単なる大義名分なわけだが。
よほど変なヤツが伴侶でなければ、一族はその伴侶を受け入れる。
今まで受け入れられなかった伴侶は、レイヴンの記憶する限りではいなかったはずだ。
---寧ろ・・・。
「・・・・・・絶対に気に入られるな・・・」
レイヴンは目蓋を開けると眉を顰めて深い溜息を吐く。
まず見た目が儚げ美人で、更には人並みになった言動に柔らかい雰囲気。
恥ずかしがり屋になってしまって、庇護欲をそそられる仕草。
レイヴンの惚れた欲目を抜いても絶対に可愛がられる予感しかしない。
「---あー、連れて行きたくねえ・・・」
悪態をつくレイヴンの隣ですやすやと眠るブランシュに抱き付くと、無理矢理目を閉じて眠ろうとするレイヴン。
鴉一族の里はここから遠い。
明日はソレなりに翔ぶ事になる。
今回は独りじゃないから早めに休んで起きなくては・・・。
だが・・・。
「ブランシュはきっと空の旅を喜ぶだろうな」
最初に森から連れ出したときの興奮状態を思い出してふっと笑う。
そして若干やさぐれた心をブランシュに癒して貰おうとブランシュの胸元に顔を埋めると、ブランシュは眠ったまま微笑んでレイヴンの頭を緩く抱き込んだ。
『・・・おやすみぃ』
「・・・・・・おやすみ」
今度こそ、眠りに落ちた。
※遅くなりました。
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