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38 農園とブランシュ 2
しおりを挟む「犬・・・・・・なんだって?」
僕の叫びにサンドが疑問符を浮かべて聞き返してきた。レイヴンも怪訝そうな顔だったので僕はしどろもどろに説明した。
『ええと、僕の前の記憶で、怖い物語の一部のシーンなんだけど・・・・・・湖の水面から逆さまに足だけにょきっと、ちょうどアレみたいに出てて』
「・・・・・・逆立ちで沈められてたってことか?」
『うん。詳しい内容は覚えてないんだけど、他にも凄い殺され方しててめちゃくちゃ怖くて』
「そっか、悪いこと聞いちゃったな。ごめんね」
猟奇殺人っぽくて怖かった。そう言ったらサンドが僕の頭をポンポンして慰めてくれた。レイヴンに速攻で手をはたき落とされてたけど。
「嫉妬が凄いな、レイヴン」
「じゃあ一応見られたし、移動するか」
「おい、無視かよ」
『次はどこかな?』
「お嫁ちゃんも!?」
サンドの揶揄いにガン無視スルーして僕を抱き上げるレイヴンに苦笑しながら気持ちを切り替える。笑いながらサンドがツッコんで来たがレイヴンにやっぱりスルーされた。うん、僕もスルーした。だって早く違うところが見たかったんだもん。
そうして次に来たのは人参っぽい野菜の一画。
・・・・・・でも色合いは人参っぽいけど、なんかイメージと違う。
いやだって、なんか目が、口が、付いてる。
そんでもって、勝手に畑から出て手足っぽいのが付いてて二足歩行で歩いてる。
『───歩いてるっ!?』
「え? 歩くよね?」
「歩くだろう?」
『歩かないよ!! そんでもって顔や手足なんかないよ!!』
僕が思わずそう言えばサンドとレイヴンは当たり前のように返してきた。そんなわけないじゃん!?
何々、なんなの、この世界ではコレが当たり前なの!? ───ああでも、僕みたいな精霊とか魔物がいるんだしコレが当たり前なのかも!?
僕が混乱している中でサンドが説明してくれた。
「アレはマンドラゴラの一種で品種改良した半魔物かな。食べごろに育ったら自分でああして畑から出て来て収穫箱に入りに行くんだ。楽でいいだろう?」
「ちなみに土の中にいるヤツは引っこ抜くなよ。改良してあるが死ぬほど叫んで耳がヤバい」
「そうそう。お嫁ちゃんは触らない方がいいよ」
二人が淡々と説明してくれるけど頭に入らない。・・・・・・一応、触るなってことだけ覚えた。
「まあな、料理しなけりゃ形や生態は分からないもんな。気にして見に来てくれたってことだけでも生産者には嬉しいことだ。ありがとな」
『こちらこそ、美味しい野菜、ありがとうございます。僕には栄養にならないんだけど、とっても美味しいから』
そう言ってにっこり笑ったらサンドも照れくさそうに笑った。
「ヨシ、じゃあ一度ウチに寄ってけよ。俺の嫁さんとか兄弟姉妹紹介するよ」
「行くか、ブランシュ?」
『うん!』
黙々と自分から収穫箱に移動する人参っぽい野菜を見ながら、サンドの家にレイヴンの抱っこで移動するのだった。
※お待たせしております。普通に農園見学ツアーですね。
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