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後日談
4ー6
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「ああ、踏み割ったぞ。それがなんだ」と、執事長に向かって偉そうにふんぞり返っているギズルフの傍で、ミリヤムは目を見開き、両手を幽霊のように突き出してわなわなしていた。
視線の先では美しい人狼令嬢が怒りの滲む冷たい目で自分達の方を見ていた。その両脇を固める令嬢達も眉間に深い皺をつくり疑わしげにこちらを見ている。
ミリヤムは思った。やばい。何か不名誉な誤解を受けている、と。
ギズルフとクローディアの仲がギクシャクしているうちに、ある意味順調に妊娠出産育児期間に入ってしまったミリヤムは、クローディアとは自身の結婚式で少し顔を合わせたきりだ。
そしてミリヤムはハッとした。己が今、メイド用の制服を着ていることに。
育児は忙しかった。ミリヤムはどうせ育児中の私室には他人は来ないのだから着なれた服が一番だとかもっともらしいことを言いながら、性懲りもなく未だその愛着ある制服を身につけていてたのだ。
これでは傍目からは、傍若無人な若君と城のメイドが戯れているようには見えても、二人が義兄と弟嫁、もしくは──意味不明の保護欲に駆られた人狼とその保護対象、であるとは見られないだろう。
それが真実なのに、とミリヤム。
「……事実は小説よりも奇なり、とか言いますよね」
ミリヤムが思わず、ふっと口元だけをぎこちなく歪めて笑うと、隣でイグナーツが「アホ言ってる場合か!?」とわき腹を突いてきた。
小突かれながらミリヤムは彼の弟のにんまり顔を思い出す。
『僕ら獣人は人相より匂いだから。あんまり顔では相手を識別しないよ』
ミリーの顔、みんな殆ど覚えてないんじゃなーい? ……と、幾らか前にけらけら笑ってそう言っていたぽっちゃり少年を思い出して──ミリヤムは状況が思うよりも悪いことを悟る。
式にギズルフの婚約者として参列してくれたクローディア嬢に、正式にミリヤムが紹介された時、彼女はアデリナが近隣の商都から取り寄せたというお化粧品を使って化粧を施されていた。
わざわざ取り寄せになったのには、この領ならではの訳がある。
毛並み豊かな種族の集うこの辺境伯領では、“化粧”という概念が人族とはまったく異なるものだった。そもそも獣人女性達には、皮膚に直接色をのせるというお化粧工程がないのだ。
また、ローラントの言うようにお互いを匂いで認識する率の高い彼等は、強い香りの香水類も好まない。
ゆえに辺境伯領には、人族用の化粧品類は殆ど流通してはいなかった。
そういう理由でミリヤムの挙式の際には、それらは商都からわざわざ届けてもらうことなったのだが──
届けられた化粧品類の箱を開けた時、アデリナは一瞬顔を顰めた。
義母によれば、化粧水からおしろいまで、何から何までが香りが強すぎるという。
ミリヤムが匂いを嗅いでみても、それらは鈴蘭のような爽やかな香りが少し香る程度ではあったのだが、鼻のいい人狼達にとってはそうではなかったらしい。
──つまり──……どういう事かというと、前回ミリヤムがそこでふつふつとした怒りを顔に浮かべている令嬢と結婚式で顔を合わせた時、ミリヤムはその化粧品を使っていて、正しい“ミリヤムとしての体臭”で彼女に認識されたのかが怪しいという事だ。
現状、クローディアは彼女の婚約者の弟嫁を“鈴蘭の香りの人族の娘”として認識している可能性が高い。
ローラントの『僕ら人族の顔あんまり判別できて無いよ、うふふ』説が正しければ、クローディアはミリヤムの顔を覚えていないかもしれなかった。
それに加えて普段まともに化粧をしないミリヤムも、流石に結婚式の時はいつに無いバッチリメイクであった。今とはきっと人相も違う。
「……やばい、早く身元を明らかにして誤解を解かねば」
ミリヤムは自らの“どこの馬の骨だ”状態の現状に引き攣った。
しかし、ルカスには「いい大人の男女に余計な手出しをするな」とか叱られるし、彼女とギズルフとの仲がイマイチ微妙そうなところにきて子連れで押しかけるのは如何なものか……と挨拶に行きあぐねていた。
クローディアの為に影ながら(?)奔走していた時期もあったはずが、何故かこのままでは将来の義姉たる彼女に嫌われてしまう。双子の育児しんどいとか言ってないで、早めにクローディア嬢にご挨拶に行くべきだった、とミリヤムは後悔していた。
……だというのに……
当事者であるはずのギズルフは、クローディアの怒りの意味がちっとも分かっていないらしい。
「あいつなんで怒ってんの?」とでも言いたげなギズルフを、ミリヤムは思い切り叩いてやりたくなった。
が、いやいや、とミリヤムは頭を振る。
「……これ以上若様の頭を叩いて脳細胞を壊してはならない。これ以上、馬……、まぬ……、長閑な性格に拍車をかけては若様がただの脳筋貴族になっておしまいになられる……」
ミリヤムなりに言葉を選びながら、これ以上クローディア様にご迷惑お掛けする訳いないかない、とミリヤムはぶつぶつ呟いた。
そこへこのトリオ(※ミリヤム・ギズルフ・イグナーツ)唯一の常識人、イグナーツがどうするんだよとミリヤムの肩を揺らす。
「ご令嬢たちが物凄い顔でこっち睨んでんだけど……! おいミリヤム、どうすんだよ!!」
そんな白豹隊士に、ミリヤムは「ふむ」と、生真面目な横目を寄せる。
「修羅場未経験ですかイグナーツ様……。そうですねぇ、こういう時、私なら一先ず直球勝負ですね……」
一瞬、しんとした顔つきで考えていたミリヤムは──唐突にカッと目を見開き、深く息を吸い込んだ。
「……っクローディア様ぁあああ!!」
「っ!?」(ギズルフ、びくっとする)
「ちょっ!?」
イグナーツがあんぐりと口を開けた。
その間にミリヤムは、苛烈な瞳で自分を突き刺すように見ている三人の令嬢の方へ一目散に走って行く。
イグナーツは思った。あいつ考える振りして絶対何も考えてだろ!? と。
一方──
一目散に己の方へ駆けて来るメイド女を見て、クローディアはぎゅっと奥歯を噛んでいた。
娘は鬼気迫る表情で真っ直ぐに己の方へやってくる。
いい度胸じゃないか、ああここで直接対決してやろうじゃないかと、思った。
婚約者ギズルフの周囲をうろつく変なメイド娘のことはクローディアも前々から承知していた。
あれは浮気だという町の噂、友人達の忠言、そして彼女自身直接共に町を走り回っているのを見たこともある。生肉を手に追いかけられたり、町で知り合いと立ち話をしてたら意味不明に絡まれたこともあった。
娘の行動はクローディアには理解不能なものが多く……結果それらはきっとギズルフの婚約者である自分への嫌がらせの類いか何かなのだろうという考えに行き着いていた。
しかし、ここ一年と少しは娘の姿を見ることもなくて。しばらく噂も聞かなくなっていた。
友人達も「きっと二人が別れたのだろう」と口々に言い、クローディアも密かに安堵していたのだ。それなのに。
先程の様子を見れば、二人は別れてなどいなかった。
クローディアは眼光鋭く毅然と身構えた。
この辺境伯家の嫡男の正式な婚約者は自分なのだ。
きっとここで決着をつけて見せるわと、意気込んで、向かってくる娘を凛とした瞳でにらみつける。
(……絶対に、ギズルフ様は譲ったりしないわよ……!)
この時クローディアはふと、怒る反面、どこかであの途方もなく奔放でガサツな婚約者のことを、自分がとても愛していることに気がついた。
そうして改めて思う。どんな手を使ってでもギズルフの気持ちを取り戻して見せるのだ、と。こんな風に彼に対する愛情をありありと実感できたのは初めての事だった。
素早く視線を走らせると、当のギズルフは広間の反対側の入り口付近で、こちらを見ながらぽかんとしている。
(……ギズルフ様……)
目を覚ましてくださいね……と、クローディアはそっと想った。手紙をくれたじゃないですか、と。好きだと書いてくれて、花も贈ってくれた。あの時の金の瞳はけして偽りの気持ちを映していたようには見えなかった。
──と、その時──……
彼女達の傍まで駆けて来た憎い娘が──クローディアの前に仁王立った。
大地の色の丸い瞳で、きっとクローディアを見上げると、娘は叫ぶ。咄嗟にクローディアの身が引き締まり固くなる。そして迎え撃つように茶の瞳を睨み返す──……と、
「────我が、愛しの女神っっっ!!」
「…………………………………………え?」
諸手を上げて叫ばれた台詞に、一瞬、場全体がぽかんとして音を失った。
そして娘は転がり身を投げ出すような勢いで跪き、祈るような形で人狼嬢を見上げる。
目が充血して何だか怖い。
「美しき愛しの女神様!! 誤解です、私めは……クローディア様の方が好きです! 一番はヴォルデマー様とランドルフとルドルフですけど!!」
「……………………………は、ぁ…………?」
「因みに坊ちゃまは既に殿堂入りです」
「………………」
真顔で言う娘に、居合わせた常識人は皆、瞳を瞬かせるのも忘れ唖然と見入った。そんな視線の中で、娘は「あれは実に十数年前、坊ちゃまの御髪を梳いていた時のことでございます……その金糸の髪の美しさに私めはうっとりと──」と……何やら長くなりそうな話を語り始めている。
そうして広間は疑問符で埋め尽くされていた。が──残念なことに常識人じゃなかった黒い人狼がカッと咆える。
「馬鹿者め!!!! 何が愛しの女神だ!! クローディアは俺様のものだと言ってるだろうが!!」
──そうしてギズルフはしんとした広間で、本日二枚目の床板を地団太で踏み割った。
辺りには、もうもうと砂煙が舞っている。
視線の先では美しい人狼令嬢が怒りの滲む冷たい目で自分達の方を見ていた。その両脇を固める令嬢達も眉間に深い皺をつくり疑わしげにこちらを見ている。
ミリヤムは思った。やばい。何か不名誉な誤解を受けている、と。
ギズルフとクローディアの仲がギクシャクしているうちに、ある意味順調に妊娠出産育児期間に入ってしまったミリヤムは、クローディアとは自身の結婚式で少し顔を合わせたきりだ。
そしてミリヤムはハッとした。己が今、メイド用の制服を着ていることに。
育児は忙しかった。ミリヤムはどうせ育児中の私室には他人は来ないのだから着なれた服が一番だとかもっともらしいことを言いながら、性懲りもなく未だその愛着ある制服を身につけていてたのだ。
これでは傍目からは、傍若無人な若君と城のメイドが戯れているようには見えても、二人が義兄と弟嫁、もしくは──意味不明の保護欲に駆られた人狼とその保護対象、であるとは見られないだろう。
それが真実なのに、とミリヤム。
「……事実は小説よりも奇なり、とか言いますよね」
ミリヤムが思わず、ふっと口元だけをぎこちなく歪めて笑うと、隣でイグナーツが「アホ言ってる場合か!?」とわき腹を突いてきた。
小突かれながらミリヤムは彼の弟のにんまり顔を思い出す。
『僕ら獣人は人相より匂いだから。あんまり顔では相手を識別しないよ』
ミリーの顔、みんな殆ど覚えてないんじゃなーい? ……と、幾らか前にけらけら笑ってそう言っていたぽっちゃり少年を思い出して──ミリヤムは状況が思うよりも悪いことを悟る。
式にギズルフの婚約者として参列してくれたクローディア嬢に、正式にミリヤムが紹介された時、彼女はアデリナが近隣の商都から取り寄せたというお化粧品を使って化粧を施されていた。
わざわざ取り寄せになったのには、この領ならではの訳がある。
毛並み豊かな種族の集うこの辺境伯領では、“化粧”という概念が人族とはまったく異なるものだった。そもそも獣人女性達には、皮膚に直接色をのせるというお化粧工程がないのだ。
また、ローラントの言うようにお互いを匂いで認識する率の高い彼等は、強い香りの香水類も好まない。
ゆえに辺境伯領には、人族用の化粧品類は殆ど流通してはいなかった。
そういう理由でミリヤムの挙式の際には、それらは商都からわざわざ届けてもらうことなったのだが──
届けられた化粧品類の箱を開けた時、アデリナは一瞬顔を顰めた。
義母によれば、化粧水からおしろいまで、何から何までが香りが強すぎるという。
ミリヤムが匂いを嗅いでみても、それらは鈴蘭のような爽やかな香りが少し香る程度ではあったのだが、鼻のいい人狼達にとってはそうではなかったらしい。
──つまり──……どういう事かというと、前回ミリヤムがそこでふつふつとした怒りを顔に浮かべている令嬢と結婚式で顔を合わせた時、ミリヤムはその化粧品を使っていて、正しい“ミリヤムとしての体臭”で彼女に認識されたのかが怪しいという事だ。
現状、クローディアは彼女の婚約者の弟嫁を“鈴蘭の香りの人族の娘”として認識している可能性が高い。
ローラントの『僕ら人族の顔あんまり判別できて無いよ、うふふ』説が正しければ、クローディアはミリヤムの顔を覚えていないかもしれなかった。
それに加えて普段まともに化粧をしないミリヤムも、流石に結婚式の時はいつに無いバッチリメイクであった。今とはきっと人相も違う。
「……やばい、早く身元を明らかにして誤解を解かねば」
ミリヤムは自らの“どこの馬の骨だ”状態の現状に引き攣った。
しかし、ルカスには「いい大人の男女に余計な手出しをするな」とか叱られるし、彼女とギズルフとの仲がイマイチ微妙そうなところにきて子連れで押しかけるのは如何なものか……と挨拶に行きあぐねていた。
クローディアの為に影ながら(?)奔走していた時期もあったはずが、何故かこのままでは将来の義姉たる彼女に嫌われてしまう。双子の育児しんどいとか言ってないで、早めにクローディア嬢にご挨拶に行くべきだった、とミリヤムは後悔していた。
……だというのに……
当事者であるはずのギズルフは、クローディアの怒りの意味がちっとも分かっていないらしい。
「あいつなんで怒ってんの?」とでも言いたげなギズルフを、ミリヤムは思い切り叩いてやりたくなった。
が、いやいや、とミリヤムは頭を振る。
「……これ以上若様の頭を叩いて脳細胞を壊してはならない。これ以上、馬……、まぬ……、長閑な性格に拍車をかけては若様がただの脳筋貴族になっておしまいになられる……」
ミリヤムなりに言葉を選びながら、これ以上クローディア様にご迷惑お掛けする訳いないかない、とミリヤムはぶつぶつ呟いた。
そこへこのトリオ(※ミリヤム・ギズルフ・イグナーツ)唯一の常識人、イグナーツがどうするんだよとミリヤムの肩を揺らす。
「ご令嬢たちが物凄い顔でこっち睨んでんだけど……! おいミリヤム、どうすんだよ!!」
そんな白豹隊士に、ミリヤムは「ふむ」と、生真面目な横目を寄せる。
「修羅場未経験ですかイグナーツ様……。そうですねぇ、こういう時、私なら一先ず直球勝負ですね……」
一瞬、しんとした顔つきで考えていたミリヤムは──唐突にカッと目を見開き、深く息を吸い込んだ。
「……っクローディア様ぁあああ!!」
「っ!?」(ギズルフ、びくっとする)
「ちょっ!?」
イグナーツがあんぐりと口を開けた。
その間にミリヤムは、苛烈な瞳で自分を突き刺すように見ている三人の令嬢の方へ一目散に走って行く。
イグナーツは思った。あいつ考える振りして絶対何も考えてだろ!? と。
一方──
一目散に己の方へ駆けて来るメイド女を見て、クローディアはぎゅっと奥歯を噛んでいた。
娘は鬼気迫る表情で真っ直ぐに己の方へやってくる。
いい度胸じゃないか、ああここで直接対決してやろうじゃないかと、思った。
婚約者ギズルフの周囲をうろつく変なメイド娘のことはクローディアも前々から承知していた。
あれは浮気だという町の噂、友人達の忠言、そして彼女自身直接共に町を走り回っているのを見たこともある。生肉を手に追いかけられたり、町で知り合いと立ち話をしてたら意味不明に絡まれたこともあった。
娘の行動はクローディアには理解不能なものが多く……結果それらはきっとギズルフの婚約者である自分への嫌がらせの類いか何かなのだろうという考えに行き着いていた。
しかし、ここ一年と少しは娘の姿を見ることもなくて。しばらく噂も聞かなくなっていた。
友人達も「きっと二人が別れたのだろう」と口々に言い、クローディアも密かに安堵していたのだ。それなのに。
先程の様子を見れば、二人は別れてなどいなかった。
クローディアは眼光鋭く毅然と身構えた。
この辺境伯家の嫡男の正式な婚約者は自分なのだ。
きっとここで決着をつけて見せるわと、意気込んで、向かってくる娘を凛とした瞳でにらみつける。
(……絶対に、ギズルフ様は譲ったりしないわよ……!)
この時クローディアはふと、怒る反面、どこかであの途方もなく奔放でガサツな婚約者のことを、自分がとても愛していることに気がついた。
そうして改めて思う。どんな手を使ってでもギズルフの気持ちを取り戻して見せるのだ、と。こんな風に彼に対する愛情をありありと実感できたのは初めての事だった。
素早く視線を走らせると、当のギズルフは広間の反対側の入り口付近で、こちらを見ながらぽかんとしている。
(……ギズルフ様……)
目を覚ましてくださいね……と、クローディアはそっと想った。手紙をくれたじゃないですか、と。好きだと書いてくれて、花も贈ってくれた。あの時の金の瞳はけして偽りの気持ちを映していたようには見えなかった。
──と、その時──……
彼女達の傍まで駆けて来た憎い娘が──クローディアの前に仁王立った。
大地の色の丸い瞳で、きっとクローディアを見上げると、娘は叫ぶ。咄嗟にクローディアの身が引き締まり固くなる。そして迎え撃つように茶の瞳を睨み返す──……と、
「────我が、愛しの女神っっっ!!」
「…………………………………………え?」
諸手を上げて叫ばれた台詞に、一瞬、場全体がぽかんとして音を失った。
そして娘は転がり身を投げ出すような勢いで跪き、祈るような形で人狼嬢を見上げる。
目が充血して何だか怖い。
「美しき愛しの女神様!! 誤解です、私めは……クローディア様の方が好きです! 一番はヴォルデマー様とランドルフとルドルフですけど!!」
「……………………………は、ぁ…………?」
「因みに坊ちゃまは既に殿堂入りです」
「………………」
真顔で言う娘に、居合わせた常識人は皆、瞳を瞬かせるのも忘れ唖然と見入った。そんな視線の中で、娘は「あれは実に十数年前、坊ちゃまの御髪を梳いていた時のことでございます……その金糸の髪の美しさに私めはうっとりと──」と……何やら長くなりそうな話を語り始めている。
そうして広間は疑問符で埋め尽くされていた。が──残念なことに常識人じゃなかった黒い人狼がカッと咆える。
「馬鹿者め!!!! 何が愛しの女神だ!! クローディアは俺様のものだと言ってるだろうが!!」
──そうしてギズルフはしんとした広間で、本日二枚目の床板を地団太で踏み割った。
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