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ep2
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八咫校の校内トーナメントが明日に迫った。その日の帝都はざわついていた。そのざわめきの中を飛ぶ一匹の烏を見て人々は言った吉兆だと。しかし、この大日本帝国では烏は神の鳥だが海外のカラスは違う、災いをもたらすモノとして恐れられる。奇しくもそのカラスは同じ『からす』の名を持つ八咫校へと飛んだ。
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俺は校内トーナメントを翌日に控えた早朝、校長室に来ていた、当然俺を呼び出したのは目の前にいる天理である。
「それで、こんな早朝に呼んで何のようだ?」
「いや、私はこれから御前会議でな。今の時間でなければダメだったのだ。本題に入ろう、最近枢軸国の動きが不穏でな、やけに活発だった軍事演習がピタリとなくなった。もしや、この帝都にも入られているかもしれん。」
「それだけか?」
「あぁ、それだけだ。何かあるとしたら明日だろう、明日なら天皇陛下もご観覧なされる。そこを狙う腹づもりだろう。」
「そうか、なら。今日の内に俺が手を回して、ガーデンの一個小隊を入国させよう。」
「ほぉ、いいのか?何もなかったら骨折り損だぞ?」
「ふん、あいつに恩を売れるならば安いものだ。」
「ちっ、まあいいだろう。それと明日はあまり派手にやりすぎるなよ、お前がここにいることは陛下と私しか知らない。」
「ああ、わかってるよ。」
そう言ってゆっくりと扉を開けて出ていく。
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「さあ、始めるよー」
その声に合わせてリアクターを起動、そして計器類を確認する。
「リアクター安全領域で安定。計器類正常。」
サブパイロットとして後部シートに座っているの結衣が伝えてくる。
「各部位駆動確認。問題なく全部位駆動。」
外で見ている伊織が伝えてくる。
「よし、次は『高機動』の確認をする、離れてろよ。」
そうヘルメット内蔵のマイクを通し外の連中に注意を促し、リアクターの出力を戦闘可能領域まで上昇させる。
俺は足元のペダルを踏みだんだんと走らせていく。最高速度に達した瞬間、腰部のブースターを起動、それに引き続き脚部、背部のブースターを起動、跳ぶ。しかし、ブースターによって無理矢理に跳んでいるだけなのですぐに落ちる。しかし、腰部のウィングとブースターを吹かすことにより少し滞空しながら降りていく、その間に空を縦横無尽に駆ける。武士が着地したのを確認し、リサが試験終了を告げる。
それと同時に俺は武士のリアクターを通常状態まで落としてコックピットをから結衣と降りる。
「ふぅ、こんな機体じゃ並のパイロットなら死ぬなこりゃ」
「?、どうして?機敏に動いたと思う。」
首を傾げながら伊織が聞いてくる。
「そりゃ機敏に動けてたが、出力が高すぎて停止距離が長くなる。それはつまり機体を硬直させる時間が長くなるってことだからな狙われたら敵わん。それに切り返し全てにブースターを吹かしていたらすぐに燃料が無くなる。あとは、停止にもブースターを吹かせなきゃ衝突の勢いを殺せない。」
「んー、今からじゃ間に合わないし、今後の課題だねー。じゃ、リアクター外すよー」
「「りょーかーい」」
そう言って3人がリアクターを外していく。
「ふぅ、一仕事した後のお茶が一番だねぇ」
「リサは何もしてない、一番頑張ったのは凪兎」
「「そーなの!」」
「私だってリアクターとか外したりしたもん!」
リサ達といつものように談笑していると、少しこの生活が気に入ってしまったと思う。それでも、俺は表ではなく裏の人間。だから、俺が手の届くならば守ろうと決める。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さぁ、今日はこれでお開きにしよう。明日もあるしね。」
リサに言われて時計を見ると、気づけばもう17時である。今日は定期報告の日でもあるため俺は自室に戻ろうとする。
「ねぇ、凪兎」
伊織に呼び止められた。
「なんだ?」
「ついてきてほしい、見せたいものがある」
素直についていくと八咫校にある森の外れについた、そこには明らかにコンクリート製の古い格納庫があった。伊織は手慣れた様子で少し崩れた格納庫に入っていく、俺も遅れないようについていく。
中に入り俺は驚いた。中は白を基調として整えられていて、外観とは違いかなり綺麗にされている。が、至る所に工具は散乱しており、殴り書きのメモなども置いてあった、そして、大量のギア、そして『ガーデン社』製の兵器および同社の秘匿兵器が置いてあった。その様子から俺は察した。
「ここは村田博士の研究室か」
「その通り、ここは亡き父『村田 悠河』の研究室」
「こんなところで研究をしていたのか」
「やはり、あなたは驚かないようね。…貴方に見せるものがある。」
そう言ってまた奥へと進んでいく。伊織がライトをつける、そこに照らし出されたのは黒く塗られた鬼のような機体だった。黒塗りの悪鬼は至る所が壊れており、塗装が剥げ、脚がもげて、手がもげても必死に戦ったことがわかる。そして、俺は誰よりもこの機体に詳しい。
「幻影の鬼」
それは共に戦った機体、そして2度と戻らぬと思われた機体。
「これは父が命をかけてドイツ軍から奪い去った機体。なぜ奪い取ったのか、誰が乗っていたのか不明。だけど、シートに埋め込まれていた装備は唯一残っていた。」
そう言って、作業台に置いてあったハンドガンとナイフ、ヘルメットと戦闘服を差し出してくる。
「これは貴方のもののはず。父はこの機体の主が取りに来た時全てを渡せと言っていた。」
「そうか、村田の大馬鹿野郎はそんなことを…」
俺は機体の背面に向かう。それに伊織もついてきたが俺が構うことはない。背面の一部に血をつける。そうすると背部装甲が開き、リアクターが出てきた。そこには、
『T-001 タナトス』
そう書かれていた。その下には、『死神』と『戦乙女』が大鎌と剣をクロスする紋章が描かれていた。
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いつのまにか伊織はいなくなってしまっていた。
あとでお礼を言わなければと思いながら、部屋に帰ろうとしていると、メイン格納庫から火の手が上がっていることに気づいた。それを見て俺は武士・改が置かれているサブ格納庫の一つに走っていた。
幸いにもサブ格納庫は数が多すぎて全てに攻撃はできないため、まだ目的の格納庫は燃えていなかった。
なぜ攻撃なのか、それは燃え方が爆薬のそれだからである。機体格納庫には兵装の一切を置いていない。そこが爆薬によるような燃え方をする、それ即ち攻撃である。
格納庫に着く頃にはサイレンが鳴っていた。なっていたのはやはり敵襲のサイレンである。格納庫には伊織を除いた機体改造部の面々が揃っていた。しかし、なぜか莉愛が泣いていた。
「莉愛、どうしたんだ?それに伊織は…」
「凪兎、伊織が襲撃者に連れて行かれたらしい。何でも村田博士の最後の研究品をよこせと言っていたらしいの。」
「それに私が撃たれそうなのを庇ってくれて…」
話を聞いて舌打ちしながら格納庫を確認する。
「武士は動かせるか?」
そう質問するとリサが首を振って
「無理よ、リアクター格納庫なんかを先に攻撃したみたいなの」
そう聞いて俺は人の悪い笑みをうかべる。
「機体に問題は無いんだな?」
「ええ、そうだけど。パイロットスーツすらないのよ?」
俺は抱えていたリアクターを渡す。
「そいつをリアクター部に入れてくれ。リアクターの外装はあるんだろ?」
リアクターは二つに分解できる。制御装置の付いた外装とリアクターの本体が付いた内部装置、内部装置はかなり危険なので格納庫収納前に八咫校では外していたが外装は内部装置を外した後、再度入れていた。
「できはするけど…」
「なら頼む。俺は周りを掃除してくる。」
そう言って俺は伊織から渡されたパイロットスーツに着替えて多目的ナイフ、ハンドガンを手に取る腰に2つとも取り付け、村田の研究室に向かう。
研究室には歩兵用兵器も数多くある、その中でも使いやすいものを選び、持ち出す。
「さて、いくか。」
ヘルメットを装着し、戦術的情報共有システムを起動して情報を得る。
侵入した機体は20機、歩兵は80名前後で一機は戦線を離脱している。ギアのほとんどがトーナメント会場と格納庫に向かっており、歩兵は校舎にいるようだ。俺は迷いなく校舎に歩みを進める。
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「へぇ、会議室に人質を集める気か、周る手間が省けたな。」
そう言いながら監視カメラとの接続を切る。敵は電力供給用の外部電線を切っただけで監視カメラを無力化できたと思っているようだ。
会議室の一階上に陣取りラペリング降下を始める。ちょうど会議室の窓に取り付くとカーテンが閉められて中が見えないようになっていた。しかし、俺の付けているヘルメットは並では無い、視界に3Dで中の様子が映し出される。肩にかけていた軽機関銃をしっかりと構えてヘルメットの情報通りの場所に向かって撃つ。
ガガガ
軽機関銃がうなりを上げながら7.62mm弾を発射する、寸分の狂いなくヘルメットの情報と同じところに着弾し10名前後を無力化する。
弾切れしたのを確認して、軽機関銃を捨てサブマシンガンを手にする、そして窓枠を蹴り、振り子の原理を利用して窓から突入する。入ってすぐに遮蔽物に隠れる、突入時に確認した敵の位置に向かって最小露出でピークし、頭に1発撃ち込む。すぐに撃ち返されたがコンクリートの壁が防いでくれる。確認した敵は5人
「これで4人」
遮蔽を飛びだし接近する、左側に迂回しながらサブマシンガンを片手で連射、装備していたパワードスーツのアシストでブレることなく撃つ。敵の1人の胸に命中し貫通する。そこは
「後3人」
マガジンをリリースし、予備のマガジンに交換しながら敵の死体の陰から接近する。サブマシンガンを腰ダメで撃ち弾をばら撒く、運良く頭に命中。弾切れになる前に投げ捨てる。
「後二つ」
右手でナイフを抜いて接近、相手は銃を向けてきたが、もう銃を使う距離ではなくなっており首を掻き切ってやる。
もう片方は銃を捨てて格闘戦を挑んできた。
「後一つ」
相手の拳を躱し、懐に飛び込み、左手を相手の胸に向ける。装備していたトンファーのようなもののトリガーを引く。
ドン
と爆発音がして、相手の胸を杭が貫いていた。トンファー改め、小型パイルバンカーから手を離し、周りを確認する。人質には弾が当たったりはしていないようだ。確認した後すぐに別の場所に移動する。
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「ちっ、数が多いな」
俺は無線用の鉄塔近くにある分館に来ていた。無線封鎖ように2人、分館の人間の拘束に5人。さっきより少ないとはいえ俺の武器も刀と使い捨ての小型パイルバンカー2本、投擲用トマホークが4本しかない。細かく言えばまだあるのだが、メインで使えるのはこれだけしかない。
「まずは外からだな。」
鉄塔の敵に向かい屋根から飛び降りる。1人に向かってトマホークを投げ、もう1人は着地後すぐに刀で首を刎ねる。
無線用の回線にヘルメットを接続、知り合いのいる海軍省の秘密回線に繋ぎ、無線に出た将校に現在の状況を伝える。これで魔女も御前会議から急いで戻ってくるだろう。
「さて、あとは5人か。」
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御前会議場
「解体した関東軍の代わりに陸軍の本土防衛部隊を混ぜた新師団を使うと言うことで。」
「決まりですね。」
「これで現地人部隊を警邏に回せますな。」
一つの議題が決まり安堵していた中、会議場の扉が大きな音を立てて開かれ、若い海軍士官が入ってきた。手には電報を持っている。
「何事かね?」
陸軍将校が聞いた。
「神奈月天理様に至急伝です。」
一同が天理を見る。天理はため息をつきながら海軍士官に読み上げるように促す。
「八咫校が何者かによって襲撃を受けているとのことです。」
その報告を聞いて場の空気が凍りついた。八咫校は郊外とは言え帝都なのだ。
「それと、小型ながらタイタン級ギアも確認されているため、陸・海軍にも出動を要請しています。」
その報告は場を更に凍らせた。帝都に侵入されていること自体有り得ないがさらに、タイタン級ギアまで持ち込まれたのだ。各方面ともに焦り、どの部隊に出動させるか話し合いになった。
「では、海軍の特務陸戦隊を出動すると言うことで。」
そう言ったのは海軍大臣『山本 五十六』であった。
「私も至急戻らせてもらう。」
天理も急いで戻ろうとする。
「ならば、海軍の『鳶』を使うからそれに乗りたまえ。」
「感謝します。」
先程とは違う士官が入り、山本に駆け寄り耳うちする。
「お話中失礼、山本大臣に至急伝です。呉港の秘密ドッグにいたガーデンの秘匿艦が出航したようです。」
「「なっ」」
その報告はつまるところガーデンが本気を出して何かする気であるということである。そして、先程の報告と合わせると…
なぜ動いたかわかってしまった天理は胃が痛くなる。
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私、天堂陽菜は生徒会業務中に突如侵入してきた襲撃者によって担当教官ともども捕らえられてしまった。
どうにかして逃げるためにロープを解こうとしていたその時。
大きな音を立ててドアが飛んでいく。
「最近修理したばかりだったのに。」
思わずそんな言葉が出てしまった。
続けて黒い手斧が三本、襲撃者の頭を吹き飛ばし、鮮血が舞う。そして、新品のカーペットに落ちる。
黒い旧式のパイロットスーツを身につけた人間が突入してくる。黒いパイロットは刀を抜き、残りの2人の首を続け様に切る。
片方の首は飛んだが、片方は無傷で襲ってくる。切られた首元から金属の輝きが見える、ドラグーン級ギアを身につけていたのだ、これを知らずに反抗した1人の教官が殺されていた。
黒いパイロットはそれに慌てることなくトンファーを胸の辺りに突き付ける。
私には何がしたいのかが分からなかったが答えはすぐにわかった。ドゴン、と鈍い音がしてギアごと敵パイロットを杭が貫いていた。
これで助かった、そう思っていた。
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5人瞬殺した後に窓際に気配を感じ、後ろに跳ぶ。俺がさっきいたところには五本指の鋼鉄製のアームがあった。
「ちくしょう、タイタン級か!」
俺はこの部屋では危険と判断し、敵が開けた穴から飛び出す。そこで敵の機種が明らかになった。
外装をアメリカ製に似せているが、ドイツ製タイタン級ギア『ティーゲルII』だった、これで敵は枢軸国のどこかと断定できる。
俺は出来るだけ高速に動き回る。俺を一撃でチリにできる弾丸が雨あられと迫ってくるが、その全てを避ける。焦ったのかギアのアームを使った直接攻撃も飛んでくる、攻撃に合わせてギアに接近する。
そして、コックピットに向けてパイルバンカーを2本使うが、振り払われてギアから飛び退く。どうやら、小型とはいえギアの装甲は厚かったようだ。しかし、胸部装甲を剥がし、コックピットは露出した。それでも、パイロットは無傷のようだが。
こちらに武器がないと見て突撃してくる。しかし、刀を脳天に向かって投擲する、寸分の狂いなく敵パイロットの頭に命中し、命を刈り取った。
「さて、そろそろ戻りますかね」
ぞろぞろと現れた敵ギアを見ながら言う。
敵数5、対するこちらに武器は無し、腰のベルトに手をかけてスモークグレネードのピンを抜く。
シュー
という音と共に煙幕が辺りを覆い尽くす、このスモークにはフレア用の非燃焼熱源とマグネシウムを少々混ぜているのでギアの視覚装置でも俺の姿は見えまい。
そして、ギアが下がろうとするとマグネシウムが金属が擦れ合うことで着火しスモークが爆発した。
「たーまやー」
そう言って笑いながら村田の研究所に向かう。
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格納庫に戻るとリサ達が困り果てた顔で座っていた。
「どうしたんだ?」
そう聞くと莉愛が答えてくれた。
「何度試しても起動しないんです。私たちじゃ何がいけないのか分からなくて…」
そう言って泣きそうになっていた。
だが、起動できないのも無理はない、なぜならリアクターには電子ロックがかけられており起動できないのだから。
「それは大丈夫だ。それより、このメインカメラに交換できるか?」
「ぐすっ、それぐらいなら。でも、それツインアイですけど使えるんですか?」
そういいながらリサ達と取り付け作業をしていた。
ギアはほとんどがモノアイである。それは機体の各所にサブカメラを散りばめることにより今ではメインカメラ無しでもモニターは動くため、高価な高性能視覚装置を二つ使うよりモノアイにして見たいところだけ見れるようにした方が費用対効果がいいからである。
が、世の中には例外もあるのだ。
メインカメラを換装したあとに、各所に試作段階で使えないと判断された中で使えそうなものを装備した武士・改はもう別物であった。
「さあ、行こうか。」
武士の前に立つ。
「『起きろタナトス仕事の時間だ』」
俺がそう言うと、
キーン
という音と共にリアクターが起動し始める。そして、
《イエス、マスター〉
女性のような機械音声が格納庫に響く。
「おかえり、タナトス。」
〈マスター、こうしてまた会えることを嬉しく思います。ですが、かなりまずい状況のようですね。搭乗をお願いします、パイロット。〉
「ああ」
膝立ちになった武士に乗り込む。その間、リサ達はポカンとしていたので離れるように指示する。
〈戦闘システムスタンバイ、リアクター出力戦闘領域へ。〉
「りょーかい。地形データと敵残数データを反映してくれ。」
〈了。反映完了、それと同時に兵器のセーフティーロック解除。〉
戦闘に必要な全ての工程が終わる。
〈ホバーシステム起動〉
「さあ、始めようか。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キュイーン
両脚に取り付けられたホバー用装備がそんな音を立てながら空気を吹き出し機体を地面から20センチほど浮かせる。それによりかなりの高速移動を実現する。
〈前方100m、敵数5。機種ティーゲルII。〉
「了解。」
タナトスの報告を聞きスピードを上げる。こちらに気づいた敵は一斉に撃ってくるこちらのスピードの方が照準より早く当たることは無い。
「くらえ」
敵の一機に一瞬で接近、左手のパイルバンカーをコックピットに叩き込む。
バコン
と音がして敵を貫く。
そして、すぐに離脱しながら右手のアサルトライフルを乱射する。タナトスの照準補正により本来なら当たらないような撃ち方でも敵を撃ち抜き、全ての敵を殲滅する。
〈右200mから敵9機、同じくティーゲルII〉
「面倒だ、一気に決めるぞ。」
〈了解。マルチターゲットロックオンシステムスタンバイ。〉
全ての敵をロックオンしたのを確認し左肩部ミサイルを発射する。
〈全弾命中。後方1キロ地点で戦闘音。〉
「いくぞ。」
ブースターを噴かし一気に戦闘地点へ向かう。
〈敵12機、ドイツ製の最新タイタン級ギア『ティーゲルIII』〉
「ちっ、面倒だな。フィン最大出力、フライトシステム起動。」
〈了解、フライトシステム起動〉
機体が空を舞う。
「そらっ、喰らえよ。」
右手に持った無反動砲を一気に全弾撃つ。
撃ち切ると即座に捨て、ショットガンに持ち替える。一気に接近し、ぶっ放し追撃する。そして、即座に離脱する。弾切れのショットガンを捨て、アサルトライフルを持つ。再度敵機に接近し、パイルバンカーをぶち込む。
敵のカバーが来る前に少し下がり、援護にきた敵にアサルトライフルの弾をプレゼントしながらジグザグに接近しパイルバンカーを撃ち込み、バックブーストを噴かし離脱しながらミサイルを発射する。
タナトスにコントロールされているミサイルは全弾的に命中し、秘匿兵器たる力を見せつけるが如く当たった敵を一撃で粉砕した。
残っていた二機は俺を最大の脅威として認識したのかコンビネーションアタックを仕掛けてくる。が、甘い。
腰に装着されていた刀を抜き構える。そして、敵が接近戦で仕留めようと一気に詰めてくる。二機が剣で俺を横から斬ろうとし、次の瞬間、空を切った。
俺はバク転をするように飛び上がり、逆さまの状態でフライトシステムを解除、回転斬りを行いガラ空きの二機のコックピットに刀で横に薙ぐ、そうすると堅牢なはずのギアの装甲をバターのように切り裂き横に真っ二つにし、綺麗に着地する。
〈所属不明機多数。正門方面から来ます。〉
「ちっ、了解。」
ブースターで一気に加速し、パイルバンカーを打ち込もうとしたその瞬間。
〈敵味方識別信号に反応あり、大日本帝国海軍陸戦隊と判定。〉
陸戦隊のうちの一機のコックピットスレスレでパイルバンカーを止める。
よく見れば、正門方面の敵を殲滅してきたのか大小さまざまな傷が見える。そして、海軍のティルトローター機『鳶』も飛んでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ、よくまぁこんな短時間に戦果を上げたものだな。」
天理が皮肉を言ってくる。
「ふん、侵入を許したのが悪い。」
「まぁまぁ、御二方落ち着いて。それより、敵の追撃の話が先でしょうに。」
山本に諭されふざけるのを止める。
「で、村田の娘が攫われたのか。」
「あぁ…」
3人が一斉にため息をつく
「「「はぁ」」」
「なんでこういうとこだけ似るんだか」
「村田博士の優しさを受け継いだと思えば…」
「それでもだろ。」
3人は今は亡き友を思い出しため息をつく。
「それと、呉港の『アレ』を動かしたと聞きましたが?」
「あぁ、本気で相手をする。」
「わかりました。では、海軍でも取り計らいましょう。」
山本の協力が得られたということで大規模な作戦を行なっても問題ないだろう。
「どういう作戦なんだ?」
天理が聞いてくる
「まずは高知沖合で合同訓練をしているウチの赤城まで飛ぶ、そこで装備を換装し、九州沖合にいると報告があった敵オブジェクト級ギアを叩きに行く。」
「ほう、その敵の位置でしたら時間稼ぎにフィリピン方面の艦隊を出しましょう。」
「それならば近場の航空基地の航空隊も出そう。」
「海軍の試作品あったよな。それ貸してくれ。」
「あれ、輸送用なんですけど…。それと一応軍事機密なんですが…?」
ふざけながらも素早く確実な作戦が練られていく。どんな思惑があろうと正面から叩き潰してやる。さぁ、後悔するがいい。俺の悪友の娘、それも俺が、いや『私』が守ると決めた者を攫ったことを。
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俺は校内トーナメントを翌日に控えた早朝、校長室に来ていた、当然俺を呼び出したのは目の前にいる天理である。
「それで、こんな早朝に呼んで何のようだ?」
「いや、私はこれから御前会議でな。今の時間でなければダメだったのだ。本題に入ろう、最近枢軸国の動きが不穏でな、やけに活発だった軍事演習がピタリとなくなった。もしや、この帝都にも入られているかもしれん。」
「それだけか?」
「あぁ、それだけだ。何かあるとしたら明日だろう、明日なら天皇陛下もご観覧なされる。そこを狙う腹づもりだろう。」
「そうか、なら。今日の内に俺が手を回して、ガーデンの一個小隊を入国させよう。」
「ほぉ、いいのか?何もなかったら骨折り損だぞ?」
「ふん、あいつに恩を売れるならば安いものだ。」
「ちっ、まあいいだろう。それと明日はあまり派手にやりすぎるなよ、お前がここにいることは陛下と私しか知らない。」
「ああ、わかってるよ。」
そう言ってゆっくりと扉を開けて出ていく。
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「さあ、始めるよー」
その声に合わせてリアクターを起動、そして計器類を確認する。
「リアクター安全領域で安定。計器類正常。」
サブパイロットとして後部シートに座っているの結衣が伝えてくる。
「各部位駆動確認。問題なく全部位駆動。」
外で見ている伊織が伝えてくる。
「よし、次は『高機動』の確認をする、離れてろよ。」
そうヘルメット内蔵のマイクを通し外の連中に注意を促し、リアクターの出力を戦闘可能領域まで上昇させる。
俺は足元のペダルを踏みだんだんと走らせていく。最高速度に達した瞬間、腰部のブースターを起動、それに引き続き脚部、背部のブースターを起動、跳ぶ。しかし、ブースターによって無理矢理に跳んでいるだけなのですぐに落ちる。しかし、腰部のウィングとブースターを吹かすことにより少し滞空しながら降りていく、その間に空を縦横無尽に駆ける。武士が着地したのを確認し、リサが試験終了を告げる。
それと同時に俺は武士のリアクターを通常状態まで落としてコックピットをから結衣と降りる。
「ふぅ、こんな機体じゃ並のパイロットなら死ぬなこりゃ」
「?、どうして?機敏に動いたと思う。」
首を傾げながら伊織が聞いてくる。
「そりゃ機敏に動けてたが、出力が高すぎて停止距離が長くなる。それはつまり機体を硬直させる時間が長くなるってことだからな狙われたら敵わん。それに切り返し全てにブースターを吹かしていたらすぐに燃料が無くなる。あとは、停止にもブースターを吹かせなきゃ衝突の勢いを殺せない。」
「んー、今からじゃ間に合わないし、今後の課題だねー。じゃ、リアクター外すよー」
「「りょーかーい」」
そう言って3人がリアクターを外していく。
「ふぅ、一仕事した後のお茶が一番だねぇ」
「リサは何もしてない、一番頑張ったのは凪兎」
「「そーなの!」」
「私だってリアクターとか外したりしたもん!」
リサ達といつものように談笑していると、少しこの生活が気に入ってしまったと思う。それでも、俺は表ではなく裏の人間。だから、俺が手の届くならば守ろうと決める。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さぁ、今日はこれでお開きにしよう。明日もあるしね。」
リサに言われて時計を見ると、気づけばもう17時である。今日は定期報告の日でもあるため俺は自室に戻ろうとする。
「ねぇ、凪兎」
伊織に呼び止められた。
「なんだ?」
「ついてきてほしい、見せたいものがある」
素直についていくと八咫校にある森の外れについた、そこには明らかにコンクリート製の古い格納庫があった。伊織は手慣れた様子で少し崩れた格納庫に入っていく、俺も遅れないようについていく。
中に入り俺は驚いた。中は白を基調として整えられていて、外観とは違いかなり綺麗にされている。が、至る所に工具は散乱しており、殴り書きのメモなども置いてあった、そして、大量のギア、そして『ガーデン社』製の兵器および同社の秘匿兵器が置いてあった。その様子から俺は察した。
「ここは村田博士の研究室か」
「その通り、ここは亡き父『村田 悠河』の研究室」
「こんなところで研究をしていたのか」
「やはり、あなたは驚かないようね。…貴方に見せるものがある。」
そう言ってまた奥へと進んでいく。伊織がライトをつける、そこに照らし出されたのは黒く塗られた鬼のような機体だった。黒塗りの悪鬼は至る所が壊れており、塗装が剥げ、脚がもげて、手がもげても必死に戦ったことがわかる。そして、俺は誰よりもこの機体に詳しい。
「幻影の鬼」
それは共に戦った機体、そして2度と戻らぬと思われた機体。
「これは父が命をかけてドイツ軍から奪い去った機体。なぜ奪い取ったのか、誰が乗っていたのか不明。だけど、シートに埋め込まれていた装備は唯一残っていた。」
そう言って、作業台に置いてあったハンドガンとナイフ、ヘルメットと戦闘服を差し出してくる。
「これは貴方のもののはず。父はこの機体の主が取りに来た時全てを渡せと言っていた。」
「そうか、村田の大馬鹿野郎はそんなことを…」
俺は機体の背面に向かう。それに伊織もついてきたが俺が構うことはない。背面の一部に血をつける。そうすると背部装甲が開き、リアクターが出てきた。そこには、
『T-001 タナトス』
そう書かれていた。その下には、『死神』と『戦乙女』が大鎌と剣をクロスする紋章が描かれていた。
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いつのまにか伊織はいなくなってしまっていた。
あとでお礼を言わなければと思いながら、部屋に帰ろうとしていると、メイン格納庫から火の手が上がっていることに気づいた。それを見て俺は武士・改が置かれているサブ格納庫の一つに走っていた。
幸いにもサブ格納庫は数が多すぎて全てに攻撃はできないため、まだ目的の格納庫は燃えていなかった。
なぜ攻撃なのか、それは燃え方が爆薬のそれだからである。機体格納庫には兵装の一切を置いていない。そこが爆薬によるような燃え方をする、それ即ち攻撃である。
格納庫に着く頃にはサイレンが鳴っていた。なっていたのはやはり敵襲のサイレンである。格納庫には伊織を除いた機体改造部の面々が揃っていた。しかし、なぜか莉愛が泣いていた。
「莉愛、どうしたんだ?それに伊織は…」
「凪兎、伊織が襲撃者に連れて行かれたらしい。何でも村田博士の最後の研究品をよこせと言っていたらしいの。」
「それに私が撃たれそうなのを庇ってくれて…」
話を聞いて舌打ちしながら格納庫を確認する。
「武士は動かせるか?」
そう質問するとリサが首を振って
「無理よ、リアクター格納庫なんかを先に攻撃したみたいなの」
そう聞いて俺は人の悪い笑みをうかべる。
「機体に問題は無いんだな?」
「ええ、そうだけど。パイロットスーツすらないのよ?」
俺は抱えていたリアクターを渡す。
「そいつをリアクター部に入れてくれ。リアクターの外装はあるんだろ?」
リアクターは二つに分解できる。制御装置の付いた外装とリアクターの本体が付いた内部装置、内部装置はかなり危険なので格納庫収納前に八咫校では外していたが外装は内部装置を外した後、再度入れていた。
「できはするけど…」
「なら頼む。俺は周りを掃除してくる。」
そう言って俺は伊織から渡されたパイロットスーツに着替えて多目的ナイフ、ハンドガンを手に取る腰に2つとも取り付け、村田の研究室に向かう。
研究室には歩兵用兵器も数多くある、その中でも使いやすいものを選び、持ち出す。
「さて、いくか。」
ヘルメットを装着し、戦術的情報共有システムを起動して情報を得る。
侵入した機体は20機、歩兵は80名前後で一機は戦線を離脱している。ギアのほとんどがトーナメント会場と格納庫に向かっており、歩兵は校舎にいるようだ。俺は迷いなく校舎に歩みを進める。
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「へぇ、会議室に人質を集める気か、周る手間が省けたな。」
そう言いながら監視カメラとの接続を切る。敵は電力供給用の外部電線を切っただけで監視カメラを無力化できたと思っているようだ。
会議室の一階上に陣取りラペリング降下を始める。ちょうど会議室の窓に取り付くとカーテンが閉められて中が見えないようになっていた。しかし、俺の付けているヘルメットは並では無い、視界に3Dで中の様子が映し出される。肩にかけていた軽機関銃をしっかりと構えてヘルメットの情報通りの場所に向かって撃つ。
ガガガ
軽機関銃がうなりを上げながら7.62mm弾を発射する、寸分の狂いなくヘルメットの情報と同じところに着弾し10名前後を無力化する。
弾切れしたのを確認して、軽機関銃を捨てサブマシンガンを手にする、そして窓枠を蹴り、振り子の原理を利用して窓から突入する。入ってすぐに遮蔽物に隠れる、突入時に確認した敵の位置に向かって最小露出でピークし、頭に1発撃ち込む。すぐに撃ち返されたがコンクリートの壁が防いでくれる。確認した敵は5人
「これで4人」
遮蔽を飛びだし接近する、左側に迂回しながらサブマシンガンを片手で連射、装備していたパワードスーツのアシストでブレることなく撃つ。敵の1人の胸に命中し貫通する。そこは
「後3人」
マガジンをリリースし、予備のマガジンに交換しながら敵の死体の陰から接近する。サブマシンガンを腰ダメで撃ち弾をばら撒く、運良く頭に命中。弾切れになる前に投げ捨てる。
「後二つ」
右手でナイフを抜いて接近、相手は銃を向けてきたが、もう銃を使う距離ではなくなっており首を掻き切ってやる。
もう片方は銃を捨てて格闘戦を挑んできた。
「後一つ」
相手の拳を躱し、懐に飛び込み、左手を相手の胸に向ける。装備していたトンファーのようなもののトリガーを引く。
ドン
と爆発音がして、相手の胸を杭が貫いていた。トンファー改め、小型パイルバンカーから手を離し、周りを確認する。人質には弾が当たったりはしていないようだ。確認した後すぐに別の場所に移動する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ちっ、数が多いな」
俺は無線用の鉄塔近くにある分館に来ていた。無線封鎖ように2人、分館の人間の拘束に5人。さっきより少ないとはいえ俺の武器も刀と使い捨ての小型パイルバンカー2本、投擲用トマホークが4本しかない。細かく言えばまだあるのだが、メインで使えるのはこれだけしかない。
「まずは外からだな。」
鉄塔の敵に向かい屋根から飛び降りる。1人に向かってトマホークを投げ、もう1人は着地後すぐに刀で首を刎ねる。
無線用の回線にヘルメットを接続、知り合いのいる海軍省の秘密回線に繋ぎ、無線に出た将校に現在の状況を伝える。これで魔女も御前会議から急いで戻ってくるだろう。
「さて、あとは5人か。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
御前会議場
「解体した関東軍の代わりに陸軍の本土防衛部隊を混ぜた新師団を使うと言うことで。」
「決まりですね。」
「これで現地人部隊を警邏に回せますな。」
一つの議題が決まり安堵していた中、会議場の扉が大きな音を立てて開かれ、若い海軍士官が入ってきた。手には電報を持っている。
「何事かね?」
陸軍将校が聞いた。
「神奈月天理様に至急伝です。」
一同が天理を見る。天理はため息をつきながら海軍士官に読み上げるように促す。
「八咫校が何者かによって襲撃を受けているとのことです。」
その報告を聞いて場の空気が凍りついた。八咫校は郊外とは言え帝都なのだ。
「それと、小型ながらタイタン級ギアも確認されているため、陸・海軍にも出動を要請しています。」
その報告は場を更に凍らせた。帝都に侵入されていること自体有り得ないがさらに、タイタン級ギアまで持ち込まれたのだ。各方面ともに焦り、どの部隊に出動させるか話し合いになった。
「では、海軍の特務陸戦隊を出動すると言うことで。」
そう言ったのは海軍大臣『山本 五十六』であった。
「私も至急戻らせてもらう。」
天理も急いで戻ろうとする。
「ならば、海軍の『鳶』を使うからそれに乗りたまえ。」
「感謝します。」
先程とは違う士官が入り、山本に駆け寄り耳うちする。
「お話中失礼、山本大臣に至急伝です。呉港の秘密ドッグにいたガーデンの秘匿艦が出航したようです。」
「「なっ」」
その報告はつまるところガーデンが本気を出して何かする気であるということである。そして、先程の報告と合わせると…
なぜ動いたかわかってしまった天理は胃が痛くなる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私、天堂陽菜は生徒会業務中に突如侵入してきた襲撃者によって担当教官ともども捕らえられてしまった。
どうにかして逃げるためにロープを解こうとしていたその時。
大きな音を立ててドアが飛んでいく。
「最近修理したばかりだったのに。」
思わずそんな言葉が出てしまった。
続けて黒い手斧が三本、襲撃者の頭を吹き飛ばし、鮮血が舞う。そして、新品のカーペットに落ちる。
黒い旧式のパイロットスーツを身につけた人間が突入してくる。黒いパイロットは刀を抜き、残りの2人の首を続け様に切る。
片方の首は飛んだが、片方は無傷で襲ってくる。切られた首元から金属の輝きが見える、ドラグーン級ギアを身につけていたのだ、これを知らずに反抗した1人の教官が殺されていた。
黒いパイロットはそれに慌てることなくトンファーを胸の辺りに突き付ける。
私には何がしたいのかが分からなかったが答えはすぐにわかった。ドゴン、と鈍い音がしてギアごと敵パイロットを杭が貫いていた。
これで助かった、そう思っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
5人瞬殺した後に窓際に気配を感じ、後ろに跳ぶ。俺がさっきいたところには五本指の鋼鉄製のアームがあった。
「ちくしょう、タイタン級か!」
俺はこの部屋では危険と判断し、敵が開けた穴から飛び出す。そこで敵の機種が明らかになった。
外装をアメリカ製に似せているが、ドイツ製タイタン級ギア『ティーゲルII』だった、これで敵は枢軸国のどこかと断定できる。
俺は出来るだけ高速に動き回る。俺を一撃でチリにできる弾丸が雨あられと迫ってくるが、その全てを避ける。焦ったのかギアのアームを使った直接攻撃も飛んでくる、攻撃に合わせてギアに接近する。
そして、コックピットに向けてパイルバンカーを2本使うが、振り払われてギアから飛び退く。どうやら、小型とはいえギアの装甲は厚かったようだ。しかし、胸部装甲を剥がし、コックピットは露出した。それでも、パイロットは無傷のようだが。
こちらに武器がないと見て突撃してくる。しかし、刀を脳天に向かって投擲する、寸分の狂いなく敵パイロットの頭に命中し、命を刈り取った。
「さて、そろそろ戻りますかね」
ぞろぞろと現れた敵ギアを見ながら言う。
敵数5、対するこちらに武器は無し、腰のベルトに手をかけてスモークグレネードのピンを抜く。
シュー
という音と共に煙幕が辺りを覆い尽くす、このスモークにはフレア用の非燃焼熱源とマグネシウムを少々混ぜているのでギアの視覚装置でも俺の姿は見えまい。
そして、ギアが下がろうとするとマグネシウムが金属が擦れ合うことで着火しスモークが爆発した。
「たーまやー」
そう言って笑いながら村田の研究所に向かう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
格納庫に戻るとリサ達が困り果てた顔で座っていた。
「どうしたんだ?」
そう聞くと莉愛が答えてくれた。
「何度試しても起動しないんです。私たちじゃ何がいけないのか分からなくて…」
そう言って泣きそうになっていた。
だが、起動できないのも無理はない、なぜならリアクターには電子ロックがかけられており起動できないのだから。
「それは大丈夫だ。それより、このメインカメラに交換できるか?」
「ぐすっ、それぐらいなら。でも、それツインアイですけど使えるんですか?」
そういいながらリサ達と取り付け作業をしていた。
ギアはほとんどがモノアイである。それは機体の各所にサブカメラを散りばめることにより今ではメインカメラ無しでもモニターは動くため、高価な高性能視覚装置を二つ使うよりモノアイにして見たいところだけ見れるようにした方が費用対効果がいいからである。
が、世の中には例外もあるのだ。
メインカメラを換装したあとに、各所に試作段階で使えないと判断された中で使えそうなものを装備した武士・改はもう別物であった。
「さあ、行こうか。」
武士の前に立つ。
「『起きろタナトス仕事の時間だ』」
俺がそう言うと、
キーン
という音と共にリアクターが起動し始める。そして、
《イエス、マスター〉
女性のような機械音声が格納庫に響く。
「おかえり、タナトス。」
〈マスター、こうしてまた会えることを嬉しく思います。ですが、かなりまずい状況のようですね。搭乗をお願いします、パイロット。〉
「ああ」
膝立ちになった武士に乗り込む。その間、リサ達はポカンとしていたので離れるように指示する。
〈戦闘システムスタンバイ、リアクター出力戦闘領域へ。〉
「りょーかい。地形データと敵残数データを反映してくれ。」
〈了。反映完了、それと同時に兵器のセーフティーロック解除。〉
戦闘に必要な全ての工程が終わる。
〈ホバーシステム起動〉
「さあ、始めようか。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キュイーン
両脚に取り付けられたホバー用装備がそんな音を立てながら空気を吹き出し機体を地面から20センチほど浮かせる。それによりかなりの高速移動を実現する。
〈前方100m、敵数5。機種ティーゲルII。〉
「了解。」
タナトスの報告を聞きスピードを上げる。こちらに気づいた敵は一斉に撃ってくるこちらのスピードの方が照準より早く当たることは無い。
「くらえ」
敵の一機に一瞬で接近、左手のパイルバンカーをコックピットに叩き込む。
バコン
と音がして敵を貫く。
そして、すぐに離脱しながら右手のアサルトライフルを乱射する。タナトスの照準補正により本来なら当たらないような撃ち方でも敵を撃ち抜き、全ての敵を殲滅する。
〈右200mから敵9機、同じくティーゲルII〉
「面倒だ、一気に決めるぞ。」
〈了解。マルチターゲットロックオンシステムスタンバイ。〉
全ての敵をロックオンしたのを確認し左肩部ミサイルを発射する。
〈全弾命中。後方1キロ地点で戦闘音。〉
「いくぞ。」
ブースターを噴かし一気に戦闘地点へ向かう。
〈敵12機、ドイツ製の最新タイタン級ギア『ティーゲルIII』〉
「ちっ、面倒だな。フィン最大出力、フライトシステム起動。」
〈了解、フライトシステム起動〉
機体が空を舞う。
「そらっ、喰らえよ。」
右手に持った無反動砲を一気に全弾撃つ。
撃ち切ると即座に捨て、ショットガンに持ち替える。一気に接近し、ぶっ放し追撃する。そして、即座に離脱する。弾切れのショットガンを捨て、アサルトライフルを持つ。再度敵機に接近し、パイルバンカーをぶち込む。
敵のカバーが来る前に少し下がり、援護にきた敵にアサルトライフルの弾をプレゼントしながらジグザグに接近しパイルバンカーを撃ち込み、バックブーストを噴かし離脱しながらミサイルを発射する。
タナトスにコントロールされているミサイルは全弾的に命中し、秘匿兵器たる力を見せつけるが如く当たった敵を一撃で粉砕した。
残っていた二機は俺を最大の脅威として認識したのかコンビネーションアタックを仕掛けてくる。が、甘い。
腰に装着されていた刀を抜き構える。そして、敵が接近戦で仕留めようと一気に詰めてくる。二機が剣で俺を横から斬ろうとし、次の瞬間、空を切った。
俺はバク転をするように飛び上がり、逆さまの状態でフライトシステムを解除、回転斬りを行いガラ空きの二機のコックピットに刀で横に薙ぐ、そうすると堅牢なはずのギアの装甲をバターのように切り裂き横に真っ二つにし、綺麗に着地する。
〈所属不明機多数。正門方面から来ます。〉
「ちっ、了解。」
ブースターで一気に加速し、パイルバンカーを打ち込もうとしたその瞬間。
〈敵味方識別信号に反応あり、大日本帝国海軍陸戦隊と判定。〉
陸戦隊のうちの一機のコックピットスレスレでパイルバンカーを止める。
よく見れば、正門方面の敵を殲滅してきたのか大小さまざまな傷が見える。そして、海軍のティルトローター機『鳶』も飛んでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ、よくまぁこんな短時間に戦果を上げたものだな。」
天理が皮肉を言ってくる。
「ふん、侵入を許したのが悪い。」
「まぁまぁ、御二方落ち着いて。それより、敵の追撃の話が先でしょうに。」
山本に諭されふざけるのを止める。
「で、村田の娘が攫われたのか。」
「あぁ…」
3人が一斉にため息をつく
「「「はぁ」」」
「なんでこういうとこだけ似るんだか」
「村田博士の優しさを受け継いだと思えば…」
「それでもだろ。」
3人は今は亡き友を思い出しため息をつく。
「それと、呉港の『アレ』を動かしたと聞きましたが?」
「あぁ、本気で相手をする。」
「わかりました。では、海軍でも取り計らいましょう。」
山本の協力が得られたということで大規模な作戦を行なっても問題ないだろう。
「どういう作戦なんだ?」
天理が聞いてくる
「まずは高知沖合で合同訓練をしているウチの赤城まで飛ぶ、そこで装備を換装し、九州沖合にいると報告があった敵オブジェクト級ギアを叩きに行く。」
「ほう、その敵の位置でしたら時間稼ぎにフィリピン方面の艦隊を出しましょう。」
「それならば近場の航空基地の航空隊も出そう。」
「海軍の試作品あったよな。それ貸してくれ。」
「あれ、輸送用なんですけど…。それと一応軍事機密なんですが…?」
ふざけながらも素早く確実な作戦が練られていく。どんな思惑があろうと正面から叩き潰してやる。さぁ、後悔するがいい。俺の悪友の娘、それも俺が、いや『私』が守ると決めた者を攫ったことを。
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