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現場からロッカリポーターがお届けします
しおりを挟むああ、只今マイクのテスト中。
ベルクーリュー様、テンちゃん、これより昨日捕縛されました盗賊団のアジトの捜索が開始されます。現場は木々が生い茂る森の中。皆さん見て下さい!此処に穴があります!巧みに落ち葉や茂みで隠してあります!カモフラージュでしょうか?入り口横に根元から切られた低木があります。これで穴を塞いでいたのでしょう。空気は入りますし雨風は多少防げたと思います。台風シーズン吹き込んだ雨は如何していたんでしょう?
「良し入るぞ、ロッカ一応武器を構えろ、有るか?何か有ったら合図をするから、野営地の二人に直ぐに知らせてくれ」
有事の際は戦わずに逃げろと言う事ですね。
夕べ散々怒られちゃったからな。『今回みたいな時は、気づかれ無い様に元来た道を引き返すか森の中を迂回してやり過ごし町に報告しろ。出来無い事をするな。二次災害と同じで盗賊の収入を増やすだけだ』とそれはもうガミガミとひつこい位に叱られたよ。
言ってる事は理解できる。でも頭と気持ちは別物だよね。実際に、あの時迷ってたのに身体は戦闘モードでした。
が、ロッカは良い子です一応頷いておきます。
中に入る順番はリュシウォンさん・ローリーさん・私・ダンカルさんの順だ。
「ロッカ、勝手な行動はするなよ、もし中に誰かが居たとして、それが女でも老人でも勝手な判断で飛び出すな」
「?嘘かも知れない、芝居かも知れない?て事? 分かりました。判断はお任せします」
復習は続きます。
中を覗けば馬程度なら余裕で通れる位には広い通路、それでも長剣には不利なので解体位にしか使ってない短剣を出す。
「【ライト】を小さく灯せロッカ出来るか」
【ドーム】の中で使っていたからお得意なので頷いた。
是より集中しますので実況を中断します。
穴は結構深いみたい。一部手で掘った後も有るけど基本は自然穴。使いやすい様に手を加えたんだね。途中細い道もあるけど敢えて放置してる、あっ!落とし穴だ!良く見たら壁の一部分に凹みがある【鑑定】の結果少量の油が付いてる。
チャ・ラァーン
【探索】罠察知を修得しました。
おお!良い物が取れた。今日は是を使いながら過ごしてぇ、ある程度LVアップしたら【マッピング】と重ねよう。
「ロッカこういった細い道は大抵囮の道だな。地面を良く見てみろ足跡が無い、しかも表面は柔らかいのに直ぐ下は堅くなってる。行き来していたのに道幅も狭い。奥に罠があるな」
「おっ!勉強か!だったら俺も。この道が罠な証拠は壁の此処にも」
ローリーさんがさっきの凹みを指で擦り、
「此処は油を垂らすか布に油を含ませて使う明かり取りだが、壁が煤けて無いし指に付いた煤も僅か、敵を迷わせ誘き寄せ時間稼ぎの道だね」
「なるほど…」
スキルが無くてもこう言う所で判断するのか、覚えておこう。言い訳の材料に出来るね。
「1つ利口になったな」
「…………」
だめぇー頭をポンポンされると夕べ抱き込まれた事を思い出しちゃう。
「あれぇー?ロッカちゃん顔赤いよ」
「何でもありません!先に行きましょう!」
照れ隠しはバレてるみたい。前二人の肩が揺れてるし後ろのダンカルさんはグフグフ漏れてるから。
悔しいからダンカルさんに腹パンチ。私の手が痛いだけでした。
足跡、壁の松明の間隔や道幅。注意点を聞きながら、私のスキル【地図・マッピング・罠察知】と併せて捜索していく。
途中見張りの為か下っ端の部屋なのか狭い空間に粗末な寝具と数枚の着替え。そんな場所が数カ所。
盗賊といえどもプライバシーは確保していたのね。
「なんか臭いますね」
その言葉に男子三人が反応して、1つだけ木の板が立てかけられた場所をジッと見る。
「あー ここはいいんじゃ無いか」
行きたくないの?何があるの? …【マッピング】赤い点が2つ、生き物としか分からないけど動かないな。気になる~
「……なんか聞こえませんか?」
盗賊か魔物かどちらにしても放って置くのは拙いと思うんだよね。
「ちょっと見てくる」
【マッピング】で様子を見る。リュシウォンさんと思しき点が2つに接近し行くのが分かる。途中止まったがまた歩き2つの点と重なり3つの点が一列となり戻ってくる。
何時でも戦えるようにそれぞれが武器を構えて待機。暫くすると昨日から聞き慣れ始めた音が耳に聞こえてきた。
「ロッカお手柄だぞ」
新たなお馬さん二頭発見!こんな暗い場所で可哀相に。
「もう少し待っててね、絶対外に出してあげるから」
【生活魔法】で水を出し、カバンからホウキギとツルナを出して地面に置いてやった。
奥に行くに従って部屋は広くなっていった。部屋を回って発見した物はゴテゴテと飾り立てた剣や盾・鎧(実用的な物も有る)などの武器・防具。花瓶や布・食器・宝飾品などの盗品。肉と酒ばかりの食料庫。
「何これ… 肉ばっかり健康に悪いわ… 調味料が大量にある♡ ちょっと!ポーションは飲み物じゃ無いのよ、お酒と一緒にしないで!」
「まあまあ、これも全部持って行こうな」
「当然ですね、食べ物を粗末になんか出来ません!世の中には食べたくても食べられない事だって有るんです💢」
貯蔵庫の隣には広間的な空間が有り、その奥に盗賊の頭の部屋があった。隅にはゲームに有りがちな宝箱が置いてあって笑えた。
ビバ ファンタジーwwwwww
「先ずは頭の部屋と盗品の中からマジックバックを探そう」
手分けして探した結果、ウエストポーチタイプ2個とトランクタイプ、ボデーバックタイプ、ナップサックタイプ各1個見つかった。
「随分と有るな、もしかすると此奴ら『盗賊ギルド』の末端かも知れないな」
「『盗賊ギルド』?」
「ロッカちゃんは知らないか。非公式の闇ギルドで名前の通りの泥棒のギルドだね。非公式とは言っても、各ギルド組織の遙か上の方は、それなりに付き合いが有るそうだけどね」
へぇー、犯罪組織のギルドか。
「盗品もそこそこ有るが、これだけ【マジック・バック】が有ることを考えると、定期的に移動させているんだろう。大体、馬車一台に17人は多すぎる。…最後の仕事か、納める量が少なかったか?」
ヤクザや暴力団みたいに縄張りが有るのかな? そんで上納金も有ったりして。
「まあ、我々には関係ないな。通常は見かけたら潰す対象だし」
「そうだな、サッサと詰めて戻ろうぜ、腹減ってきた」
皆で手分けして荷造り、武器はリュシウォンさん、盗品をローリーさんとダンカルさん、食料は私、細かく軽い物は木箱に詰めてお馬さんに運んで貰おう。
旅慣れているせいなのか、ローリーさんとダンカルさんの手がとても早い。そんなにお腹が空いてるのかな?
「朝食は魚の燻製と昨夜のようなスープで良いですか?」
「魚の燻製? 魚も燻製の出来るの?」
「出来ますよ。液体や熱で溶ける物や生野菜なんかはムリですけど…大概は大丈夫かな?」
「……なら、食べる前に出してしまおう」
「同感だ」
何を??
「これで全部だな」
「ああ、取りこぼしは無い。しかし一番の宝はマジックバッグだな」
「うむ、俺たちが持っている物より容量が大きいのが一番の得だ」
マジックバッグは【空間魔法】を持った錬金術師が作ることが出来るそうだが、素材もさることながら魔力も半端なく、「私作れるよ!」なんて言った日には、依頼殺到・権力者に拉致監禁、魔力が枯渇するまで搾り取られる可能性が有るそうだ。
その為に市場に出てくるカバンはダンジョン産のみ。極希に出て来ることも有るが、訳ありの中古品や容量が小さい物、それでも値段は時価(常に最高値)簡単に手が出せる物でも無い。
【銀の翼】のマジックバッグもダンジョン産、今までパーティー財産だった物で、今回個人が一つずつ持てるのは凄いんだって。
「なぁ、リュシウォンとロッカは宿を取らずに俺たちの家に来いよ。その方がユックリとお宝が分けられるぞ」
「ああ、その方が良いな。そうしろ歓迎するぞ」
「そうだな、俺は急ぎの旅でも無いし、ロッカが良ければ世話になる」
「私? 良いんですか?」
「もちろん、買い物や調理・魔法。色々教えて貰うのに移動時間が勿体ないよ」
確かに…
「ではお言葉に甘えまして、お願いします」
「「こちらこそ」」
**************************
ホウキギ = 畑のキャビアと呼ばれるトンブリの事です。低カロリー、
食物繊維、ビタミンなどエトセトラ
ツルナ = 海岸の砂地に自生している多年草。βカロテン、鉄分が多く
ほうれん草の仲間。
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