俺と彼女の物語

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運命の日は突然に

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 今日は珍しく激しい雨が降る。俺、成田 蓮矢なりた れんやは彼女である幼馴染の柚月ゆづきの家から帰宅する途中だった。大雨の中、カバンを傘代わりにしていた。帰宅する途中で降り出した大雨は止む事を知らない。

「くそー、すげえ雨だな 」

 このままでは不味いと思った俺はバスに乗り込む事を決意した。スコールのような雨の中、バス停を目指して必死に走った。そして、屋根があるバス停に着くと一人の女性が立っていた。見た感じバス停に居るのは俺たち二人だけだ。

 女性はストレートな黒髪をハンカチで拭いていた。俺と同じように慣れており服とスカートは雨が纏わりついている。

(この人も雨の被害者か )

 一定の距離を保ちバスを待つ。会話もなく雨の音しか聞こえない状態が何度も繰り返された。先に口を開いたのは女性の方だった。

「凄いですよね。この雨 」

「そうっすね 」

 地面に打ち付けるように降る雨を見ながら今度は俺から話を切り出した。

「これから帰宅ですか? 」

「まぁそんな感じです。そちらは? 」

「俺もそんな感じです 」

 何とも言えない会話が続いていく。会話上手ではない俺は少し緊張しながらも会話を切り出した。バスを待つ間の暇つぶしみたいな感じだった。

「この辺りから近いんですか? 」

「そうですね....私はバス停から少し離れた先のマンションに住んでますね 」

「そうなんですかー 」

 女性の服装だけでは学生なのか社会人なのか判定出来なかった。年齢は俺と近い気はしている。

「あの、学生ですか? 」

 気になった俺は躊躇なく女性に学生であるか訊ねた。女性は俺の顔を見ると首を小さく縦に振った。

「一応学生です。訳あってしばらく休学してて、去年復学しました。大学三回生です 」

 俺が聞いた事もあって女性の方も同じ内容で聞いてきた。

「そちらも学生で? 」

「い、いえ。俺は去年卒業しまして、現在は漫画のアシスタントをしています 」

「そうなんですねー。ではいつか連載とかも? 」

「出来たらいいですけど....中々難しいそうです 」

 俺の夢は週刊連載だ。そして、アニメ化映画化されて人気のある漫画を描きたいと幼い頃から思っている。女性は漫画の話を聞いて興味があるのか離れていた距離を少し詰めて話を続けた。

「どんな漫画のアシストなんですか? 」

「隔週の漫画なんですけど....バトル漫画で....」

 俺は女性にアシスタント先の漫画について語った。女性は俺の話に相槌を打ちながら聞いていた。自分が今している事を人に語るのは滅多にない機会で少し恥ずかしかった。

「なるほど~。凄いですね! 」

「そうでもないですよ 」

 女性は俺の話をどんどん掘り下げてくれた。だから俺もこの人だったら話せると思い自分の夢の事について熱く真剣に語った。



「っていう感じです 」

「そうなんですね~ 」

「あ、なんかすいません 」

「謝らないでください! 私が聞いたんですから 」

 やがてバスがやって来た。俺はその女性とバスに乗り込むと空いている席に座った。

「隣座りますね~ 」

 女性は俺の隣に座った。二人とも身体が濡れており密着している訳でもないのに密着に近い身体の質感を味わっていた。

「あの、俺も名前聞いていいすか? 」

「あ、私は神楽 美羽かぐら みうです 」

「神楽....美羽....」

 神楽さんの名前は一度何処かで聞いた気がしたが全然思い出せない。俺が腕を組んで考えている最中に、神楽さんはスマホを取り出して連絡を取っていた。

「あの、神楽さんって彼氏とかいるんすか? 」

「あっ....そうですね....一応います 」

「一応って何すか? 」

 俺は笑いながら言った。一応という事は今別れかけなのか喧嘩中なのか、少なくとも訳がありそうだ。

「まぁ....その....連絡があまり出来てなくて..疎遠状態なんです 」

「遠距離とか? 」

「遠距離という程遠くはないですけど、彼氏が忙しくて連絡出来てなかったり....です 」

「なるほど 」

 バスが立花屋たちばなやという停留所に着いた。すると神楽さんは荷物を持ち席を立った。

「では成田さん、私ここで降りますので。さようなら! 」

「は、はい。さよなら 」

 神楽さんは軽く手を振って出口の方に消えていった。俺は神楽さんの後ろ姿を見ながら不思議な気持ちを抱いていた。神楽さんとまた会って話がしたいという気持ちが強く芽生えている。

「また会えるよな....きっと 」

 俺は忘れないように神楽さんの名前を心の中で復唱したのだった。
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