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18 マティアスとの再会
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カイル様とのねちこい…ひたすらねちこいセックスが終わり、途切れた意識が覚醒していく。
覚醒していくというか、何だかくすぐったくて目が覚めてしまった。
うっすらと瞼が開くと見えたのはカイル様の赤い髪の毛。
カイル様とのセックスが終わって、そのまま向き合ったままの状態で、横向きに寝転んだままの状態で私はカイル様に抱き締められている。
「………。」
もみもみ。むにむに。
余程お気に召したのか、カイル様は私のおっぱいに顔を埋めながら、背中に回していない方の手でもみもみとゆっくり揉み続けている。
すうすうと寝息が聞こえてくるので恐らく眠っていると思われるが…眠ったまま胸を揉むってカイル様器用だなと感心する。
そして膣の中にはもう毎度お馴染みの違和感。カイル様も私の中に入れっぱなしである。
マティアス様もヴァレリア様もそうだったが、皆ずっと入れっぱなし。
心地いいから私も全然構わないけれど、少し動けばこぽり。愛液と精液が混ざった液体が陰茎を伝ってシーツに溢れ落ち、空気に触れて冷たくなっているのは少し苦手だ。冷たい肌触りにそわっとしてしまう。
寝息を立てながらそれでも私の胸を離さないカイル様が何だかとても可愛く思える。…セックスの時はねちこすぎて殺されるかと思ったけど。
「……よしよし…。」
特に意味はなかった。ただ、可愛いなと思って。あと母性が沸いたのもあったけど、別に何かあって慰めたわけでもなく、ただそうしたかったから頭を撫でただけ。
そうするとぎゅっと私を抱き締めていた腕の力が強まって、…もしかして狸寝入りか…?と疑いの眼差しで見れば上目使いでじっと私を見る金色の瞳と目が合った。
「…起きてました…?」
「…頭…撫でられて……起きた…。…ほんと。……胸…ごめん…」
「…怒ってないですよ?」
「……うん……すごく…よく寝た……こんなに、…気分がいいの……初めてだ…。」
「…なら…よかった。カイル様が安心して眠れたなら、私も嬉しいです。」
「…………なんで、…カイル“様”…?…昨日、様、いらないって、…伝えた…。」
「あ……そうでしたね…。ごめんなさいカイル…。」
「ん…いい。
……サイカ……もう少しだけ…さっきみたいに、…撫でて。」
いいですよ、と私は丁度胸元にあるカイル様の頭を抱き締めながら、少し固い髪を撫でた。
起きても変わらずもみもみむにむにと胸を揉まれ続けたけれど。
三十分くらいそうしていた後、仕事があって帰らなくてはいけないカイル様と一緒にお風呂へ入り、カイル様にそれはもう丁寧に体を洗われ、甲斐甲斐しく世話を焼かれた私。
「……近い内に必ず……絶対、また来る、から……俺のこと、…覚えていて。
…今度は……ぎりぎりまで、いられるように……調整する…。」
そしたらまた、いっぱいいれてあげるから。とカイル様はちゅ、ちゅと私の顔中にキスをして、穏やかな顔で帰って行った。
「…爬虫類系イケメン……恐るべし…」
しかしとんでもなく色っぽい体だった。
特にあの腸腰筋……どすけべ過ぎたけしからん…。
また来てくれるのが楽しみだ。…死ぬかと思ったけど…まあ、それとこれとは別だ。とても気持ちよかったのは事実なので、またしたいことには変わりはない。懲りない私はやっぱりビッチ街道をばく進していると思う。
マティアス様が再び私に会いに来てくれたのは、カイル様が帰って一週間後、私とマティアス様が最後に会ってから…凡そ一ヶ月も経っていた。
オーナーから今日は陛下が来て下さるからね、と報告を受け嬉さ爆発の私。
一ヶ月振りに会える楽しみと一ヶ月会えなかった寂しさでよく分からない感情…。
貰った薔薇の花束もまだ枯れておらず、少しだけ色合いが落ちたような気がするけれどそれでもまだまだ綺麗に咲いてくれている。
マティアス様が来る前にお風呂に入っておこうと、一人暮らしをしていた時よりも広くて豪勢なお風呂場へ向かう。
私の自室になっているこの最上階の部屋や、高級娼婦のお姉様たちがいる部屋には必ず各部屋に風呂場がある。風呂場といっても銭湯のようなものじゃなくユニットバス。
高級娼婦を買う相手はそれなりに身分の高い人たちが多いそうなので。
そんなやんごとないお客様たちの為だ。勿論一緒に入ってにゃんにゃんしたりもする。
普通の…手頃な金額の娼婦を買う一般のお客様たちにはお風呂はない。
娼婦専用のお風呂(シャワー)はあったけど。
お客が皆で入れるような大浴場的なものもないので、一般のお客様は帰って体拭きなさい、がどの娼館でも常識みたいになっている様子。
「…新参者の私がこんないい部屋…申し訳ないけど…お風呂大好きな日本人としては有り難い…。」
私の部屋にあるお風呂も勿論ユニットバスではあるのだが…とても広い。
高級娼婦ではない、大部屋で生活している娼婦たちが使うお風呂場より全然広い。
そう…私がいる最上階はこの部屋一つしかなく…お風呂場だけで十帖はあろうかという広さ…正直一人暮らしをしていた部屋よりこの風呂場の方が広い。そして繊細な模様が描かれた…それこそこの世界基準での普通(ふくよか)な人たちが二人で入っても超☆余裕な、普通の猫足ではなくそれはそれは頑丈そうな猫足が付いたお洒落なバスタブがあるのだ。
毎日毎日あれだけ一生懸命働いても狭くて…でも自分の城になっていた日本の我が家と比べたら……泣ける。
「…ふう……あー…極楽う……」
バスタブに後頭部を乗せ浮力に身を任せる。
160㎝はある私の足先さえこの大きなバスタブには届かなくて、ゆらゆらとお湯の中で漂っていると心地よくて寝てしまいそうだ。
ぼう、とお湯に浮いた自分の体を見る。日本にいた頃と全く、全然全く変化はなくて、相変わらず可もなく不可もない体だ。自分の体で一番自信のある所は?と聞かれてもすぐ答えは出ない。というか自信などない。巨乳でもなければ美乳でもないし桃尻でもないしモデルみたいに足が長いわけでもないし。
だから不思議な気持ちになる。マティアス様やヴァレリア様やカイル様が私の体に夢中になってくれた事が。あの瞬きするのも忘れる程の超絶イケメンたちが、だ。
「……あれ?…何か…色変わってる…?」
ふと気になったのは胸だ。乳輪の色が所々赤紫に変わっている。…変わっているというか鬱血していた。
「…カイル様か!」
カイル様は終始、もにもにむにむにと私の胸を触りまくっていたし、何なら吸いまくっていた。
…その日一日はドレスの生地が胸に擦れるだけで痛痒かった記憶がある。そしてその度にちょぴり感じてしまっていた。
ちゅうう、と結構な力で吸われていたこともあったので、恐らくこの鬱血はカイル様のせいでもあるだろう。
そう。ここに来るまで一切生身の男とセックスをした事も…まして恋人さえいなかった私には分からなかったのだ。
この鬱血痕が、所謂“キスマーク”と呼ばれているものだとは。
そんなものが乳首周辺というか、乳輪付近にいくつも…。
変な知識は沢山あるのに(当然セックスに関してのみ)キスマークは知らないなんておかしな話だと思うだろうが言い訳をするなら私が持っているエロ本やエロゲーは女性向けではなくほぼ…いやもう全てが男性向けのものだったのだ。
可愛らしいキスマークを付けたり純愛まっしぐらなものは…私の持っている男性向けエロ本にはない。
そしてこの“キスマーク”が、とんでもない事態を引き起こしてくれることになる。
「サイカ…!」
「マティアス様…!」
「…ああ、サイカ…サイカ…!会いたかった…!どれ程サイカに会いたかったか…!」
「寂しかったです、マティアス様…!でも、会えたのがすごく嬉しいから、寂しかった気持ちがたった今全部無くなりました…!」
「嬉しい事を言ってくれる…!」
熱い抱擁を交わす私たち。
一ヶ月振りのマティアス様との再会。マティアス様は約束通り私に次の花束を用意してくれていた。花にも余り詳しくはないけど、多分ユリの花だ。真っ白の。
些細な約束事を覚えてくれていたことが嬉しい。
会えなくて寂しかったのも本当。会えて嬉しいのも本当だった。
商売女としてどうなのだろうと思うが、私はマティアス様たちをただのお客様としては見ていないのだと思う。
お客ではなく、マティアス様はマティアス様。他もそう。
会うまではただのお客でしかないけれど、会って話をして体の関係を持ってしまうとどうも彼らに対し、“お客”だという感覚はなくなるようだ。
多分、そういった意味ではこういう体を売る仕事には向いていないのかも知れない。
「…変わりなかったか…?体調を崩したりは…」
「至って健康そのものです。…マティアス様こそ、怪我や病気とかしてないですか…?」
「大丈夫だ。柔な方ではないからな。寧ろ人より健康かも知れない。」
「…よかった…マティアス様が無事でいてくれただけで嬉しい…。」
「…全く…これだから早く会いたくて堪らなくなるんだ…。」
ぎゅうう、と腕に込められる力。
お互いの鼓動や、息遣いまでも聞こえるくらいにぴったりくっついて、私は久しぶりに嗅ぐマティアスの匂いを堪能する。
男らしい、でも爽やかなマティアス様の匂い。好きな匂いだ。ドキドキもするけど凄く安心する。
「お帰りなさい、マティアス様。
お仕事お疲れ様でした…。」
「…ああ…ただいまサイカ。…寂しい思いをさせてすまなかった。
だが、いつもサイカの事を考えていた。この一月どう過ごしているか…どんな一日を送っているかと…毎日毎日。考えない日はなかった。」
「…嬉しい…。私も、いつまたマティアス様が会いに来てくれるかと思ってました。
薔薇の花束も嬉しかった。まだ綺麗に咲いてるんです。それから今日も…花束を持ってきてくれて…ありがとうございます。」
「ああ。サイカの可愛いお願いは叶えなければ。…それに…約束通りサファイアも付けてくれているな。」
「はい。これからもマティアス様をお迎えする時は必ず付けます。」
「そうか…。…ふう……こうしてサイカを抱き締めていると…やっと帰ってこれたんだと実感出来る…。」
「…ふふ…じゃあ、もっとぎゅっとして下さい。
私もやっとマティアス様に会えたって実感します。」
「……はあ……本当に可愛いな…。」
自然に唇が重なって、お互いに抱き締める力が強まる。
マティアス様は私の頭に手を添えて自分の方へ引き寄せ、私はマティアス様の広い背中にしがみつくようにして抱き返す。
この甘い空気に毎回毎回錯覚しそうになる。この人と私は本当に恋人同士ではないかと。
「………は…。」
「……ん……はあ…。」
「…ベッドに行こう…連れて行っても?」
「はい……お願いします」
ベッドまではたった数歩の距離。
マティアス様はそのたった数歩の距離を恭しく、まるで大切な宝物を運ぶように私を抱き抱えて歩く。
「…早く抱きたいと思うのに、勿体無いとも思うんだ…。
一月の間はそういう欲求が強かった。抑えるのを苦労するくらいに…。
眠る時は特に酷かった。サイカの姿ばかり思い出して。…だが…不思議だな…こうして会うと…すぐに抱くのが勿体無い。」
「…分かる気がします…。」
「抱きたい。でも話もしたい。もっとよく顔が見たいしこうしてただ触れ合ってもいたい…。はは、したい事が沢山あって困るな。」
「…じゃあ…前の時みたいに……いちゃいちゃします…?」
「…する。」
真剣な顔で返事をしたマティアス様に思わず笑ってしまった。
いつかの時みたいに広いベッドの上で。仰向けに寝転ぶマティアス様の上に寝そべって。
「…いつもと変わった事はなかったのか?」
「いつもと……あ、一つありました。私、この前初めて花街を歩いたんです。月光館に来て初めて、娼館の外に出たんです!」
「…男たちに囲まれなかったか?」
「それが……ふ、ふふ…!それが、オーナーの提案で……私、変装してたんですっ。」
「変装?」
「ドレスの下に五枚も大きなタオルを巻いて…それからウィッグに帽子、日傘まで…!どこからどう見ても別人だったんです…!」
「はは!そうか、別人か…!キリムも考えたな…いい判断だ。」
「昼間の花街はやっぱり人が少なくて…でも、思っていたよりいて吃驚もしました。娼婦だけかと思っていたけど、男の人もいて…!
オーナーと一緒に花街のお店を見回って、」
「それで…?」
時折お互いの顔や髪、手に触れながら、キスをしながらいちゃいちゃと過ごす。
私の話、マティアス様の話。会えなかった間の話やそれ以外にも沢山。
こういうのも楽しい、幸せかも…と思っていた時にマティアス様から着ているものを脱がないかと提案が。
どうやら布があるのがもどかしく、ピロートークみたいに素肌になっていちゃいちゃとしたいらしい。勿論私は一つ返事で頷いた。
「…ドレスの紐に手をかけるこの瞬間はいつも緊張する…。」
「どうして…?」
「…この布の下に隠れているものが露になるからだ。
ドレスで隠れたサイカの体が…どれだけ美しくいやらしく…そしておかしくなりそうな程気持ちいいか…もう、知っているから…。」
マティアス様の赤裸々な言葉にかあ、と顔に熱が集中する。
そんな事を言われたら恥ずかしいじゃないか。しゅるりと背中の紐を解かれる小さな音まで聞こえてしまう。
「…ちゅ、…ちゅ。…首まで赤くして……後で、沢山愛してやるからな…。」
唇だけでなく顎や首筋にキスを落とされ、はふ、と熱い溜め息が漏れる。
紐が解かれたことで緩んだドレスの襟に手をかけたマティアス様はゆっくりと下へドレスをずらしていく。
胸が空気に触れたのと同時にふる、と体が震え………そして何故か時が止まった。
あれ?とマティアス様を見れば、マティアス様は私の胸をじっと見ながら全ての動作を停止させているではないか。
「…マティアス様…?」
どうかしましたかと言いかけて…マティアス様が纏う空気がおかしいことに気付いた。
そう、これはまるで怒っているような、そんな冷たい空気だ。
「…マ、マティアス…さま…「なるほど…俺の他にサイカを買った者がいたか。」……え。」
「…こんな痕まで付けて……小賢しい。」
ばくばくと経験した事のない早さで鳴る鼓動はこれから起こることへの警鐘だった。
覚醒していくというか、何だかくすぐったくて目が覚めてしまった。
うっすらと瞼が開くと見えたのはカイル様の赤い髪の毛。
カイル様とのセックスが終わって、そのまま向き合ったままの状態で、横向きに寝転んだままの状態で私はカイル様に抱き締められている。
「………。」
もみもみ。むにむに。
余程お気に召したのか、カイル様は私のおっぱいに顔を埋めながら、背中に回していない方の手でもみもみとゆっくり揉み続けている。
すうすうと寝息が聞こえてくるので恐らく眠っていると思われるが…眠ったまま胸を揉むってカイル様器用だなと感心する。
そして膣の中にはもう毎度お馴染みの違和感。カイル様も私の中に入れっぱなしである。
マティアス様もヴァレリア様もそうだったが、皆ずっと入れっぱなし。
心地いいから私も全然構わないけれど、少し動けばこぽり。愛液と精液が混ざった液体が陰茎を伝ってシーツに溢れ落ち、空気に触れて冷たくなっているのは少し苦手だ。冷たい肌触りにそわっとしてしまう。
寝息を立てながらそれでも私の胸を離さないカイル様が何だかとても可愛く思える。…セックスの時はねちこすぎて殺されるかと思ったけど。
「……よしよし…。」
特に意味はなかった。ただ、可愛いなと思って。あと母性が沸いたのもあったけど、別に何かあって慰めたわけでもなく、ただそうしたかったから頭を撫でただけ。
そうするとぎゅっと私を抱き締めていた腕の力が強まって、…もしかして狸寝入りか…?と疑いの眼差しで見れば上目使いでじっと私を見る金色の瞳と目が合った。
「…起きてました…?」
「…頭…撫でられて……起きた…。…ほんと。……胸…ごめん…」
「…怒ってないですよ?」
「……うん……すごく…よく寝た……こんなに、…気分がいいの……初めてだ…。」
「…なら…よかった。カイル様が安心して眠れたなら、私も嬉しいです。」
「…………なんで、…カイル“様”…?…昨日、様、いらないって、…伝えた…。」
「あ……そうでしたね…。ごめんなさいカイル…。」
「ん…いい。
……サイカ……もう少しだけ…さっきみたいに、…撫でて。」
いいですよ、と私は丁度胸元にあるカイル様の頭を抱き締めながら、少し固い髪を撫でた。
起きても変わらずもみもみむにむにと胸を揉まれ続けたけれど。
三十分くらいそうしていた後、仕事があって帰らなくてはいけないカイル様と一緒にお風呂へ入り、カイル様にそれはもう丁寧に体を洗われ、甲斐甲斐しく世話を焼かれた私。
「……近い内に必ず……絶対、また来る、から……俺のこと、…覚えていて。
…今度は……ぎりぎりまで、いられるように……調整する…。」
そしたらまた、いっぱいいれてあげるから。とカイル様はちゅ、ちゅと私の顔中にキスをして、穏やかな顔で帰って行った。
「…爬虫類系イケメン……恐るべし…」
しかしとんでもなく色っぽい体だった。
特にあの腸腰筋……どすけべ過ぎたけしからん…。
また来てくれるのが楽しみだ。…死ぬかと思ったけど…まあ、それとこれとは別だ。とても気持ちよかったのは事実なので、またしたいことには変わりはない。懲りない私はやっぱりビッチ街道をばく進していると思う。
マティアス様が再び私に会いに来てくれたのは、カイル様が帰って一週間後、私とマティアス様が最後に会ってから…凡そ一ヶ月も経っていた。
オーナーから今日は陛下が来て下さるからね、と報告を受け嬉さ爆発の私。
一ヶ月振りに会える楽しみと一ヶ月会えなかった寂しさでよく分からない感情…。
貰った薔薇の花束もまだ枯れておらず、少しだけ色合いが落ちたような気がするけれどそれでもまだまだ綺麗に咲いてくれている。
マティアス様が来る前にお風呂に入っておこうと、一人暮らしをしていた時よりも広くて豪勢なお風呂場へ向かう。
私の自室になっているこの最上階の部屋や、高級娼婦のお姉様たちがいる部屋には必ず各部屋に風呂場がある。風呂場といっても銭湯のようなものじゃなくユニットバス。
高級娼婦を買う相手はそれなりに身分の高い人たちが多いそうなので。
そんなやんごとないお客様たちの為だ。勿論一緒に入ってにゃんにゃんしたりもする。
普通の…手頃な金額の娼婦を買う一般のお客様たちにはお風呂はない。
娼婦専用のお風呂(シャワー)はあったけど。
お客が皆で入れるような大浴場的なものもないので、一般のお客様は帰って体拭きなさい、がどの娼館でも常識みたいになっている様子。
「…新参者の私がこんないい部屋…申し訳ないけど…お風呂大好きな日本人としては有り難い…。」
私の部屋にあるお風呂も勿論ユニットバスではあるのだが…とても広い。
高級娼婦ではない、大部屋で生活している娼婦たちが使うお風呂場より全然広い。
そう…私がいる最上階はこの部屋一つしかなく…お風呂場だけで十帖はあろうかという広さ…正直一人暮らしをしていた部屋よりこの風呂場の方が広い。そして繊細な模様が描かれた…それこそこの世界基準での普通(ふくよか)な人たちが二人で入っても超☆余裕な、普通の猫足ではなくそれはそれは頑丈そうな猫足が付いたお洒落なバスタブがあるのだ。
毎日毎日あれだけ一生懸命働いても狭くて…でも自分の城になっていた日本の我が家と比べたら……泣ける。
「…ふう……あー…極楽う……」
バスタブに後頭部を乗せ浮力に身を任せる。
160㎝はある私の足先さえこの大きなバスタブには届かなくて、ゆらゆらとお湯の中で漂っていると心地よくて寝てしまいそうだ。
ぼう、とお湯に浮いた自分の体を見る。日本にいた頃と全く、全然全く変化はなくて、相変わらず可もなく不可もない体だ。自分の体で一番自信のある所は?と聞かれてもすぐ答えは出ない。というか自信などない。巨乳でもなければ美乳でもないし桃尻でもないしモデルみたいに足が長いわけでもないし。
だから不思議な気持ちになる。マティアス様やヴァレリア様やカイル様が私の体に夢中になってくれた事が。あの瞬きするのも忘れる程の超絶イケメンたちが、だ。
「……あれ?…何か…色変わってる…?」
ふと気になったのは胸だ。乳輪の色が所々赤紫に変わっている。…変わっているというか鬱血していた。
「…カイル様か!」
カイル様は終始、もにもにむにむにと私の胸を触りまくっていたし、何なら吸いまくっていた。
…その日一日はドレスの生地が胸に擦れるだけで痛痒かった記憶がある。そしてその度にちょぴり感じてしまっていた。
ちゅうう、と結構な力で吸われていたこともあったので、恐らくこの鬱血はカイル様のせいでもあるだろう。
そう。ここに来るまで一切生身の男とセックスをした事も…まして恋人さえいなかった私には分からなかったのだ。
この鬱血痕が、所謂“キスマーク”と呼ばれているものだとは。
そんなものが乳首周辺というか、乳輪付近にいくつも…。
変な知識は沢山あるのに(当然セックスに関してのみ)キスマークは知らないなんておかしな話だと思うだろうが言い訳をするなら私が持っているエロ本やエロゲーは女性向けではなくほぼ…いやもう全てが男性向けのものだったのだ。
可愛らしいキスマークを付けたり純愛まっしぐらなものは…私の持っている男性向けエロ本にはない。
そしてこの“キスマーク”が、とんでもない事態を引き起こしてくれることになる。
「サイカ…!」
「マティアス様…!」
「…ああ、サイカ…サイカ…!会いたかった…!どれ程サイカに会いたかったか…!」
「寂しかったです、マティアス様…!でも、会えたのがすごく嬉しいから、寂しかった気持ちがたった今全部無くなりました…!」
「嬉しい事を言ってくれる…!」
熱い抱擁を交わす私たち。
一ヶ月振りのマティアス様との再会。マティアス様は約束通り私に次の花束を用意してくれていた。花にも余り詳しくはないけど、多分ユリの花だ。真っ白の。
些細な約束事を覚えてくれていたことが嬉しい。
会えなくて寂しかったのも本当。会えて嬉しいのも本当だった。
商売女としてどうなのだろうと思うが、私はマティアス様たちをただのお客様としては見ていないのだと思う。
お客ではなく、マティアス様はマティアス様。他もそう。
会うまではただのお客でしかないけれど、会って話をして体の関係を持ってしまうとどうも彼らに対し、“お客”だという感覚はなくなるようだ。
多分、そういった意味ではこういう体を売る仕事には向いていないのかも知れない。
「…変わりなかったか…?体調を崩したりは…」
「至って健康そのものです。…マティアス様こそ、怪我や病気とかしてないですか…?」
「大丈夫だ。柔な方ではないからな。寧ろ人より健康かも知れない。」
「…よかった…マティアス様が無事でいてくれただけで嬉しい…。」
「…全く…これだから早く会いたくて堪らなくなるんだ…。」
ぎゅうう、と腕に込められる力。
お互いの鼓動や、息遣いまでも聞こえるくらいにぴったりくっついて、私は久しぶりに嗅ぐマティアスの匂いを堪能する。
男らしい、でも爽やかなマティアス様の匂い。好きな匂いだ。ドキドキもするけど凄く安心する。
「お帰りなさい、マティアス様。
お仕事お疲れ様でした…。」
「…ああ…ただいまサイカ。…寂しい思いをさせてすまなかった。
だが、いつもサイカの事を考えていた。この一月どう過ごしているか…どんな一日を送っているかと…毎日毎日。考えない日はなかった。」
「…嬉しい…。私も、いつまたマティアス様が会いに来てくれるかと思ってました。
薔薇の花束も嬉しかった。まだ綺麗に咲いてるんです。それから今日も…花束を持ってきてくれて…ありがとうございます。」
「ああ。サイカの可愛いお願いは叶えなければ。…それに…約束通りサファイアも付けてくれているな。」
「はい。これからもマティアス様をお迎えする時は必ず付けます。」
「そうか…。…ふう……こうしてサイカを抱き締めていると…やっと帰ってこれたんだと実感出来る…。」
「…ふふ…じゃあ、もっとぎゅっとして下さい。
私もやっとマティアス様に会えたって実感します。」
「……はあ……本当に可愛いな…。」
自然に唇が重なって、お互いに抱き締める力が強まる。
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この甘い空気に毎回毎回錯覚しそうになる。この人と私は本当に恋人同士ではないかと。
「………は…。」
「……ん……はあ…。」
「…ベッドに行こう…連れて行っても?」
「はい……お願いします」
ベッドまではたった数歩の距離。
マティアス様はそのたった数歩の距離を恭しく、まるで大切な宝物を運ぶように私を抱き抱えて歩く。
「…早く抱きたいと思うのに、勿体無いとも思うんだ…。
一月の間はそういう欲求が強かった。抑えるのを苦労するくらいに…。
眠る時は特に酷かった。サイカの姿ばかり思い出して。…だが…不思議だな…こうして会うと…すぐに抱くのが勿体無い。」
「…分かる気がします…。」
「抱きたい。でも話もしたい。もっとよく顔が見たいしこうしてただ触れ合ってもいたい…。はは、したい事が沢山あって困るな。」
「…じゃあ…前の時みたいに……いちゃいちゃします…?」
「…する。」
真剣な顔で返事をしたマティアス様に思わず笑ってしまった。
いつかの時みたいに広いベッドの上で。仰向けに寝転ぶマティアス様の上に寝そべって。
「…いつもと変わった事はなかったのか?」
「いつもと……あ、一つありました。私、この前初めて花街を歩いたんです。月光館に来て初めて、娼館の外に出たんです!」
「…男たちに囲まれなかったか?」
「それが……ふ、ふふ…!それが、オーナーの提案で……私、変装してたんですっ。」
「変装?」
「ドレスの下に五枚も大きなタオルを巻いて…それからウィッグに帽子、日傘まで…!どこからどう見ても別人だったんです…!」
「はは!そうか、別人か…!キリムも考えたな…いい判断だ。」
「昼間の花街はやっぱり人が少なくて…でも、思っていたよりいて吃驚もしました。娼婦だけかと思っていたけど、男の人もいて…!
オーナーと一緒に花街のお店を見回って、」
「それで…?」
時折お互いの顔や髪、手に触れながら、キスをしながらいちゃいちゃと過ごす。
私の話、マティアス様の話。会えなかった間の話やそれ以外にも沢山。
こういうのも楽しい、幸せかも…と思っていた時にマティアス様から着ているものを脱がないかと提案が。
どうやら布があるのがもどかしく、ピロートークみたいに素肌になっていちゃいちゃとしたいらしい。勿論私は一つ返事で頷いた。
「…ドレスの紐に手をかけるこの瞬間はいつも緊張する…。」
「どうして…?」
「…この布の下に隠れているものが露になるからだ。
ドレスで隠れたサイカの体が…どれだけ美しくいやらしく…そしておかしくなりそうな程気持ちいいか…もう、知っているから…。」
マティアス様の赤裸々な言葉にかあ、と顔に熱が集中する。
そんな事を言われたら恥ずかしいじゃないか。しゅるりと背中の紐を解かれる小さな音まで聞こえてしまう。
「…ちゅ、…ちゅ。…首まで赤くして……後で、沢山愛してやるからな…。」
唇だけでなく顎や首筋にキスを落とされ、はふ、と熱い溜め息が漏れる。
紐が解かれたことで緩んだドレスの襟に手をかけたマティアス様はゆっくりと下へドレスをずらしていく。
胸が空気に触れたのと同時にふる、と体が震え………そして何故か時が止まった。
あれ?とマティアス様を見れば、マティアス様は私の胸をじっと見ながら全ての動作を停止させているではないか。
「…マティアス様…?」
どうかしましたかと言いかけて…マティアス様が纏う空気がおかしいことに気付いた。
そう、これはまるで怒っているような、そんな冷たい空気だ。
「…マ、マティアス…さま…「なるほど…俺の他にサイカを買った者がいたか。」……え。」
「…こんな痕まで付けて……小賢しい。」
ばくばくと経験した事のない早さで鳴る鼓動はこれから起こることへの警鐘だった。
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