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2 男娼デビュー

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 男が帰った後、純はミヤビの部屋を訪れた。
「さっきのお客さんて、どういう方でした?」
 純は、ミヤビに聞いてみた。顧客名簿では、男の名は石野いしのとあったが、どうせ偽名だろう。この手の店を利用する客が、馬鹿正直に本名を名乗るとは思えない。
「何だ、気でもあんの?」
 ミヤビは、嘲笑を浮かべた。
「笑えるわ。あんたみたいにさえないオメガと、釣り合うとでも思ってんのかよ?」
 純は椎葉から、破格の高給を約束されている。表だっては明らかになっていないが、男娼たちは薄々知っているのだろう。ミヤビの言葉には、必要以上のトゲがあった。
「そんなつもりはありません。お客さんがどういう人か、把握しておきたいだけです」
 ちくりと走った胸の痛みをこらえて、純は冷静に尋ねた。だがミヤビは、フンと鼻を鳴らした。
「そんなの、俺らにも本当のことなんか言うわけないだろ。サラリーマンとは言ってたけど、どうだかね……。ま、金があることだけは確かだ。次も予約を入れてくれたから。また俺を指名でね」
 ミヤビが得意げな笑みを浮かべる。その表情は艶やかで、どんな男も夢中になるだろうと思われた。あのアルファも、その一人ということか……。
「ま、あんたはせいぜい、俺らがやってるとこでも見てろよ。いつまで置いてもらえるかわかんないんだからさ……。妙な能力があるとか言ってるけど、どうせインチキだろ」
 吐き捨てるように言われ、純はさすがにむっとした。 
「お言葉ですが、椎葉さんは僕の能力を認めてくださってます」
 その途端、ミヤビの美しい顔が曇った。
「……あんた、オーナーと寝たのか?」
「そうです。だからこそ、僕の力が本物とわかったんです」
 するとミヤビは、一瞬黙り込んだ。
「……出てけよ。そろそろ次の客が来る」
 ややあって、彼はぼそりと言った。
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