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3 再会と監禁

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 そして長兄は、さらに続けた。
『近親相姦の危険を冒すよりは、金儲けに使いましょう。売春させるんですよ』
『でも、あいつまだ十五だぜ?』
 そう口を挟むのは、大学生の次兄だ。すると長兄は言った。
『うん、正規のルートではな。だから、Y街のような場所では無理だ。この家に、こっそり客を呼び込もう。未成年だし、特殊な能力まである。きっと高く売れるだろう』
『お前は知恵の回る奴だなあ』
 父が、感心したような声を上げる。
『よし、さっそく客を探そう。元々高校へ行かせるつもりはなかったからな。たっぷり稼いでもらうか。どうせオメガなんて、それしか取り柄がないんだし』
『ああ。愛人の子を、ここまで育ててやったんだしな。恩返しはさせないと……』
 次兄も同調した。愕然とした純は、彼らが売春斡旋の段取りを相談している隙に、荷物をまとめて家を出た。香月家は名門の旧家だが、竹彦の代になってから家業は傾きつつあった。商売が下手な上に、女道楽に金をつぎ込んだからだ。金に困っていた竹彦にとっては、渡りに船だったのだろう……。


  純は、桐ケ谷に向かって告げた。
「父はこれまで、高校大学へ行かせてやる、と言っていたんです。僕は、それを励みに勉強してきました。そうすれば、オメガでも認めてもらえるかもしれないって。頑張って、アルファの兄たちと同じ学校にも入りました」
 そこは、優秀かつ裕福な子供ばかりが集まる名門校で、生徒はアルファばかりだった。オメガの純は、異色の存在だった。
「オメガの上、学校に行かせてもらえなければ、まともな仕事にも就けないでしょうから。同じ売春をするなら、金は自分の懐に入れたい、そう思ったんです」
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