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第二章 告白

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 氷室徹司、とあったのだ。肩書き欄にはとある企業名が書かれており、その代表取締役とある。
「一週間前の日曜日よ。是非お売りいただきたいって直接言ってこられて。会社を経営されてるそうで、即金でポンと買ってくださったよ」
 今や元となった大家は、満面の笑みを浮かべている。相当の高額を提示されたであろうことは、容易に推察できた。
「そう……、だったんですね……」
 もはや、完全に氷室の手中に捕らえられた気がする。言葉を失っていると、元大家はさらに聞き捨てならない台詞を吐いた。
「でもこの方も、ツイてないよねえ。買ったとたん、店子が出て行くなんて」
「待ってください。出て行ったって?」
 あのアパートの住人は、優真と山下の二人だけだ。つまり、退去したのは山下以外にいない。もちろん、本人の意志とは思えなかった。
「うん、立花さんの下の方。偶然見かけたんだけど、何だかあわてた様子だったよ。それも売却した次の日だったから、何てタイミングだろって思った」
 元大家は、アパートの近所に住んでいるのである。一連の話が本当なら、氷室は優真と出会ったその日に買い取り、翌日には山下を追い出したということだ。それも、優真に黙って。
(あれだけ頼んだのに……)
 その時、窓口のパネルに数字が点灯した。それを見て、元大家が立ち上がる。
「あ、順番が来た。立花さん、それじゃあね」
 はい、と笑顔で挨拶しながらも、優真は怒りが湧き上がるのを抑えられなかった。区役所の外に出て、氷室の携帯に電話する。彼はすぐに応答した。
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