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第六章 終焉と未来

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「去年の秋のことだ」
 氷室は、静かに語り始めた。
「ヘマをしてムショに入っていたうちの舎弟が、刑期を終えてシャバに出た。そいつは、パクられたのを機にうちの組を抜けていてな。いざ自由の身になって、カタギの世界でやっていこうとしたそいつを、俺は心から応援したさ。だがな、そこからがそいつの苦難の始まりだったんだ。……まさに、お前がさっき言った暴排条例のせいでな。おまけに、生活保護を受けようとしても、役所の連中はけんもほろろ」
 まさか、と優真は思った。
「俺は、本気でムカついてた。だが、せっかくカタギに戻ったってのに、現役の俺がしゃしゃり出たらぶち壊しだろう。それでも心配で、俺は役所内でそいつを、遠くから見守っていた。……すると」
 氷室は、にっこり笑った。
「上司に逆らって、そいつを庇った職員がいたんだよ。おまけにその職員は、宿泊場所の手配までしてくれた。その職員のおかげでそいつは今も、元気にやってる。……もうわかっただろう。優真、お前だよ」
「……覚えてて、くれてたんですね」
 ようやくそれだけを言うと、氷室は大きく頷いた。
「当たりめえだろ。お前のことは、ずっと恩に着てた。だから『ランコントル』で会った時、人違いされてるのはわかっていたが、お前の悩みを解決してやろうと思ったんだ。あの時の礼だよ」
「そうだったんですね……」
「優真」
 氷室は、優真の顎をとらえると、くいと上向かせた。
「俺はお前に、解決料なんぞ払ってもらおうと思っちゃいねえんだよ。それでもああ言ったのは、お前に惚れたからだ。どんな手を使ってでも、手に入れようと思った」 
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