上 下
37 / 56
2 アサータ王国へ

20 残り香

しおりを挟む
「マダナをお渡しできたので 少し休みます」

セクウがレーナ達に告げる声と人を呼ぶときのベルの音、ベルの音に重なってセクウの心の声

「マダナって本当に上手にボクに同化しているよ。まだちょっとはコドモトビネコにマダナの残り香のようなものが残ってるけど、半日くらいで消えるんじゃないかな?」

残り香?消える?消えたらどうなるの?


「マダナ?眠いの?マダナ?」

レーナの声だけが聞える 眠くて眠くてしょうがないけど心配そうなレーナの声に懸命に口を開く

「マー」

聞えたかな?レーナ安心してくれたかな?

「マオリ、健康観察しましょう どこが悪いのかしら?」
「……そうですね」
「ナー」

レーナがすがるようにマオリに言うけど、マオリならもう僕がコドモトビネコの中から消えようとしていること分かるよね?

まるで夢を見ているみたい。僕は僕なのに僕の外側に居る。レーナの膝で眠っているようにでも、時々うっすらと目を開ける僕を見ている。レーナの横に跪いて一緒に僕を撫でてくれるマオリ。

「マー」

さよならレーナ、さよならマオリ、僕ね、セクウに身代わりを頼まれちゃったんだ。
セクウのフリしているから多分、レーナ達には分からないだろうけど近くにいるからね。一緒にお茶しようね。

僕の視界がレーナでいっぱいになった。

「ナ」

泣かないでレーナ。レーナに会えて幸せだったよ。また会おうね。コドモトビネコじゃない僕をちゃんと見つけてね

少しでも長くこの風景を見て居たいと思う僕の思いとは裏腹に景色は消えた。


***


誰かが優しくぼくの髪を撫でる。髪?なんて有ったっけ?有るに決まってるよね?
まだ13だよ?

うっすらと目を開けると母上がぼくを覗き込んでいる。

「セクウ?」

呼びかける母上に微笑んだつもりだけど、できたかな?

しおりを挟む

処理中です...