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7-2.

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 と思ったのに、すっかりオムライスとミネストローネができあがっても碧さんは帰ってこなかった。
 遅くなるときは連絡をくれるのに、何度確認してもメールも着信もきていない。電車の遅延情報も出てないようだ。
 
 事件? 事故? こういうとき、嫌な想像ばかりしてしまう。
 最近悩んでたみたいだから、気晴らしにふらっとどこかに行きたくなった、とかならいいが……

 どこかに。
 最悪の事態が頭に浮かんで、瞬時に振り払った。

 13年後の碧さんは生きているんだ。そんなことになるはずがない。
 未来は変わらないのだから。絶対。

 カタカタ、と座り込んだ床が揺れた。
 反射的にローテーブルの下に潜り込むと、揺れが少し大きくなる。長い。

 地震。3月。
 いや、まだ2010年だ。大丈夫、大丈夫。

 バクバクする心臓を宥めていると、揺れが収まった。

 布団から出て、窓を開けに行く。深呼吸をしようと空を見上げると、月が雲に隠れた。胸が騒めく。

「碧さん……!」

 スマホだけを引っ掴んで、部屋を飛び出した。

『お掛けになった電話は電波の届かないところにあるか、電源が』

 走りながら何度電話してもこの調子。
 今日はアフレコに持っていく鞄で出掛けていたはず。でもスタジオの場所なんてわからない。コンビニ、スーパー、カラオケ。思い当たる場所を捜すしかない。

 碧さんの知り合いなんて俺にはわからないし、胸騒ぎがするというだけで所属事務所に連絡するのはオオゴトすぎる。そもそも取り合ってもらえないだろう。
 それでももしかしたらと、事務所がある場所へ向かってみる。詳しくは知らないが、碧さんから最寄り駅は聞いたことがある。

 とはいえ、東京で人捜しなんて無謀すぎる。夜のない東京は煌々と道行く人たちを照らしてはいるが、碧さんに似た金髪の人だけでもいくらでもいる。

 碧さんを捜して歩き回って、連絡がないか数秒おきに確認して……全部空振り。

 もう碧さんに会えないんじゃないかと、頭を駆け巡る。この時代に俺がいることが間違いなのだから。

 繁華街から少し離れると、途端に暗くなった。夜の闇に飲まれてしまったら、今度こそ絶望的になる。

 と、なぜか周りがほんのり明るくなった。見上げると、雲が流れて月が姿を見せている。
 黒い空にぽっかりと黄色い穴が開いているようだ。今日は満月なのかもしれない。
 
 月の手前で、何かの影がゆらりと動いた。
 ビルの屋上に佇んでいる人影。一瞬きらりと輝いた髪が……

「まさか……っ!」 
 
 頭によぎった瞬間、駆け出していた。雑居ビルの外階段を駆け上がる。
 
 頼むから、どうかそのままでいてくれ。お願いだから。
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