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竪琴とは小さなハープのようなものだ。木製の三日月の欠けた部分に、弦が張られている。
ハープなんてほとんど聞いたことがなかったが、幻想的な音色だ。
まるで月の住人のようなノアの美しい見た目とよく似合う。
竪琴のメロディーを追いかけるように、ノアの歌声が重なる。
鈴の音のような澄んだ声、どこかこの世のものではないような、物悲しさを感じる。
歌詞を聞くと、どうやら天女が恋した人間の男と別れなければいけない悲恋の歌らしい。
酔っぱらいだらけの酒場が、あっという間に上品なコンサート会場に様変わりしてしまう。
天女の曲だからか、ノアの声は女性のように柔らかい。声だけ聴いたら、男だとは思わないだろう。
いや、その中世的な出で立ちは、男か女かなど超越してしまう。
天女が天上へと帰っていき、ノアの指が竪琴から離れた。
途端に、ノアの足元のケースにコインが飛ばされる。
歌声の余韻に浸っていたら出遅れた。俺も投げ銭をしないと。
銀貨を取り出し、ノアの前へ進み出る。
俺のこと覚えてるだろうか。覚えていたとしても、まさか気づかないよな。
既に溜まっているコインの上に銀貨を落とす。
俺を見上げたノアは一瞬僅かに紫色の瞳を見開いたが、すぐに柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます。フレデリックさん」
「俺のこと、わかるのか!?」
「ええ、もちろん。今日は一段と男前ですね」
な……ッ!!
まだ2回目の、しかも風貌のまったく違う客を完璧に覚えている。
しかも今までの俺を否定せず、今の姿を褒めてくれる。
なんという神対応! プロだ!
「またいらしてくださって嬉しいです。今日はいかがでしたか?」
「そりゃもう最高だったよ!」
「よかった、嬉しいです。また是非聞きにいらしてくださいね」
もちろん! と答える前に、後ろの親父に突き飛ばされた。
よろけながら振り返ると、赤ら顔の親父が親しげにノアと喋っている。
続々とノアの元へやってくる親父たちは、どうやら常連客らしい。
ああっ! あっちの客は馴れ馴れしくノアに触ってる!
向こうのおっさんはあんなに顔を近づけて!
耳元で何か囁いてるやつもいる! ノアもあんな楽しそうに笑って……!
俺も負けてはいられない。早くあの位置に行かなくては。
なんてったって、今の俺には金がある。
すぐに常連の太客になってやるからな!
ハープなんてほとんど聞いたことがなかったが、幻想的な音色だ。
まるで月の住人のようなノアの美しい見た目とよく似合う。
竪琴のメロディーを追いかけるように、ノアの歌声が重なる。
鈴の音のような澄んだ声、どこかこの世のものではないような、物悲しさを感じる。
歌詞を聞くと、どうやら天女が恋した人間の男と別れなければいけない悲恋の歌らしい。
酔っぱらいだらけの酒場が、あっという間に上品なコンサート会場に様変わりしてしまう。
天女の曲だからか、ノアの声は女性のように柔らかい。声だけ聴いたら、男だとは思わないだろう。
いや、その中世的な出で立ちは、男か女かなど超越してしまう。
天女が天上へと帰っていき、ノアの指が竪琴から離れた。
途端に、ノアの足元のケースにコインが飛ばされる。
歌声の余韻に浸っていたら出遅れた。俺も投げ銭をしないと。
銀貨を取り出し、ノアの前へ進み出る。
俺のこと覚えてるだろうか。覚えていたとしても、まさか気づかないよな。
既に溜まっているコインの上に銀貨を落とす。
俺を見上げたノアは一瞬僅かに紫色の瞳を見開いたが、すぐに柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます。フレデリックさん」
「俺のこと、わかるのか!?」
「ええ、もちろん。今日は一段と男前ですね」
な……ッ!!
まだ2回目の、しかも風貌のまったく違う客を完璧に覚えている。
しかも今までの俺を否定せず、今の姿を褒めてくれる。
なんという神対応! プロだ!
「またいらしてくださって嬉しいです。今日はいかがでしたか?」
「そりゃもう最高だったよ!」
「よかった、嬉しいです。また是非聞きにいらしてくださいね」
もちろん! と答える前に、後ろの親父に突き飛ばされた。
よろけながら振り返ると、赤ら顔の親父が親しげにノアと喋っている。
続々とノアの元へやってくる親父たちは、どうやら常連客らしい。
ああっ! あっちの客は馴れ馴れしくノアに触ってる!
向こうのおっさんはあんなに顔を近づけて!
耳元で何か囁いてるやつもいる! ノアもあんな楽しそうに笑って……!
俺も負けてはいられない。早くあの位置に行かなくては。
なんてったって、今の俺には金がある。
すぐに常連の太客になってやるからな!
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