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23-2

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 聞き返す間もなく、唇が重ねられた。

 さっきまでのとは違う。深い口づけだ。俺を求めるように、何度も強く重ねられる。
 どうすればいいのか解らなかったが、男の本能が疼く。

 噛みつくように求めると、俺の背に腕がまわされた。
 俺の口腔にノアの舌が侵入する。受け入れるように舌を絡ませると、もう止まらなくなる。それは、ノアも同じようだった。

「んぅ……」
「ふっ……ノア……」
「フレディ、もっと僕に触れてみたくありませんか?」

 ノアに手を取られ、服の中に誘導される。滑らかな肌を辿って行くと、ツンと尖ったものが引っ掛かる。

「あ……っ」

 艶めかしいその声に、下腹部が熱くなる。

 その肌にもっと触れたくて、両手でノアの胸に触れた。女と違って膨らみはないはずなのに、柔らかくて吸いつくようだ。
 
 触れるたび、ノアが身体をくねらせる。

「フレディ……」

 ノアがまた俺の手を掴み、自分の下腹部へと触れさせた。
 布越しにノアの熱が当たる。その膨らみがありありと感じられた。

「あなたに触れられただけで、僕はこんなにも感じてしまうのですよ」
「ノア……」

 腕を伸ばすと、袖がずり下がった。露わになった手首から、生々しい傷痕が覗いてしまう。
 咄嗟に隠そうとしたが、ノアのしなやかな指先が俺の手を制止する。

「僕と一緒にいたら、もう死にたいなんて思わなくなりますよ」
「知ってたのか……?」
「恋しい方の身体に気づかない程、鈍感な男ではありません」

 死のうと思って、でも思い切れずに中途半端につけた傷。
 それを癒すかのように、ノアが傷痕を舌でなぞる。くすぐったいようなその感覚に、熱い吐息が漏れてしまう。
 柔らかくて温かくて、まるで子猫にでも舐められているようだ。傷跡が、忌々しい記憶と共にノアに浄化されていく。

「ノア。もっと、お前に触れたい……」

 手首に名残惜しそうにキスを落とし、ノアがまた俺の手を取る。
 ノアに導かれるまま、身に纏う服を薄衣を剥がすように脱がせていく。徐々にあらわになるノアの素肌は、まるで絹のように白く滑らかだった。

 淡いピンクの突起を隠すように、銀色の髪のベールが掛かっている。その姿はエロいというよりも、どこか神々しかった。

  ガラス細工のように壊れてしまいそうな、細い腰をそっと撫でた。
「ん……っ」と頬を染めるノアの美しさに、脳がクラッとする。

「触るだけでいいんですか?」

 そう言われて初めて、ノアの柔肌に恐る恐るキスをした。なんとなく甘い気がする。
 痕もつかないような触れるだけのキスに、ノアが笑う。

「じれったくなるほど優しいんですね。あなたの痕を残してくれてもいいのに」
「ノアの肌に痕なんてつけられない」

 美しい新雪を足跡で汚したくない。そんな気持ちに似ている。
 俺のものにしたいけど、キレイなままでいてほしい。

 と、ノアが俺の下腹部に触れてきた。

「――っ!」
「僕の身体で、あなたも興奮してくれたんですね」

 くすりと笑うその仕草だけで、また俺の中心が反応してしまう。

 俺を男にしてくれると言っていた。
 けど、ここから一歩が踏み出せない。ノアを傷つけたくないが、でも上手くやれる自信が……

「今日は、僕に任せてください」

 ノアが俺に抱きついてきた。突然のことにバランスが取れず、ベッドに倒れ込む。
 身体を起こそうとしたが、ノアが俺に馬乗りになっている。そのまま俺のベルトを緩め始めた。

「な……っ」
「どうかそのままで。フレディはただ僕のことだけ見て、考えていてください」
 
 ノアに下着をずらされ、窮屈だったそれが外気に晒される。
 まだ完全に勃ち上がっていないものをノアの両手で包み込まれた。優しく上下に刺激を与えられると、そこがさらに熱を持つ。

「ふふっ、もうこんなにして。1回ヌいておきますか?」
「や、ちょ……待っ」

 同じ男だからか、ノアの手は的確に弱いところを刺激してくる。
 裏筋をくすぐるように撫で上げられ、ぞわぞわと産毛が総毛立つのを感じる。もう触れることすらないと思っていたから、ノアに触られてるという事実だけで、俺の欲望が湧き上がってくる。

 チロリと鈴口を舐められれば、呆気なく果ててしまった。

 頭がぼうっとする。まだ俺の上には白い肌をすべて晒しているノアがいるというのに、妙に冷静になっている。
 これが賢者タイムか。

 そんな俺にノアが挑発的な笑みを向けた。

「次は私のナカに、挿れてみたくはありませんか?」
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