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しおりを挟むシェルの顎にルーカスが指を引っかけ、上を向かされた。
顔が寄せられ、唇が触れる瞬間――のんきな玄関チャイムが響き渡った。
「ご、ご主人様、お客様が……」
「放っておけ」
「放置プレイは酷いなあ」
リビングの入り口を見ると、白衣を着たゼノが立っていた。
「先生!」
「朝から何しに来た」
「何しに来たはないだろ。シェルが怪我したからって呼びつけたのは自分でしょ。昨日はどうしても外せなかったから、今日朝一で駆けつけたってのに」
ああ、と今思い出したようにルーカスが応えた。ゼノが壁に肘を突いて、深いため息を吐き出す。
「ゼノ先生、ありがとうございます。でも僕もう大丈夫なんです。ご主人様が魔法で治してくださったから」
「ルーカスが治癒魔法を?」
シェルの身体を見つめ、ゼノは「へえ」と感心する。
「そんなのできるなんて初めて知ったよ。うちの病院で働くかい?」
「シェル以外の奴にしてやる気はない。こいつは特別だからな」
言い切ったルーカスに、シェルはあたふたと顔を赤らめた。ゼノが2人の顔を交互に見比べる。
「え……2人なんかあった? 僕の知らないうちに何か進展したの?」
「あの、えっと……」
「いいからさっさとシェルの怪我を診ろ! 俺の治癒魔法は完璧じゃねえからな。後から何かあったら困る」
「はいはい。わかったよ、もー」
ぶつぶつと言いながら、ゼノは持ってきた往診鞄を探す。玄関に置いてきてしまったと、リビングを出て行った。
「シェル」
「は――」
一瞬の隙に、唇が重ねられた。呆気にとられていると、ルーカスがニヤリと上唇を舐める。
「続きは散歩の後でな」
「ご、ご主人様……僕本当に逃げたりしませんから、そんなに、何度も……」
「お前をどれだけ捜し回ったと思ってる。その年数分、早く取り戻さないとだからな」
首まで赤く染め上げたシェルは、再びゼノに情事の痕を披露しなくてはならないことに、まだ気づいていなかった。
END
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