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「お邪魔します」
少しして、でかいコンビニ袋を提げてヨルがやってきた。
ドサッとローテーブルに山盛りのおにぎりやら弁当やらが積み上がる。
「陽向さんのお好みがわからなかったので、たくさん買ってみました。お好きなのをどうぞ」
「にしても多いだろ。金大丈夫だったのか?」
「バイト代入ったばかりなので」
なんか罪悪感あるな。買うもん指定すりゃよかった。
俺だけ食うには多すぎる。玉子丼を貰い、大量にあったおにぎりはヨルに押し付けた。塩むすび多くね?
「あの、陽向さん。昨日は本当に……」
「もういいって言ってんだろ」
「本当ですか? 許してもらえますか?」
「しょうがねえなぁ」
言うと、ヨルが胸を撫で下ろした。
「良かった。解散って言われたら、どうしようかと……」
「そこまで短気じゃねえよ。俺から誘ったんだし」
ホッとして笑うヨルは、今まで見たことのない笑顔だった。
「お前、普段からそうやって笑っとけよ。芸人のくせにクールすぎるんだよ」
「あんまり、感情出さないようにしてるんです」
「は? なんで?」
「僕みたいなのが怒ったりはしゃいだりしていると、怖がらせてしまうので」
「獣人は、みんなそうなのか?」
「肉食獣は、特に」
ヨルの耳が少し垂れた。
公園での稽古中や道を歩く途中、自然と人が避けて行くのを感じた。あまり気にしていなかったが、あれはヨルと一緒にいたからか?
確かに、獣人じゃなくても身体のでかい奴が騒いでるのはビビることもあるにはあるが。
「笑うくらい別にいいだろ」
「そう、なんですけど……」
獣人と街ですれ違ったり、レジの店員が獣人だったとき、なんとなく意識してしまっていた気がする。
人間の俺は勝手に思うだけだが、獣人のヨルはその視線をずっと感じてきたわけだ。気にするなと、簡単に言える問題じゃないだろう。
「俺の前では自然にしてろよ。俺は怖がんないからさ」
「陽向さん……」
微笑んだヨルの瞳に、思わず視線を逸らす。
玉子丼を掻き込み、気持ちを落ち着かせる。……って、なんでドキドキしてんだ。俺。
「僕、陽向さんのことが好きです」
「……ネタの話だよな?」
「ネタもですけど、陽向さん自身が好きなんです」
普段感情が見えないヨルの熱い視線。こんなの、女にだって向けられたことないぞ。
「覚えてないかもしれませんが、僕デビューしたコントライブで陽向さんに会ったことあるんです。みんな僕が獣人だって気づいて避けてたのに、陽向さんだけが話しかけてくれて……」
コントライブ……って、俺がネタ書いたあのときか。
そういえば、獣人の芸人と会った気がする。最初は驚いたが、上京して獣人にも見慣れるようになってきて、芸人にいても不思議じゃないと思い直した。
偶然目が合ったから「お前今日初めて? 頑張れよー」くらいは言った気がするが。
「あれ、お前だったのか」
「覚えててくれたんですか!」
パッとヨルの顔が輝いた。耳と尻尾もピンと立っている。
「別にそんな気が利いたこと言ったつもりないけど……」
「それが嬉しかったんです。僕みたいなハイエナのことも普通に扱ってくれて。だからコンビを組もうと誘ってもらったとき、本当に嬉しかったです」
あのときの獣人芸人、まさかハイエナだとは気づいていなかった。
あんな些細な言葉をそんな風に思ってたなんて、そりゃ俺だって嬉しい。でも、だからって……
「こんなこと言われても困りますよね、ごめんなさい。本当は言わないつもりだったんですけど……酔っていたからとはいえ、誰にでもそんなことをしてるわけじゃないと、お伝えしたくて」
俺が複雑な顔を浮かべているのを察して、ヨルが慌てて取り繕う。
返事は求められていないようだが、大真面目に告白されたんだ。俺も真面目に考えないといけないんだろう。
そうはわかっていても、男から、獣人からの告白に頭がついていかない。
「……良い相方でいてくれると、嬉しいよ」
「はいっ! もちろんです!」
ニコッと笑ったヨルの尻尾が、ゆったりと揺れた。
少しして、でかいコンビニ袋を提げてヨルがやってきた。
ドサッとローテーブルに山盛りのおにぎりやら弁当やらが積み上がる。
「陽向さんのお好みがわからなかったので、たくさん買ってみました。お好きなのをどうぞ」
「にしても多いだろ。金大丈夫だったのか?」
「バイト代入ったばかりなので」
なんか罪悪感あるな。買うもん指定すりゃよかった。
俺だけ食うには多すぎる。玉子丼を貰い、大量にあったおにぎりはヨルに押し付けた。塩むすび多くね?
「あの、陽向さん。昨日は本当に……」
「もういいって言ってんだろ」
「本当ですか? 許してもらえますか?」
「しょうがねえなぁ」
言うと、ヨルが胸を撫で下ろした。
「良かった。解散って言われたら、どうしようかと……」
「そこまで短気じゃねえよ。俺から誘ったんだし」
ホッとして笑うヨルは、今まで見たことのない笑顔だった。
「お前、普段からそうやって笑っとけよ。芸人のくせにクールすぎるんだよ」
「あんまり、感情出さないようにしてるんです」
「は? なんで?」
「僕みたいなのが怒ったりはしゃいだりしていると、怖がらせてしまうので」
「獣人は、みんなそうなのか?」
「肉食獣は、特に」
ヨルの耳が少し垂れた。
公園での稽古中や道を歩く途中、自然と人が避けて行くのを感じた。あまり気にしていなかったが、あれはヨルと一緒にいたからか?
確かに、獣人じゃなくても身体のでかい奴が騒いでるのはビビることもあるにはあるが。
「笑うくらい別にいいだろ」
「そう、なんですけど……」
獣人と街ですれ違ったり、レジの店員が獣人だったとき、なんとなく意識してしまっていた気がする。
人間の俺は勝手に思うだけだが、獣人のヨルはその視線をずっと感じてきたわけだ。気にするなと、簡単に言える問題じゃないだろう。
「俺の前では自然にしてろよ。俺は怖がんないからさ」
「陽向さん……」
微笑んだヨルの瞳に、思わず視線を逸らす。
玉子丼を掻き込み、気持ちを落ち着かせる。……って、なんでドキドキしてんだ。俺。
「僕、陽向さんのことが好きです」
「……ネタの話だよな?」
「ネタもですけど、陽向さん自身が好きなんです」
普段感情が見えないヨルの熱い視線。こんなの、女にだって向けられたことないぞ。
「覚えてないかもしれませんが、僕デビューしたコントライブで陽向さんに会ったことあるんです。みんな僕が獣人だって気づいて避けてたのに、陽向さんだけが話しかけてくれて……」
コントライブ……って、俺がネタ書いたあのときか。
そういえば、獣人の芸人と会った気がする。最初は驚いたが、上京して獣人にも見慣れるようになってきて、芸人にいても不思議じゃないと思い直した。
偶然目が合ったから「お前今日初めて? 頑張れよー」くらいは言った気がするが。
「あれ、お前だったのか」
「覚えててくれたんですか!」
パッとヨルの顔が輝いた。耳と尻尾もピンと立っている。
「別にそんな気が利いたこと言ったつもりないけど……」
「それが嬉しかったんです。僕みたいなハイエナのことも普通に扱ってくれて。だからコンビを組もうと誘ってもらったとき、本当に嬉しかったです」
あのときの獣人芸人、まさかハイエナだとは気づいていなかった。
あんな些細な言葉をそんな風に思ってたなんて、そりゃ俺だって嬉しい。でも、だからって……
「こんなこと言われても困りますよね、ごめんなさい。本当は言わないつもりだったんですけど……酔っていたからとはいえ、誰にでもそんなことをしてるわけじゃないと、お伝えしたくて」
俺が複雑な顔を浮かべているのを察して、ヨルが慌てて取り繕う。
返事は求められていないようだが、大真面目に告白されたんだ。俺も真面目に考えないといけないんだろう。
そうはわかっていても、男から、獣人からの告白に頭がついていかない。
「……良い相方でいてくれると、嬉しいよ」
「はいっ! もちろんです!」
ニコッと笑ったヨルの尻尾が、ゆったりと揺れた。
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