孤独な腐女子が異世界転生したので家族と幸せに暮らしたいです。

水都(みなと)

文字の大きさ
82 / 111
第二章

第82話 帰宅

しおりを挟む

 サディさんとナーガさんが帰ってきたら、みんなで夕食を食べることになっていた。
 集合場所は安定のハドリーさんのお店。

 ハドリーさんがカウンター越しに身を乗り出す。

「毎晩外食とは豪勢だねぇ。お父さんは料理作ってくれないのか?」
「お父さん、切る専門なの」
「はっはっはっ、アルは魔物もよくみじん切りにしてたからな」
「先輩、アリシアにそんな話やめてくださいよ」
「ま、うちとしては常連さんが増えるのは有り難いんだが」

 座っていたカウンターの椅子をくるりと回転させ、お父さんが店を見渡す。

「今日、誰もいないんですね」
「閑古鳥鳴いてるみたいに言うなよ。今日はお前らが来るってんで貸切にしてやったんだぞ」
「え? 俺、騒ぐほど酒は飲みませんよ」
「お前のためじゃねえよ。ナーガがいるだろ。あいつ、周りに人がいたら嫌がるからな」

 そういえば、飲み会とかそういう場所は嫌いなんだっけ。そもそも食事自体嫌いそうなのに、一緒に食べてくれるんだろうか。


 7時を過ぎ、8時も過ぎた。
 予定してた時間になっても2人は帰ってこない。
 お腹はグーグー鳴るし、それ以上に心配だ。お父さんなんて、椅子から立ったり座ったり、落ち着かないようにぐるぐる店中を歩き回っていた。

「ちょっと遅くないですか?」
「そうだなー。メシ冷めちまうってのに、なにやってんだか」
「道に迷ってる? でも2人とも魔法使えるのにそんなことは……」
「サウザンリーフまで行ってるんだったな。そういや、あの辺魔物が出るとかって噂になってるぞ」
「え!?」
「魔王の残党らしい。襲われたやつもいるとか……」

 サッとお父さんの顔が青ざめた。私までドキドキしてくる。
 でも2人とも魔王を倒してるんだし、魔法だって使える。万が一魔物と鉢合わせたって……

「俺、ちょっと見てきます! アリシアをお願いします!」
「あ、おい!」

 お父さんが店から飛び出そうとした瞬間、カランカランとドアベルの音が鳴った。

「アル、ただいま」
「サディ!」

 人目も気にせず、お父さんがサディさんを抱きしめた。

「ちょっとアル、みんな見てるよ? 一晩離れてたくらいで、こんなに熱烈歓迎してくれんの?」
「遅かったじゃないか!」
「向こうを出るとき土砂降りでさ、雨宿りしてたら少し遅くなっちゃって」

 お父さんの背中をサディさんが優しくさすった。

「心配した?」
「……したに決まってるだろ」
「ごめんね」

 よしよしと、サディさんがお父さんの頭を優しく撫でる。

「サウザンリーフまで遠いけどそんなに大変な道でもないし、心配し過ぎだよ。魔物が出るわけでもないんだからさ」
「いや、出るってハドリーさんが!」

 ハドリーさんがカウンターの中でゲラゲラ笑い出した。

「聞けよ、サディ。『魔王の残党が出るらしいぞ』って言ったら、こいつ本気にしやがって」
「な……っ! 嘘だったんですか!?」
「嘘に決まってんだろ。魔物なんざ、俺たちが片っ端から片付けただろ。それに、万が一いたとしてもサディとナーガがやられるかよ」

 ハドリーさん、ホントにお父さんをからかうのが好きなのね。私まで巻き添えなんですけど。
 お父さんから放れたサディさんが、カウンターにバンと手をついた。

「あんまり俺のアルをからかうの、やめてもらえますか?」
「おお、怖。わーったよ」

 サ、サディさんの目から光が消えてる。っていうか、『俺のアル』って!

 ハドリーさんを脅し終わったサディさんは、いつもの笑顔を私に向けた。

「ただいま、アリシアちゃん」
「お帰りなさい! サディさん」

 抱き上げて、ギュッと抱きしめてくれた。

「アルは僕がいなくても大丈夫だったかな?」
「ううん。お父さん、サディさんがいなくてすっごく寂しそうだったよ」
「こ、こら! アリシア!」

 あんなにラブラブっぷりを見せつけておいて、今更何を恥ずかしがっているのやら。

 と、またドアベルの音が鳴った。
 見ると、ナーガさんがドアに手を掛けてる。

「僕もう帰るから」

 ずっとほったらかされて痺れを切らしたらしい。
 口をへの字に曲げて、不機嫌オーラ大放出中。これは大変だ。

 ハドリーさんがカウンターの中から、料理のお皿を持ち上げる。

「待てよ、ナーガ。お前の分もメシ用意してるんだ。食ってけ」
「僕は……」
「ナーガさんも一緒に食べようよ!」

 ナーガさんに駆け寄ってその手を取る。
 すっごい顔をしかめられたけど、気づかない振りをして店の中まで引っ張り込んだ。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!

音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ 生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界 ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生 一緒に死んだマヤは王女アイルに転生 「また一緒だねミキちゃん♡」 ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差 アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...