孤独な腐女子が異世界転生したので家族と幸せに暮らしたいです。

水都(みなと)

文字の大きさ
101 / 111
第二章

第101話 お父さん似

しおりを挟む

「サディ?」

 お父さんの声に、膝をついていたサディさんが振り向く。私たちの顔を交互に見て絶句してる。

「……アル? アリシアちゃんも」
「サディ、来てたのか。避難の方は大丈夫だったか? こっちは見ての通りフルグトゥルスが現れた。俺も引退してから腕がなまったな。タイマン勝負じゃ防戦するのがやっとだ。その上あいつは強力な光線を放つ。アリシアを連れて逃げるのがやっとだった。レインコートも台無しになっちまって、ナーガにまた嫌味を言われそう……ッ!!?」

 殴りかかってきたサディさんの拳を、お父さんが慌てて受け止める。

「ど、どうしたサディ!? 魔物に操られてるのか!?」
「ふっざけんなよ! 紛らわしいマネするな!」
「はあ? 何がどうした?」
「こんなのあったから、アルが……死んだかと思って……」

 サディさんの手には白い切れ端が握られている。お父さんのレインコートだ。
 フルグトゥルスが光線を放とうとしていることに気づいたお父さんは、私を抱えて遠くまで走った。でもすぐに光線は放たれ、私たちは爆風のような衝撃に吹き飛ばされた。

 そのときに、お父さんのレインコートが引きちぎられてしまった。
 さっきまで私たちがいた場所は爆弾でも落ちた後みたいに、一面木々が焼き払われ、地面には小石ひとつ残っていない。
 この状況を見たら、私とお父さんが無事ではないと思っても仕方ない。

「俺が死ぬわけないだろう。そんな取り乱すなんて、サディらしくないぞ」
「アルとアリシアちゃんのことじゃなかったら、こんなに取り乱さないよ」

 それくらいわかれよ、というような視線がお父さんに向けられる。
 言葉に詰まったお父さんが頭を掻いた。

「悪い。心配かけた」
「別にいいよ。本当に死んでたら許さなかったけど」
「俺がサディを置いていくわけないだろ」

 ストレートな言葉にサディさんが面食らった。それから、可笑しそうに吹き出す。

「そういう言葉、サラッと言えちゃうところがすごいよね」
「何か変なことを言ったか?」
「自覚ないんだ。でも、俺を置いていく気がないのなら良かった。せいぜい頑張って長生きしてよ。もしアルが死にたくなったらその時は」
「お、おい。アリシアの前で縁起でもないこと……」
「俺が殺してやるから」

 口の端を吊り上げたサディさんの目は笑っていない。お父さんの顔に脅えが見えた。
 ヤンデレ攻めじゃん。嫌いじゃない。

「アリシアちゃん!」

 パッといつもの優しい笑みに戻り、サディさんが私に駆け寄った。

「無事でよかったよ。どこかケガはない?」
「大丈夫、お父さんが守ってくれたから」
「そっか。アルはアリシアちゃんのヒーローだね」

 私に向けられた優しい笑顔の片隅に、安堵の表情が見えた。
 心配かけちゃったな。もとはと言えば私のせいだから、罪悪感で胸が痛む。

 ギャオーと、遠くからフルグトゥルスの雄叫びが聞こえた。
 家族団欒の空気が、一気に張り詰める。

「あれがフルグトゥルスか」
「さっき俺が翼を切り落としたんだが、あっという間に再生したみたいだな。もう元気に空を飛びまわってる」
「フルグトゥルスってモンスターじゃなくて精霊なんだっけ? 厄介な相手だね。完全に倒すのは無理そうだよ」
「俺たちに敵わないと思わせて、巣穴に帰らせるしかないな。そうすれば、しばらくこの地には近づかないだろう」
「カラスを追い払うための鷹になるってことだね。そこまで圧倒させられるの?」
「できるさ」

 お父さんが事も無げに頷いた。
 1人では苦戦してたのに、今は自信に満ち溢れている。

「1人じゃない。俺たち2人ならな」
「またカッコイイこと言っちゃって。ハドリーさんとナーガの援護がなくても平気だって?」
「それは……困る」
「そりゃそうだ。俺たちは、全員で勇者だからね」

 顔を見合わせて、2人が笑った。
 それから、お父さんが真剣な顔で私を見た。

「アリシア、なるべく遠くに逃げていなさい」
「あんまり遠くに行かせるのは危険だよ。もしフルグトゥルスがアリシアちゃんの方に行ったら対処できない」
「そうか……じゃあそこの岩だ! その後ろに隠れていなさい」

 お父さんが少し離れた場所にある大きな岩を指さした。私の身体の倍くらいあって、フルグトゥルスからすっぽり隠してくれそうだ。万が一光線が飛んできても盾にできる。

「わかった! お父さん、サディさん、頑張ってね!」
「うん、応援しててね」
「アリシア、絶対そこから出てくるんじゃないぞ! 何があってもだ!」
「はーい!」

 お父さんに念を押されて、私は岩の向こう側まで走った。
 後ろから、お父さんが息を吐くのが聞こえる。

「今度は本当にじっとしてられるだろうか……」
「大丈夫だよ、って言い切れないのがアリシアちゃんだよね。ときどき無鉄砲に行動するところがあるから。誰に似たんだろ?」
「俺に似たんだな」
「ははっ、きっとそうだね」

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!

音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ 生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界 ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生 一緒に死んだマヤは王女アイルに転生 「また一緒だねミキちゃん♡」 ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差 アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...