孤独な腐女子が異世界転生したので家族と幸せに暮らしたいです。

水都(みなと)

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第二章

第103話 撃退

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 世界を闇に沈めていた魔王を倒した伝説の勇者。
 お父さんたちがそんなすごい人達なんてあんまりピンときてなかったけど、その強さは圧巻だった。

 ナーガさんの防御と回復により、お父さんたちはほぼ無敵状態。そうなれば怖いものは何もない。
 3人の集中攻撃でフルグトゥルスを包囲し、流れるようにダメージを与えていく。

 引き裂くような悲鳴を上げたフルグトゥルスに、お父さんたちが動きを止めた。

「このまま引き返せば、これ以上手は下さない。二度とこの村には近づくな」

 フルグトゥルは弱々しく翼を羽ばたかせて浮かび上がった。

「行け!」

 お父さんが腕を振るうと、フルグトゥルが上を向いた。暗く沈んだ空に向かって、咆哮と共に光線を放った。分厚い灰色の雲に、ぽっかりと大きな穴があき、キレイな夜空が顔を出した。
 捨て台詞のようなものだったのか、光線を吐き出したフルグトゥルスは山に向かって遠ざかって行った。

「は~、くったびれたな~」

 ドサッとハドリーさんが地面に腰を落とした。

「お疲れさまです、先輩」
「さすが元騎士団は違うな、お前ら。俺はもうダメだ」
「あれだけ僕が回復してあげたのに疲れるなんておかしい。もう歳?」
「ナーガ、せっかく勝てたんだから嫌味な言い方しないの」

 さっきまで勇者のオーラに包まれていたはずなのに、泥だらけになったお父さんたちはまるで部活終わりの男子たちみたいだ。

「お父さん!  やったね!」

 私が駆け寄ると、お父さんが高々と抱き上げてくれた。

「アリシア!  お父さんかっこよかったか?」
「うん!  すっごくかっこよかった!  お父さんたちって、本当に勇者様だったんだね」
「なんだ、疑ってたのか?」

 お父さんにぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。優しいその手で、今までもたくさんの人たちを守ってきたんだ。

「普段のアルじゃ、とても勇者になんて見えないもんね」
「それはサディも同じだろ」

 お父さんの腕から降りて、サディさんを見上げる。

「サディさんもかっこよかったよ!」
「ありがとう。僕らはアリシアちゃんを守る勇者だからね」

 サディさんにウインクされた。頬が泥で汚れてるけど、それでもキラキラした王子様みたいだ。

「おい!  見ろ!」

 ハドリーさんが空を指さす。見上げると空を覆ってた雲は既になく、そこには満天の星が広がっていた。
 夜空の星々が、次々に流れていく。

「流れ星だ!」

 降るように流れ続ける星に、思わず両手を伸ばした。

「フルグトゥルスのせいだ」

 ナーガさんがぽつりと呟いた。

「フルグトゥルスが夜空を揺らしたから、星が流れた」
「流星がないせいでアステリが熟さなかったが、フルグトゥルスが力技でやっちまったってことか。この村に住んで何年も経つが、こんな盛大な流星群は初めてだ」
「フルグトゥルスも悪いことばっかりじゃなかったね」

 みんな当然のように納得してるけど、そういうものなの!?
 驚いていると、ナーガさんと目が合った。

「前の世界では、流れ星はなかったのか?」
「あったけど、空が揺れたからとかそういうファンタジーな理由じゃなかったです。そもそも、本当に星が流れてたわけじゃなくて」
「星じゃなかったら、何が流れるっていうんだ。どんな仕組みで?」

 そう言われても、パッと答えられるほどの教養はない。
 ナーガさんは「こいつに聞いても仕方ないか」という顔をして、背を向けてしまった。呆れられたらしい。

 仕組みはともかく、ロマンティックな夜空だ。途切れなく星が流れて、何度でも願い事が唱えられそう。

 ふと見ると、お父さんが改まった顔でサディさんを見つめてた。

「サディ、話がある」
「なに?  どうしたの?」

 お父さん! もしかして今プロポーズするの!?
 確かに今すごい良い雰囲気だけど、ここで?

 見つめ合う2人の雰囲気。
 ……をぶち壊すように、グ~とどこからか気の抜けた音が聞こえた。

「……お腹すいた」

 みんなの視線がナーガさんに集まる。ハドリーさんが驚愕の表情でナーガさんの両肩を掴んだ。

「ナーガ!  お前腹減ったのか!?  本気か!」
「僕だって空腹にくらいなるけど」
「よし、今すぐ村に帰って食事にしよう!  ナーガにメシ食わせるチャンスはなかなかないからな!  非常食にされてなけりゃ、まだご馳走が残ってるはずだ!」
「そんなにいらない」

 ハドリーさんがナーガさんの腕を引っ張って帰って行く。
 そういえば、ナーガさん結婚式のご馳走を用意してくれてるはずだ。

「帰ろっか。話は後で聞くよ」
「あ、ああ」

 サディさんが私とお父さんに微笑みかける。肩透かしをくらったお父さんは、気持ちの持っていきようがないのか曖昧に頷いた。

 お祭りは無理でも、結婚式だけならできるかも。
 お父さんのプロポーズ、絶対成功させてあげたい。


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