転生先がドッペルゲンガーだった俺。引継ぎないのに勇者の仕事なんて務まりませんよ!?

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勝利をその手に

神卸し

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 吹き飛ばされた後、遠のく意識を保つために唇を噛み切る。

 ふらつく体に回復魔法をかけながら即座に立ち上がると状況把握に努める。全く見覚えの無い平原に立っていた。周りがぶつかった衝撃でクレーターのようになっている。

 どうやら城の壁すらも突き抜けて外に吹き飛ばされたようだ。反射で剣を交差させ防いだようだが、それでも神樹の鎧が無ければ死んでいたかもしれない。鎧はひしゃげ、既に意味をなしていない。加えて、神樹の剣も根元から折れてしまっていた。

 魔王の膨大な魔力が遠くから凄まじい速度で近づいてくる。
 そして、一瞬で目の前に降り立った。

「どうだね?勇者よ。この力は」

 明らかに先ほどまでと違う。何が起きたのか理由がわからない。

「……なんだその力は」

 魔王は何がおかしいのか笑い始めた。

「はっはっは。ようやく会話ができて嬉しいよ。
 これで長い魔王と勇者の戦いもカーテンコールだ。此度の主役として君にも聞く権利があるかもしれんな」


「君は、なぜこの世に属性が生まれたのか知っているかい?いや、君はそういえば外の世界から来たのだったな。私が過去の記録から読み解いたもので予想も含まれるが一から説明しようか。
 長い歴史を思えば説明する時間など砂粒くらいの大きさにもならんだろうしな」


 そう言うと、魔王は上機嫌に説明を始めた。






「神はね。もともとたった一人しか存在しなかった。まあ、人と数えていいのかは知らんがね。 
 だが、ある時、聖、火、土、水、風の神に分かたれた。もしかしたら寂しさというものを感じたのかもしれない。少なくとも負の感情がそこにあったのだけは確かだ」


「闇の神は、その時にあった負の部分が無意識に切り離され、それを核にして生まれた存在だ。
 最初は神と呼べる力は無かった。
 しかし、魔法は想いを根源とする。人間たちが他人を恨み、憎しみ、命を奪う。想いに生命エネルギーが乗って徐々に闇の神は生み出されていった。つまり、闇の神はその神性を持った核をもとに生み出された魔法の集合体のようなものなのだよ」


「この世界に生命が生まれる時、属性を一つ持って産まれる。それは、それぞれの神の子として産まれるからだ。そして、個体差はあるが似たような性格を持つようになる。例えば風の神はプライドが高い、エルフもその気質を受け継いでいるのだ」


「では闇の子はどうか?当然憎しみや嫉妬を覚えて産まれてくる。
 そして、産まれてくるものの名前を魔族という。それと同時に闇の神の性質を受け継ぐが故に人を襲い続けるのだ。嫉妬や憎しみからね」


「この世界は回り続ける。魔族が生まれ、人を襲い、希望としての勇者が呼び出され、リセットされる。これの繰り返しさ。神を殺せるのは神だけ、その神の一部とはいっても聖剣や魔剣を破壊するだけでは連鎖は終わらない。神そのものを殺す必要がある」


「私はね。この連鎖を終わらせることを考えた。そして、その方法も見つけた。
 聖剣と魔剣は持ち主の命が死に近づくほど力を増す。それはなぜか?体が神に近づくんだよ。
 いや、一体化すると言ってもいい。だが、持ち主が死ねばゼロになってしまうため完全な神にならずに終わってしまう。そこで考えたんだ、死の淵で逆にこちらに取り込めばどうなるかと。
 結果は成功だよ。本物が偽物に成り代われたんだ」


 やつは何の力を込めていないような雰囲気で腕を振るう。
 だが、その先では地面が抉れ、谷のようになっていた。


「そして、この力で君を強引に聖の神と一体化させる。君は異世界人で異物だ。異物がある分力は弱まり私が勝つ。
 聖の神がいなくなれば、もう勇者が呼び出されることは無くなる。
 そして、他の属性の生き物を全て殺せばこの連鎖は終わるんだ。まあ魔族も滅びるかもしれんが、こんな延々とした戦いを繰り返すくらいならそれでも構わない。私は神に憎しみを覚えているのだから」


「そうそう。ついでに勇者のことも一つ教えてあげよう。
 初代勇者はそれはもう優れた人格だったようだ。まさに勇者というほどのね。
 だが、そんな素晴らしい勇者が突然呼び出され、前の世に未練を覚えるような関係が無いはずないよね。素晴らしい人は突然産まれるわけじゃない。そして、その人はその過程で多くの人を魅了し、深い関係を築いてきたはずさ」


「だからだろう。魔王を倒した後、最後は悲しみながら死んでいったらしい。この世界は神が分かたれていて、彼を帰還させるような力は無い。
 そして、願った。せめて呼ばれる人のことも考えて欲しいと。
 それからだ、勇者は前の世界に大きな繋がりを持っていないような人が呼ばれるようになったのは。それは、君もそうなのだろう?」


 確かに俺は家族や彼女そういった類の人はいなかった。会社と家を行き来するような生活が続いていたのも事実だ。


「その表情だと図星みたいだね。でも、そういう人物は初代以外の勇者と同じようにろくでもないやつだったりが来ると思っていた。」

「少なくとも、元から出力の決まりきった力を技術で高めるほどに努力を重ね、その上、ワンマンとならないほどに強固な関係性を持つ仲間を引き連れて来れる存在が来るとは私は想定していなかったんだよ。
 死闘を演じるつもりが一方的に殺されそうになった時は流石に焦ったね」


 魔王はふざけた調子でそう言うとこちらを笑いながら見た。


「まあいいさ。策は成った。もうここからは状況は好転しない。
 さあ、あとは君が死に近づき、神を呼び起こせればカーテンコールさ。一度しか行けないが神の世界とやらを楽しんでくればいい」

 
 魔王が小さな魔法を連続で放っていく。
 嬲られるように体にダメージが蓄積されていく。瀕し状態になると身体強化は増していき、体も勝手に動き始めるが、魔王も同時に火力をあげているので同じく嬲られる様な光景が続く。

 そして、最後に魔王が趣の異なる黒く輝く魔法を放つとともに俺の意識は無くなった。
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