52 / 52
変わるもの、変わらないもの
帰るべき場所
しおりを挟む
みんなと話し合った翌日、俺たちは将軍に別れを告げ、王都へ最大速度で戻った。
山も森も砂漠も何もかもを無関係にただ最短距離で進んでいるとあっという間に王都が見えてきた。
そして、不要な警戒を生まないために速度を緩める。
「…………やっと帰ってきたんだな」
離れた時間はそれほど長くない。だが、王都にいたのがはるか昔に感じる。
そして、一つだけ聞いておくことがあったので、船首で風を浴びているフェアリスの方を向いて尋ねた。
「フェアリスも今回は一緒でいいんだよな?エルフのいる森に降ろしていってもいいけど」
前の時は王都が見えると別行動だった。念のために聞いておく。
彼女はこちらを振り返ると口を開く。
「別にいいわよ。なによ?カズトは嫌なわけ?」
「いや。俺はそっちのが嬉しいな」
正直な気持ちを伝える。帰るならみんなで、どうせならフェアリスのこともちゃんと紹介したいし。
「…………そう。それならいいわ」
フェアリスはそれだけ言うと再び前を向いた。風で髪が流され、その耳はよく見える。
それがどうなってるかを確認すると俺の顔は自然と笑みになった。
彼女の機嫌はけっこうわかりやすい。少なくとも上機嫌なときと不機嫌な時は。
レイアはその言葉を聞いたのだろう。フェアリスに近づく。
「屋敷は広いからフェアリスがいいなら住んでくれてもいい。カズトが来てから人も増えた。私はそれを嬉しく思っている」
素っ気ない言葉ながらも、レイアの表情はどこか穏やかだ。
そちらを横目で見ると少し笑った。
「そうね……それもいいかもしれないわね」
「ああ」
サクラはそれを少し離れたとこから見つめて優しく微笑んでいたが、しばらくして俺の方に近づいてきた。
「いろいろありました。ですが、やっと終わったんですね」
「ああ、終わったんだ。過去最高の人生の濃さだったよ」
そう言うとサクラは吹き出した。
「そうですね。カズトに比べれば誰もが平坦な人生でしょう」
彼女たちは俺の名前を呼ぶようになった。それが、俺たちの関係の変化を否応なしに伝えてくる。だが、それは歓迎すべき変化だ。
俺は、本当の俺のままでみんなと仲良くなりたい。
流石に、他所では勇者で通すが、せめてカエデとアオイ、アインには伝えておこうと思う。
王都に着き、刺激しないようにゆっくりとした速度でレイアの屋敷に向かう。
出発するときに一度船の姿を見せているからだろう。下では歓声が響き、多くの人が手を振っている。
俺たちはそれに応えながら、我が家に帰った。
庭に降り立つと、カエデとアオイ、アインがこちらに向かって飛びついてきた。
ぶつかる衝撃を少し後ずさることで弱めながら抱きしめるとその頭を撫でていく。
感じる温かさに改めて帰ってきたという実感がわく。
そして、彼女たちは満面の笑みで言った。アインも尻尾をちぎれんばかりに振っている。
『「おかえりなさい!!」』
いろいろなことがあった。
この世界に転生し、勇者に化け、神もどきになり、魔王を倒した。
話さなくちゃいけないこともたくさんある。
でも、今言うべきことはただ一つだけだ。
「ただいま」
大切な場所がある。大好きな人達がいる。
世界がどうのこうのは関係ない。
みんなを守る。そのためになら何でもしよう。
自分がもう空っぽなんて思わない。
今、俺の両腕には、そこから溢れそうなほどに大事なものが抱えられているのだから。
山も森も砂漠も何もかもを無関係にただ最短距離で進んでいるとあっという間に王都が見えてきた。
そして、不要な警戒を生まないために速度を緩める。
「…………やっと帰ってきたんだな」
離れた時間はそれほど長くない。だが、王都にいたのがはるか昔に感じる。
そして、一つだけ聞いておくことがあったので、船首で風を浴びているフェアリスの方を向いて尋ねた。
「フェアリスも今回は一緒でいいんだよな?エルフのいる森に降ろしていってもいいけど」
前の時は王都が見えると別行動だった。念のために聞いておく。
彼女はこちらを振り返ると口を開く。
「別にいいわよ。なによ?カズトは嫌なわけ?」
「いや。俺はそっちのが嬉しいな」
正直な気持ちを伝える。帰るならみんなで、どうせならフェアリスのこともちゃんと紹介したいし。
「…………そう。それならいいわ」
フェアリスはそれだけ言うと再び前を向いた。風で髪が流され、その耳はよく見える。
それがどうなってるかを確認すると俺の顔は自然と笑みになった。
彼女の機嫌はけっこうわかりやすい。少なくとも上機嫌なときと不機嫌な時は。
レイアはその言葉を聞いたのだろう。フェアリスに近づく。
「屋敷は広いからフェアリスがいいなら住んでくれてもいい。カズトが来てから人も増えた。私はそれを嬉しく思っている」
素っ気ない言葉ながらも、レイアの表情はどこか穏やかだ。
そちらを横目で見ると少し笑った。
「そうね……それもいいかもしれないわね」
「ああ」
サクラはそれを少し離れたとこから見つめて優しく微笑んでいたが、しばらくして俺の方に近づいてきた。
「いろいろありました。ですが、やっと終わったんですね」
「ああ、終わったんだ。過去最高の人生の濃さだったよ」
そう言うとサクラは吹き出した。
「そうですね。カズトに比べれば誰もが平坦な人生でしょう」
彼女たちは俺の名前を呼ぶようになった。それが、俺たちの関係の変化を否応なしに伝えてくる。だが、それは歓迎すべき変化だ。
俺は、本当の俺のままでみんなと仲良くなりたい。
流石に、他所では勇者で通すが、せめてカエデとアオイ、アインには伝えておこうと思う。
王都に着き、刺激しないようにゆっくりとした速度でレイアの屋敷に向かう。
出発するときに一度船の姿を見せているからだろう。下では歓声が響き、多くの人が手を振っている。
俺たちはそれに応えながら、我が家に帰った。
庭に降り立つと、カエデとアオイ、アインがこちらに向かって飛びついてきた。
ぶつかる衝撃を少し後ずさることで弱めながら抱きしめるとその頭を撫でていく。
感じる温かさに改めて帰ってきたという実感がわく。
そして、彼女たちは満面の笑みで言った。アインも尻尾をちぎれんばかりに振っている。
『「おかえりなさい!!」』
いろいろなことがあった。
この世界に転生し、勇者に化け、神もどきになり、魔王を倒した。
話さなくちゃいけないこともたくさんある。
でも、今言うべきことはただ一つだけだ。
「ただいま」
大切な場所がある。大好きな人達がいる。
世界がどうのこうのは関係ない。
みんなを守る。そのためになら何でもしよう。
自分がもう空っぽなんて思わない。
今、俺の両腕には、そこから溢れそうなほどに大事なものが抱えられているのだから。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる