人の心が読める少女の物語 -貴方が救ってくれたから-

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四章 -近づく関係-

氷室 誠 四章④

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 キャラの選択画面に移り、お互いにキャラを選ぶ。

 あんまり強いキャラではないものの、俺はいつも使うミニスカチャイナ系ちび娘を選択すると完了ボタンを押す。

 そして、透が完了するまで待とうとした時、彼女は何故か画面を見ずにこちらをジト目で見ていた。


「ん?なに?」

「ふーん、誠君はそういうのが好きなんだ。私とは全然違うよね、それはもう全くってくらい」

 
 一瞬何を言っているのかと思ったが、すぐに気づく。
 俺はスピード系、透のはどちらかというとテクニック系のキャラにカーソルが合わせられていた。

 恐らく、彼女の足元にある説明書に相性が悪そうな感じで書いてあるからそれをあえて俺が選んだと思われたのだろう。


「あーそういうこと。動き早いキャラは好きだよ。けど、キャラタイプの相性とかほとんど関係ないに等しいから安心してくれ」


「そうじゃないんだけど…………もういい、ふん」


 さっきまで機嫌良さそうだったのに急になんなんだ。

 早希がだらしないにやけ顔で、俺のノートに勝手に何か書き始めたのもよくわからんし。まぁ、アイツはいつものことだからどうでもいいけど。


「あー、とりあえず始めていいか?」

「……負けないから」


 異様に戦意の高い透がちょっと怖いがとりあえずゲームをスタートさせ、戦闘が始まった。

 最初は様子見と考えていたが、思った以上に強い。というより、先読みが尋常じゃなく上手かった。こちら側に体の方向を若干向けつつチラチラと見てくるのはコントローラーの指でも確認しているのだろうか。


「ほんと強いな。初めてとは思えん」

 
 透はすごい集中をしているようで言葉は返ってこなかった。俺は、適度にダメージを受けつつ、さすがに嵌め技とかは封印してキャラを操作していく。
 
 
「よし!いいぞお兄ちゃん、やれ!あー、ダメ!防御して!」


 後ろでたまに俺の体を揺らしながら叫んでいる外野が少しうざいが、何を言っても無駄なことは分かっているので放置する。

 そして、一ラウンド目は接戦ながら俺のキャラがK.O.された。 


「一ラウンド目取られちゃったじゃん!私の仇とるって言ったのに。このまま負けたら丸刈りになっちゃうよ!!」

「うるさい。それと勝手に丸刈り追加するな。でも、透ほんとに初めてか?まさか負けるとはな」


 後ろで喚く早希を制しつつ、透の方を見ると、代謝がいいのか暑そうに手で自分を仰いでいた。


「でも、誠君まだ本気じゃないよね。次は、本気でいいから」


 どうやら、いつも物腰穏やかな彼女は意外に勝気なところもあるらしい。それに、かなりうまい具合に接戦を演じれたと思っていたが彼女には気づかれていたようだ。


「よくわかったな。初めて俺とやるのに」

「…………なんとなくね。あんまり悔しそうじゃないから」


 動作を確認しているのか、彼女は目線を下に向け、コントローラーを弄(いじ)りながらそう言った。


「なるほど。じゃあ、本気でやるぞ?」

「うん。一切手は抜かないでいいから。余計悔しくなるし」

「ん?悔しい?」

「こっちの話だから気にしないで。さぁ、次やろう」


 よくわからないが、やりたいならまぁそれでいいかと次のラウンドを始める。

 とりあえず、いつものようにやろうとキャラを操作すると、体に染みついているのか勝手に指が動く。

 透は必死に食らいつこうとしているようだが、ワンテンポ動きが遅れており、終始俺の優位に戦闘が進む。

 異様にフェイントに強いのが気になるところではあったが、そのまま連続で二ラウンド俺が勝利し、ゲームは終了した。



 外野がとても静かなことが気になり後ろを振り返ると、早希がドン引きした顔をしていた。たぶん、あまりにも一方的な戦いになっていたからだろう。


「お兄ちゃん、無いわー。萎え萎え~」

「仕方ないだろ。透がそうしてくれって言ったんだから」

「それでもあれはやり過ぎだよ。でも、一旦キリ着いたしトイレ行ってくる」

「はいはい。すみませんでしたね」


 確かにやり過ぎだった感は否めないので、未だ放心状態の透の方に声をかける。


「悪いな、やり過ぎた。あんまり楽しくなかっただろ?」

「ははっ。正直、集中し過ぎてよくわかんないや」


 完全に全てを出し切ったのか、透が灰になったボクサーのように放心状態で笑っていた。
 ゲームをしていたはずなのにスポーツをしていたのかと見まごう程の熱気を放ちながら。



「でも、透はやっぱ強いよ。けっこーヒヤッとさせられた」

「そう?ぜんぜん顔には出てなかったけど」

「ああ。特にフェイントに一切引っかからないから心でも読まれてるのかと思ったよ」


 軽口のつもりで口にした言葉にどうしてか、透の体が一瞬跳ねた。そして、何とも言えない表情を浮かべた後、こちらに真剣な顔で尋ねてきた。


「……………………もし、心が読めるって言ったら――――誠君はどうする?」

「え?」


 その、あまりにも真面目な顔に一瞬何を言っていいのか戸惑う。

 そして、何か言おうと口を開きかけた時、透は笑みを浮かべた。


「あははっ、冗談だって!驚いた?」

「あ、ああ。驚いた」

「ふふっ。私、女優になれるかも。あ、けどそろそろ夕飯の準備始まってもおかしくない時間だよね?ちょっと手伝えることあるか見てきていい?」


 まるで、さっきまでのことは夢だったかのように思えるほどに彼女の真剣な雰囲気は霧散(むさん)していた。


「え?いや、お客さんなんだからそんなんしなくていいんだぞ?」

「ううん。私がしたいから。ダメかな?」

「いや、ダメってわけじゃないけどさ」

「じゃあ、ちょっと行ってくるね」

 
 そう言うと、彼女はその穏やかな笑顔を一切崩さないまま、立ち上がり、部屋を出て行った。
 そして、入れ替わるように入ってきた早希が不思議そうな顔でこちらを見る。
 
 
「透ちゃんどうしたの?」

「なんか、夕食の手伝いがしたいらしい」

「ふーん。でも、もしかしたらぁ、さっきのゲームの態度がひどすぎて怒っちゃったんじゃないの~?」

「…………どうかな」

「あれ?お兄ちゃんどうしたの?なんか変だよ」
 
「いや、何でもない」

 
 笑っていた、怒っていた。見えた事実、見えない真実、様々な感情を頭の中で当てはめていく。

 だけど、どうも俺には、しっくりくる答えは出せそうになかった。
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