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ー後日談ー 俺のお嬢様が、ちょっとしたことですぐに可愛くなる件について
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お互いの心臓の音が聞こえるほどの距離にいることで、お嬢様の心臓がとんでもなく早いビートを刻んでいることが分かる。恐らく、ドクターストップがかかってもおかしくない心拍数だろう。
体も動かないので、その赤い綺麗な瞳をジッと見つめていると、顔を逸らされてしまった。
そして、残念に思いながら俺が見るのをやめると、視線がまたこちらを向いたような気がしたのでもう一度相手の方を向く。
だが、またもや、サッと顔を逸らされてしまう俺。
(目も赤いし、なんかウサギみたいで和むなぁ)
少し楽しくなってきてしまった俺が、見る・逸らされるを繰り返していると、彼女の顔が真っ赤になっていった。
「もう、なんなのよ!!主人は私よ!?なんで私から逸らさなきゃいけないのよ!」
彼女は俺から距離を取ると、地団駄を踏みながら、子供のような癇癪を起こしてそう言う。
「すみません。じゃあ、次からはあまりジロジロと見ないようにします」
「………………やっぱり、それはダメ」
しおらしいお嬢様を見ていると、ついイジメたくなってしまうのは俺がガキだからだろうか。
今までも軽口を叩くことはあったが、可愛いと思っていた子に熱烈な好意を示されるという、童貞の夢のような経験にどうやら俺は舞い上がってしまっているようだった。
「じゃあ、ずっと見てます」
「ふ、ふーん。そんなに私のことが見たいの?仕方のない男だこと」
「はい。お嬢様は可愛いので」
「あ、あ、あ、貴方!!ちょっと調子に乗ってるんじゃないの!?」
初めてのモテ期なのでそこはご容赦頂きたいところだ。地味面、チートなしの、ザ・普通の日本人である俺にとっては、願っても無いほどの幸福なんだから。
「いやー、めちゃくちゃ嬉しくて。それに、もともとお嬢様をハッピーエンドにするために動いてたので、さっきの笑顔見たらもう、感慨深くて」
本当に、長い日々だった。何度も戻って、その度に考えて、走り続けてきた。
まさか、こんな結末で終わるとは思ってもみなかったけど、彼女が笑える最後が来て本当に良かった。
「本当に、本当に、よかった」
「…………貴方、泣いてるの?」
「そりゃ……泣きますよ。俺は、笑顔で終わる物語が大好きなんですから!だから、諦めなくて、本当に、よかった」
言いながら、格好悪くも鼻水を垂らしながら泣いてしまう俺。世のイケメンたちのようにスマートになり切れないところが本当に俺らしい。
だけど、彼女はそんな俺の頭を抱きかかえ、涙が服に着くのも気にせず優しく包んでくれた。
「私は、そんな貴方が大好きよ。地味で、普通で、気の利いた台詞も全く言えないけれど。そんなの関係ないくらい、優しくて、暖かかくて、真っ直ぐで。だからこそ、私は救われたの」
まるで、世界を弄ぶ悪女のような外見の彼女は、慈愛に満ちた声とともに頭をそっと撫でてくれる。
俺は、そんな素敵な彼女がこれまで悲しい人生を送ってきたことを不憫に思うとともに、誰にもその魅力が気づかれなかったことにほっと安堵した。
◆◆◆◆◆
そのまましばらくして落ち着いてくると、母親にあやされる子供のような状態に少し気恥ずかしさを感じ始めた。
「すみません、恥ずかしいところをお見せして」
「ふふっ。本当にどうしようもないんだから」
お嬢様は機嫌良さそうに笑っている。それはもう楽しそうに、幸せそうに。
そして、その顔を見ながら、俺はまた一つ、自分の人生の目標を決めた。
「…………そんな、どうしようもない俺を、貴方は好きだと言ってくれました」
「え?あの、ちょ、え?」
彼女をぐっと抱き寄せ、そのまま自分の腕の中に閉じ込めると、彼女の顔がリンゴのように真っ赤になっていく。
「俺は、頭もよくないし、特別な才能に溢れているわけでもない。それに、洒落た台詞なんて言えないし、気の利いたことができるわけでもない」
最強チートなんて一切無い。ご都合主義なんてものからも蚊帳の外だ。
「だけど、そんな俺を貴方は特別にしてくれた」
でも、そんな物なくても、俺はもう特別だ。なんたって、こんな可愛い女の子の愛を独り占めできるくらいなんだから。
「貴方の泣き顔は何度も、何度も、それこそ嫌になるほど見てきました。なので俺は今、ここで誓います。今度はそれに負けないくらい笑顔にするって。この世の誰よりも幸せにするって」
もう泣かせない、悲しませない。そう俺は自分に誓った。
自分で決めた目標を一度も破ったことが無いのが、地味で、普通な俺にとって何よりの自慢だから。
「だからどうか、俺と一緒にこの先を歩んでくれませんか?」
俺は彼女にその手を差し出す。これからは、一緒に悩みながら人生を送っていきたいから。俺だけでも、彼女だけでもなく、二人で。
「………………そんなの、答えは決まってるじゃない。聞くまでも無いわ」
お嬢様はわがままで面倒くさい人だ。ぜんぜん素直じゃなくて、いつも回りくどい。
「それは、失礼しました」
「ふん。反省しなさい」
だけど今は、そのそっと重ねられた手が何よりもわかりやすい答えを俺に教えてくれる。
そして、それとともに思ったのだ。俺の、俺だけのお嬢さまはやっぱり可愛いって。
体も動かないので、その赤い綺麗な瞳をジッと見つめていると、顔を逸らされてしまった。
そして、残念に思いながら俺が見るのをやめると、視線がまたこちらを向いたような気がしたのでもう一度相手の方を向く。
だが、またもや、サッと顔を逸らされてしまう俺。
(目も赤いし、なんかウサギみたいで和むなぁ)
少し楽しくなってきてしまった俺が、見る・逸らされるを繰り返していると、彼女の顔が真っ赤になっていった。
「もう、なんなのよ!!主人は私よ!?なんで私から逸らさなきゃいけないのよ!」
彼女は俺から距離を取ると、地団駄を踏みながら、子供のような癇癪を起こしてそう言う。
「すみません。じゃあ、次からはあまりジロジロと見ないようにします」
「………………やっぱり、それはダメ」
しおらしいお嬢様を見ていると、ついイジメたくなってしまうのは俺がガキだからだろうか。
今までも軽口を叩くことはあったが、可愛いと思っていた子に熱烈な好意を示されるという、童貞の夢のような経験にどうやら俺は舞い上がってしまっているようだった。
「じゃあ、ずっと見てます」
「ふ、ふーん。そんなに私のことが見たいの?仕方のない男だこと」
「はい。お嬢様は可愛いので」
「あ、あ、あ、貴方!!ちょっと調子に乗ってるんじゃないの!?」
初めてのモテ期なのでそこはご容赦頂きたいところだ。地味面、チートなしの、ザ・普通の日本人である俺にとっては、願っても無いほどの幸福なんだから。
「いやー、めちゃくちゃ嬉しくて。それに、もともとお嬢様をハッピーエンドにするために動いてたので、さっきの笑顔見たらもう、感慨深くて」
本当に、長い日々だった。何度も戻って、その度に考えて、走り続けてきた。
まさか、こんな結末で終わるとは思ってもみなかったけど、彼女が笑える最後が来て本当に良かった。
「本当に、本当に、よかった」
「…………貴方、泣いてるの?」
「そりゃ……泣きますよ。俺は、笑顔で終わる物語が大好きなんですから!だから、諦めなくて、本当に、よかった」
言いながら、格好悪くも鼻水を垂らしながら泣いてしまう俺。世のイケメンたちのようにスマートになり切れないところが本当に俺らしい。
だけど、彼女はそんな俺の頭を抱きかかえ、涙が服に着くのも気にせず優しく包んでくれた。
「私は、そんな貴方が大好きよ。地味で、普通で、気の利いた台詞も全く言えないけれど。そんなの関係ないくらい、優しくて、暖かかくて、真っ直ぐで。だからこそ、私は救われたの」
まるで、世界を弄ぶ悪女のような外見の彼女は、慈愛に満ちた声とともに頭をそっと撫でてくれる。
俺は、そんな素敵な彼女がこれまで悲しい人生を送ってきたことを不憫に思うとともに、誰にもその魅力が気づかれなかったことにほっと安堵した。
◆◆◆◆◆
そのまましばらくして落ち着いてくると、母親にあやされる子供のような状態に少し気恥ずかしさを感じ始めた。
「すみません、恥ずかしいところをお見せして」
「ふふっ。本当にどうしようもないんだから」
お嬢様は機嫌良さそうに笑っている。それはもう楽しそうに、幸せそうに。
そして、その顔を見ながら、俺はまた一つ、自分の人生の目標を決めた。
「…………そんな、どうしようもない俺を、貴方は好きだと言ってくれました」
「え?あの、ちょ、え?」
彼女をぐっと抱き寄せ、そのまま自分の腕の中に閉じ込めると、彼女の顔がリンゴのように真っ赤になっていく。
「俺は、頭もよくないし、特別な才能に溢れているわけでもない。それに、洒落た台詞なんて言えないし、気の利いたことができるわけでもない」
最強チートなんて一切無い。ご都合主義なんてものからも蚊帳の外だ。
「だけど、そんな俺を貴方は特別にしてくれた」
でも、そんな物なくても、俺はもう特別だ。なんたって、こんな可愛い女の子の愛を独り占めできるくらいなんだから。
「貴方の泣き顔は何度も、何度も、それこそ嫌になるほど見てきました。なので俺は今、ここで誓います。今度はそれに負けないくらい笑顔にするって。この世の誰よりも幸せにするって」
もう泣かせない、悲しませない。そう俺は自分に誓った。
自分で決めた目標を一度も破ったことが無いのが、地味で、普通な俺にとって何よりの自慢だから。
「だからどうか、俺と一緒にこの先を歩んでくれませんか?」
俺は彼女にその手を差し出す。これからは、一緒に悩みながら人生を送っていきたいから。俺だけでも、彼女だけでもなく、二人で。
「………………そんなの、答えは決まってるじゃない。聞くまでも無いわ」
お嬢様はわがままで面倒くさい人だ。ぜんぜん素直じゃなくて、いつも回りくどい。
「それは、失礼しました」
「ふん。反省しなさい」
だけど今は、そのそっと重ねられた手が何よりもわかりやすい答えを俺に教えてくれる。
そして、それとともに思ったのだ。俺の、俺だけのお嬢さまはやっぱり可愛いって。
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