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1話 転校生
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柔らかな笑顔にふくよかな体型をした中年の女性教師が転校生を連れてきた。
おっとりとした先生だったが昔は合唱部をやっていたようでその声は教室中によく響いた。
「今日からこのクラスの仲間になる、神原千秋さんよ」
先生が率先して拍手を送ると、教室の中からまばらに拍手が上がる。新学期から少し遅れてやってきたその転校生に、みんな戸惑っているのだ。
転校生は黒板に自分の名前をスラスラと書くと、くるりと回ってこちらを向くと、歯を見せて笑った。
「俺は、神原千秋! よろしくな!」
高校生にしては小さく、幼い顔立ちに、日に焼けた肌、少し高めの声が妙にマッチしていた。
「あ! 大事なこというの忘れてたわ! 俺、恋愛対象は男だけやから、そこんとこよろしくな!」
突然のカミングアウトにぽかんとする教室。先生も驚いたように目を見開いている。しかしすぐにいつもの笑顔を取り戻すと、気を取り直して神原の席を伝える。
「それじゃ、神原さんの席は……如月さんの後ろの席ね。みんな仲良くしてあげてね」
名指しで指名された如月とは誰のことだろうと考えてから、俺のことだと気がついた。如月という名字を持つのはこのクラスでは俺だけだった。
千秋は教壇から軽々と降りてくると真っ直ぐに如月の方に向かってくる。如月はただ茫然と近づいてくる神原を見つめていると、彼はウィンクを如月に送ってきた。
その瞬間、如月の中で何かが弾けるような音が聞こえた気がした。
教会で鳴るような荘厳な音ではなく。例えるなら、ソーダが弾けるような、軽くて可愛らしい音が。
「よろしくな、如月……何くんなんや?」
最初に見せたような満面の笑みで千秋は如月に手を差し出した。
運命的な出会い。
もう二度とこんな感覚を味わうことはないだろう、と如月は頭の片隅で思った。
そいつは、太陽に向かって満点の花を咲かせるひまわりのようなやつだった。
おっとりとした先生だったが昔は合唱部をやっていたようでその声は教室中によく響いた。
「今日からこのクラスの仲間になる、神原千秋さんよ」
先生が率先して拍手を送ると、教室の中からまばらに拍手が上がる。新学期から少し遅れてやってきたその転校生に、みんな戸惑っているのだ。
転校生は黒板に自分の名前をスラスラと書くと、くるりと回ってこちらを向くと、歯を見せて笑った。
「俺は、神原千秋! よろしくな!」
高校生にしては小さく、幼い顔立ちに、日に焼けた肌、少し高めの声が妙にマッチしていた。
「あ! 大事なこというの忘れてたわ! 俺、恋愛対象は男だけやから、そこんとこよろしくな!」
突然のカミングアウトにぽかんとする教室。先生も驚いたように目を見開いている。しかしすぐにいつもの笑顔を取り戻すと、気を取り直して神原の席を伝える。
「それじゃ、神原さんの席は……如月さんの後ろの席ね。みんな仲良くしてあげてね」
名指しで指名された如月とは誰のことだろうと考えてから、俺のことだと気がついた。如月という名字を持つのはこのクラスでは俺だけだった。
千秋は教壇から軽々と降りてくると真っ直ぐに如月の方に向かってくる。如月はただ茫然と近づいてくる神原を見つめていると、彼はウィンクを如月に送ってきた。
その瞬間、如月の中で何かが弾けるような音が聞こえた気がした。
教会で鳴るような荘厳な音ではなく。例えるなら、ソーダが弾けるような、軽くて可愛らしい音が。
「よろしくな、如月……何くんなんや?」
最初に見せたような満面の笑みで千秋は如月に手を差し出した。
運命的な出会い。
もう二度とこんな感覚を味わうことはないだろう、と如月は頭の片隅で思った。
そいつは、太陽に向かって満点の花を咲かせるひまわりのようなやつだった。
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