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2話 学校案内
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しおりを挟む興味、関心、期待――。
いろんな眼差しが千秋を射抜く中、一人だけ目を丸くして何かに驚いたような顔をしていた。
過去に出会っているとか、そんなアニメみたいな展開はなく。正真正銘、初対面なのにその生徒はじっと千秋のことを見ていた。
無表情なのに、大きく見開かれた瞳は花火が打ち上がったようにキラキラと輝いていた。
その瞳に囚われた時、なぜだか千秋はその生徒のことを知りたいと心から思った。
もしかしたら、それは運命的出会いというのかもしれない――。
「お前の目が、俺のことを知りたいって言ってたからや」
「……なんだよ、それ。そんなの、お前の勝手な妄想じゃないか」
「そうかもしれんな。だけど、正解やろ?」
自信ありげに言うその様子に湊は唇を噛み締める。
なぜなら、千秋の言ったことは間違いじゃなかったから、何も言えなかった。
真っ直ぐに湊を見つめる千秋の視線から逃げるように顔を俯かせる。
「ちょっとずつでええんや。だから、俺と仲良くしてくれんか?」
逃げた視線を追いかけるように千秋は覗き込んできた。
バチっと視線が絡み合う。千秋の瞳が不安そうに揺れていることに、その時になって気が付いた。
――こいつも、不安に思うんことあるんだな。
そう考えた時、湊は気がついたら頷いていた。
「……わかった。わかったから、いい加減離れろ」
ため息を吐きながら千秋の体を押す。千秋はきょとんとした顔を見せた後、相好を崩した。
そして、せっかく体を離したのに飛びつくように湊の体に抱きついてきた。
「や、やめろ! 離れろって!」
「ええやないか、ええやないか!」
ニコニコと嬉々として笑う千秋の体を押し返すのに、それ以上の力で彼は抱きついてきた。
必要以上に近づいてくるやつは苦手なはずだった。なのに、千秋が近くに来るのは思ったより嫌ではなかった。
むしろ、心臓がさっきよりも早く波打つほど、気持ちが乱される感じがした。
――どうして俺の心臓はこいつのせいでまた跳ねるんだ……!
湊は自分の感情のコントロールがうまくできなくて、イラついてくる。
だけど、それは嫌なものではなく、どこか心地良いものだった。
次第に抵抗する力は弱くなっていき、最後には諦めたように肩の力を抜いて千秋の好きなようにさせた。
それが千秋にも伝わったのか、抱きつく力が強くなる。
人に触られるのは嫌なはずなのに、と考える。
――でも、こいつに触られるのは嫌な感じがしない。むしろ、温かくてむず痒い……なんなんだ、この気持ちは。
むすっと顔を顰めてどれだけ考えても答えは見つかりそうになかった。
だけど、千秋とならその答えも見つかるような予感がした。
湊はぐりぐりと頭を押し付けてくる千秋のうなじを見つめる。
「…………神原」
その名前を口に出した時、湊の心臓がドクン、と熱く跳ねたのが自分でもわかった。
とても小さな声でつぶやいたが、千秋の耳にははっきりと伝わったのかピタリと動きが止まる。
そしてガバッと顔をあげると、太陽の光に照らされてキラキラと光る瞳と湊の瞳がバチっと絡まる。
「やっと、名前を呼んでくれたな」
ニカっと笑う彼に湊の心臓は性懲りも無く跳ねる。この笑顔を見せられると湊は何も言えなくなる。
「名前くらい……別に呼べる……」
「あはは! それでも俺が嬉しいんや。ほら名前を呼ぶって相手を見てるってことやろ? 如月が初めてちゃんと俺を見てくれたんやって思うたら、そりゃあ嬉しくもなるやろ!」
そう言いながら千秋は体を離し、千秋の手を握る。引っ張るように歩き出す背中を見つめる。
「これからいろんなことしような。如月となら、きっと楽しい毎日になる気するんや!」
千秋の言葉に、見えないとわかっていても湊は自然と頷いていた。千秋の感じているものを湊も感じていた。
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