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2話 学校案内
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静かに近づいてきて座っている湊に顔を近づける。
「見てみぃ。ちゃんと的に当たるんやで。すごいやろ!」
弓を持っているから抱きついてくることはなかったが、それくらいの勢いはあった。
周りで待機していた生徒たちはあの矢を放った千秋を感心したように見ていた。
「神原! すごいな、お前。即戦力じゃねぇか!」
興奮したように顔を赤くした雄大が二人の元にくる。湊の隣に座っていた剛志も力強く頷いていた。
当の本人は照れた様子でヘラヘラと笑っている。
「いやーまだまだっすよ。今日は如月に見られとるって思ったら、緊張してうまくいかんかったから」
中心により近いところに刺さっている矢を見ると反省したように肩を落とす。しかしすぐに立ち直ったようでニパッと笑うと湊の方を見る。
「次は絶対に真ん中射抜いてやるからな!」
指で拳銃のようなポーズを取ると湊の心臓を目掛けてバーンっと打つ真似をする。
「こいつを狙っても仕方がないだろ」と、雄大が冗談混じりに笑っている。それに千秋は笑って「何も間違っとらんですよー」と返した。
「俺は如月と仲良うしたいんです。きっかけなんて、何でもええけど……でも、俺のかっこええ姿見て興味持ってもらえたら嬉しいやないですか!」
胸を張ってそう言った千秋は、同意を求めるように湊の方を見た。何でこっちを見るんだ、と思いながら湊は視線から逃げるようにそっぽを向く。
「…………興味なら、もう、持ってる」
「……! な、なんて? もういっぺん言ってくれへんか!?」
「だ、誰が言うか!」
キラキラとした瞳がずいっと目の前に迫ってきて思わずその場でのけぞる。期待に満ちて、嬉々とした笑顔にどんどんと逃げ場を奪われていくようだった。
「あはは、二人は仲がいいんだな」
二人のやりとりを見ていた雄大が楽しそうに笑った。そして、千秋の肩に手を乗せる。
「神原は入部希望で良かったんだよな?」
「はい! 俺なんかでよければ!」
「お前みたいな実力者を引き抜かなかったら、杉浦先生にも他の部員からも恨まれるわ」
雄大が顧問の剛志や千秋の弓捌きを見ていた他の部員を見渡すと力強く頷いた。
「よっしゃあ! あざっす! そんでもって、今日からよろしゅうお願いします!」
千秋はビシッと気をつけの姿勢を取ると、九十度まで腰を曲げてお辞儀をする。良くも悪くも千秋は体育会系の性格をしているようだった。
「本当に面白いやつだな……入部届は今から渡すとして、今日はどうする? このまま練習に参加していくか?」
「うーん。今日は如月に案内してもらってるんで、やめときますわ。また明日から練習にきてもええですか?」
「もちろん。じゃあ、書類持ってくるから神原は着替えてて」
雄大は踵を返して控え室とは違う部屋に入っていく。
「んじゃ、俺、ちょっと行ってくるわ!」と言って千秋も控え室に行ってしまう。その間、湊は何もいえず、二人を見送ることしかできなかった。
今日一日を通して、湊の心臓は休まることを知らないようだった。
「見てみぃ。ちゃんと的に当たるんやで。すごいやろ!」
弓を持っているから抱きついてくることはなかったが、それくらいの勢いはあった。
周りで待機していた生徒たちはあの矢を放った千秋を感心したように見ていた。
「神原! すごいな、お前。即戦力じゃねぇか!」
興奮したように顔を赤くした雄大が二人の元にくる。湊の隣に座っていた剛志も力強く頷いていた。
当の本人は照れた様子でヘラヘラと笑っている。
「いやーまだまだっすよ。今日は如月に見られとるって思ったら、緊張してうまくいかんかったから」
中心により近いところに刺さっている矢を見ると反省したように肩を落とす。しかしすぐに立ち直ったようでニパッと笑うと湊の方を見る。
「次は絶対に真ん中射抜いてやるからな!」
指で拳銃のようなポーズを取ると湊の心臓を目掛けてバーンっと打つ真似をする。
「こいつを狙っても仕方がないだろ」と、雄大が冗談混じりに笑っている。それに千秋は笑って「何も間違っとらんですよー」と返した。
「俺は如月と仲良うしたいんです。きっかけなんて、何でもええけど……でも、俺のかっこええ姿見て興味持ってもらえたら嬉しいやないですか!」
胸を張ってそう言った千秋は、同意を求めるように湊の方を見た。何でこっちを見るんだ、と思いながら湊は視線から逃げるようにそっぽを向く。
「…………興味なら、もう、持ってる」
「……! な、なんて? もういっぺん言ってくれへんか!?」
「だ、誰が言うか!」
キラキラとした瞳がずいっと目の前に迫ってきて思わずその場でのけぞる。期待に満ちて、嬉々とした笑顔にどんどんと逃げ場を奪われていくようだった。
「あはは、二人は仲がいいんだな」
二人のやりとりを見ていた雄大が楽しそうに笑った。そして、千秋の肩に手を乗せる。
「神原は入部希望で良かったんだよな?」
「はい! 俺なんかでよければ!」
「お前みたいな実力者を引き抜かなかったら、杉浦先生にも他の部員からも恨まれるわ」
雄大が顧問の剛志や千秋の弓捌きを見ていた他の部員を見渡すと力強く頷いた。
「よっしゃあ! あざっす! そんでもって、今日からよろしゅうお願いします!」
千秋はビシッと気をつけの姿勢を取ると、九十度まで腰を曲げてお辞儀をする。良くも悪くも千秋は体育会系の性格をしているようだった。
「本当に面白いやつだな……入部届は今から渡すとして、今日はどうする? このまま練習に参加していくか?」
「うーん。今日は如月に案内してもらってるんで、やめときますわ。また明日から練習にきてもええですか?」
「もちろん。じゃあ、書類持ってくるから神原は着替えてて」
雄大は踵を返して控え室とは違う部屋に入っていく。
「んじゃ、俺、ちょっと行ってくるわ!」と言って千秋も控え室に行ってしまう。その間、湊は何もいえず、二人を見送ることしかできなかった。
今日一日を通して、湊の心臓は休まることを知らないようだった。
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