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4話 体育祭 -前編-
4-1
雲一つない晴天。澄んだ青空がどこまでも続いている。
その頂点にはキラキラと輝きながら爛々と降り注ぐ太陽がある。
生徒たちはそれぞれのクラスに割り振られた色のハチマキを頭につけて、今かいまかとその瞬間を待っている。
五月の半ばといえ、遮るものも何もない炎天下の中その時を待つのはなかなか酷なものがあった。
ツーっと首筋を汗が伝い、額にもじんわりと滲む。
湊は学校指定の体操服の上から、紺色のジャージを着ている。周りの生徒を見ても、そんな暑苦しい格好をしているのは湊ただ一人だった。
「……暑い…………溶ける」
睨みつけるように前の生徒の頭を見る。
「だから、そんな格好やめろよって言っただろ」
呆れたように後ろから声がかけられる。学級委員としてクラスメイトを一列に並べていた和馬が後ろから戻ってきているところだった。
「別にいいだろ、格好の指定はなかったんだから」
「でも、暑いんだろ? 脱いだら? 見てるこっちも暑苦しいって」
爽やかな笑顔を浮かべながら、湊のジャージをくいくいっと引っ張る。湊は嫌そうに顔を顰めながらその手を振り払う。
「そうだぞ、如月。これから長いっていうのに、バテられたら俺たちが困るだろうが」
湊よりも少し背の低い晶が振り返って言う。つるんとした頭が太陽のせいで光って見えるようだった。
日に焼けた褐色の肌に、引き締まった体を惜しげなく体操服の下から覗かせている。スポーツマンらしい体格をしていた。
「ほっとけ……別に、これくらいでバテねぇよ」
「じゃあ、せめてその髪を括るとか……」
「必要になったらやる。今はやらない」
気分を損ねたようにそっぽを向く湊に和馬は「ありゃ、拗ねちゃった?」と軽口を叩く。
湊はふんっと鼻を鳴らし、ズボンのポケットに両手を入れる。視線をずらすと、列の前の方で忙しなく動く金髪の頭が目に入る。
周囲の人と話しながら場を盛り上げているようで、笑い合う声が湊の方まで届いてくる。
それをじっと見つめていると、目の前に和馬の顔がニョキっと地面から芽が生えるように現れる。
「な、んだよ……」
驚いて思わず体をのけぞらせる。和馬はじっと湊の顔を見た後、ニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべた。その顔からいい気がしなくて背筋がゾッとする。
「湊ー、お前さー」と、言いながら和馬が湊の肩に手を回す。そして前にいた晶も同じような笑顔を浮かべて湊の方を見ていた。
「お前って、いつも何考えてるかわからなかったけどさ、案外わかりやすいところあるんだな」
晶が湊の腕をバシバシ叩きながら豪快に笑う。そして和馬も同意するように頷いている。
「そうなんだよー。こいつ、すごいわかりやすくて面白いだろ」
「は、はぁ!? 何訳わかんないこと言ってるんだよ!」
ずっしりと体重をかけてくる和馬を押し返しながら湊が怒る。しかし、どれだけ力を込めても和馬は離れることなく、むしろ肩に乗った手に力が入る。
周りの生徒もちらちらと湊たちの方を見ては笑っている。それが恥ずかしくて湊は「離れろ!」とさらに怒り出す。
「なんなんだよ、お前。最近やけに突っかかってきやがって……!」
無理やり体を引き離すと、お得意の威嚇を和馬に見せるが、彼は慣れた様子で笑うだけだった。
「あはは、ちょっとな……でも、悪くないだろ、今の生活も」
湊の心の内側を見透かすような瞳に、ドキッと心臓が跳ねる。
――そうだ、こいつは知ってるんだった。
それに気がつくと湊の心は自然と落ち着きを取り戻す。油断すれば和馬のペースに乗せられて、いらないことまで言ってしまうところだった。
その頂点にはキラキラと輝きながら爛々と降り注ぐ太陽がある。
生徒たちはそれぞれのクラスに割り振られた色のハチマキを頭につけて、今かいまかとその瞬間を待っている。
五月の半ばといえ、遮るものも何もない炎天下の中その時を待つのはなかなか酷なものがあった。
ツーっと首筋を汗が伝い、額にもじんわりと滲む。
湊は学校指定の体操服の上から、紺色のジャージを着ている。周りの生徒を見ても、そんな暑苦しい格好をしているのは湊ただ一人だった。
「……暑い…………溶ける」
睨みつけるように前の生徒の頭を見る。
「だから、そんな格好やめろよって言っただろ」
呆れたように後ろから声がかけられる。学級委員としてクラスメイトを一列に並べていた和馬が後ろから戻ってきているところだった。
「別にいいだろ、格好の指定はなかったんだから」
「でも、暑いんだろ? 脱いだら? 見てるこっちも暑苦しいって」
爽やかな笑顔を浮かべながら、湊のジャージをくいくいっと引っ張る。湊は嫌そうに顔を顰めながらその手を振り払う。
「そうだぞ、如月。これから長いっていうのに、バテられたら俺たちが困るだろうが」
湊よりも少し背の低い晶が振り返って言う。つるんとした頭が太陽のせいで光って見えるようだった。
日に焼けた褐色の肌に、引き締まった体を惜しげなく体操服の下から覗かせている。スポーツマンらしい体格をしていた。
「ほっとけ……別に、これくらいでバテねぇよ」
「じゃあ、せめてその髪を括るとか……」
「必要になったらやる。今はやらない」
気分を損ねたようにそっぽを向く湊に和馬は「ありゃ、拗ねちゃった?」と軽口を叩く。
湊はふんっと鼻を鳴らし、ズボンのポケットに両手を入れる。視線をずらすと、列の前の方で忙しなく動く金髪の頭が目に入る。
周囲の人と話しながら場を盛り上げているようで、笑い合う声が湊の方まで届いてくる。
それをじっと見つめていると、目の前に和馬の顔がニョキっと地面から芽が生えるように現れる。
「な、んだよ……」
驚いて思わず体をのけぞらせる。和馬はじっと湊の顔を見た後、ニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべた。その顔からいい気がしなくて背筋がゾッとする。
「湊ー、お前さー」と、言いながら和馬が湊の肩に手を回す。そして前にいた晶も同じような笑顔を浮かべて湊の方を見ていた。
「お前って、いつも何考えてるかわからなかったけどさ、案外わかりやすいところあるんだな」
晶が湊の腕をバシバシ叩きながら豪快に笑う。そして和馬も同意するように頷いている。
「そうなんだよー。こいつ、すごいわかりやすくて面白いだろ」
「は、はぁ!? 何訳わかんないこと言ってるんだよ!」
ずっしりと体重をかけてくる和馬を押し返しながら湊が怒る。しかし、どれだけ力を込めても和馬は離れることなく、むしろ肩に乗った手に力が入る。
周りの生徒もちらちらと湊たちの方を見ては笑っている。それが恥ずかしくて湊は「離れろ!」とさらに怒り出す。
「なんなんだよ、お前。最近やけに突っかかってきやがって……!」
無理やり体を引き離すと、お得意の威嚇を和馬に見せるが、彼は慣れた様子で笑うだけだった。
「あはは、ちょっとな……でも、悪くないだろ、今の生活も」
湊の心の内側を見透かすような瞳に、ドキッと心臓が跳ねる。
――そうだ、こいつは知ってるんだった。
それに気がつくと湊の心は自然と落ち着きを取り戻す。油断すれば和馬のペースに乗せられて、いらないことまで言ってしまうところだった。
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