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4話 体育祭 -前編-
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澄んだ青空の下で体育祭の開会式はつつがなく進んでいく。
実行委員の言葉に校長の話。無駄に長い開会式を静かに聞いていた湊のフラストレーションはだんだんと溜まっていく。
ただでさえ五月なのに暑い中に立たされているのだ。生徒の健康面を考えて手短にするべきだろう、と考え、壇上の先生を睨みつける。
負のオーラを背中で感じている晶はくすくすと小さな声で笑っていた。
そして、長い開会式が終わった後、生徒たちはそれぞれの競技の場所に向かって散り散りになる。
競技は目玉の男女別のリレーの他に、バレーボール、バスケットボール、サッカーが行われる。それぞれの種目ごとにトーナメントが開かれる。基本は同学年同士のトーナメントだが、各学年で一位になったチームは最後に総当たり戦で真の一位を決めるのだ。
湊は基本的に運動が苦手で、どの競技でも役に立たないことの方が多い。しかし、背が高いためいるだけで相手にプレッシャーを与えることができるとしてバレーボールやバスケットボールのメンバーとして選ばれていた。
今年はバレーボールの選手として役振られているため、体育館に移動しようとした。
「みーなとっ!」
暑さで溶けそうな体に鞭打っていたところに後ろからドンっと誰かが抱きついてきた。
その人物は見なくて湊には誰かわかった。
「湊はバレーやんな。試合はいつあるん? 俺、応援に行きたいんやけど」
飛んできたのは千秋だった。
背中に加わる重さに、近くなった顔に例に漏れず顔を赤面させる。そして、湊は無理やり千秋を引き剥がして、サッと距離を取る。両手を広げて警戒する姿を千秋も面白がって真似をする。まるで二人で行うカバディのようだった。
「なんやなんや、やるんか? 身長の高さでは負けとるけど、フィジカルで負けとるつもりはないで」
「……いきなり抱きつくな、暑い、溶けるだろ。それに、お前、最初はリレーだろ……こっちに来てる暇あったら待機場所に行けよ」
「はー、溶けるって……お前ほんま可愛いやっちゃのう! てか、俺の竸技覚えててくれたん? 嬉しいわぁ」
千秋の背中に犬のようなしっぽが見える気がした。ブンブンと振って全身で喜びを表現しているようだった。
「おーい、千秋! リレーの予選始まるってよ」
わらわらと動く生徒の波の中から和馬が手を振っている。千秋は「今行くわ!」と返事をしてから湊の背中から降りた。
そして、わざわざ湊の前に出てくるとニッと笑った。
「絶対優勝してくるからな!」
そう言って千秋は湊の前から消えた。走って和馬の方に向かう千秋の背中を湊は無意識のうちに追いかける。犬のように軽やかに走っていくその姿を見て、湊は小さく笑った。
千秋ならきっと有言実行するだろう。
そう考えながら湊も自分の競技の場所に移動する。
体育館にはバレーボールに参加する生徒が集まっており、二階の観戦スペースには試合がない生徒たちが試合を観戦しようと集まっていた。
湊は第一試合に参加するため、コートの外側にいたクラスメイトのそばに行く。
「よっし、湊も来たし、あれやりますか」
クラスメイトたちの中心にいた明るい茶髪の髪を揺らす男子生徒が湊を手招きする。日に焼けた褐色の肌がスポーツ男子らしいその生徒の名前は鈴木裕也という。彼はバレーボール部に所属しており、趣味で登山をしているという話だった。
湊は裕也のいうあれが何かわかりげんなりとした顔をする。
実行委員の言葉に校長の話。無駄に長い開会式を静かに聞いていた湊のフラストレーションはだんだんと溜まっていく。
ただでさえ五月なのに暑い中に立たされているのだ。生徒の健康面を考えて手短にするべきだろう、と考え、壇上の先生を睨みつける。
負のオーラを背中で感じている晶はくすくすと小さな声で笑っていた。
そして、長い開会式が終わった後、生徒たちはそれぞれの競技の場所に向かって散り散りになる。
競技は目玉の男女別のリレーの他に、バレーボール、バスケットボール、サッカーが行われる。それぞれの種目ごとにトーナメントが開かれる。基本は同学年同士のトーナメントだが、各学年で一位になったチームは最後に総当たり戦で真の一位を決めるのだ。
湊は基本的に運動が苦手で、どの競技でも役に立たないことの方が多い。しかし、背が高いためいるだけで相手にプレッシャーを与えることができるとしてバレーボールやバスケットボールのメンバーとして選ばれていた。
今年はバレーボールの選手として役振られているため、体育館に移動しようとした。
「みーなとっ!」
暑さで溶けそうな体に鞭打っていたところに後ろからドンっと誰かが抱きついてきた。
その人物は見なくて湊には誰かわかった。
「湊はバレーやんな。試合はいつあるん? 俺、応援に行きたいんやけど」
飛んできたのは千秋だった。
背中に加わる重さに、近くなった顔に例に漏れず顔を赤面させる。そして、湊は無理やり千秋を引き剥がして、サッと距離を取る。両手を広げて警戒する姿を千秋も面白がって真似をする。まるで二人で行うカバディのようだった。
「なんやなんや、やるんか? 身長の高さでは負けとるけど、フィジカルで負けとるつもりはないで」
「……いきなり抱きつくな、暑い、溶けるだろ。それに、お前、最初はリレーだろ……こっちに来てる暇あったら待機場所に行けよ」
「はー、溶けるって……お前ほんま可愛いやっちゃのう! てか、俺の竸技覚えててくれたん? 嬉しいわぁ」
千秋の背中に犬のようなしっぽが見える気がした。ブンブンと振って全身で喜びを表現しているようだった。
「おーい、千秋! リレーの予選始まるってよ」
わらわらと動く生徒の波の中から和馬が手を振っている。千秋は「今行くわ!」と返事をしてから湊の背中から降りた。
そして、わざわざ湊の前に出てくるとニッと笑った。
「絶対優勝してくるからな!」
そう言って千秋は湊の前から消えた。走って和馬の方に向かう千秋の背中を湊は無意識のうちに追いかける。犬のように軽やかに走っていくその姿を見て、湊は小さく笑った。
千秋ならきっと有言実行するだろう。
そう考えながら湊も自分の競技の場所に移動する。
体育館にはバレーボールに参加する生徒が集まっており、二階の観戦スペースには試合がない生徒たちが試合を観戦しようと集まっていた。
湊は第一試合に参加するため、コートの外側にいたクラスメイトのそばに行く。
「よっし、湊も来たし、あれやりますか」
クラスメイトたちの中心にいた明るい茶髪の髪を揺らす男子生徒が湊を手招きする。日に焼けた褐色の肌がスポーツ男子らしいその生徒の名前は鈴木裕也という。彼はバレーボール部に所属しており、趣味で登山をしているという話だった。
湊は裕也のいうあれが何かわかりげんなりとした顔をする。
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