1 / 10
第0話 二人だけのプロローグ
しおりを挟む昔に戻れるとするならば、何をしたいか……? と問われれば今の俺はこう言うのではないだろうか。
「あいつのことをもう少し知っておけばよかった」と。
文野茉莉、それが俺の同居人の名前だ。
元々こいつとは知り合い同士というか、親戚同士で家族間の仲が良いというか、とにかく顔を見る機会が多分にあった。
最初から知っているのと後から知るのでは苦労の質が段違いで、絶賛俺もこれに悩まされた。
というのもだ。俺とこいつは反りが合わない。
言い換えれば馬が合わない、気が合わないとなんとでも表現する言葉はあるがまさにそれなのだ。
些細な部分で違いを感じてしまってそれにイラつく部分が多々ある。
ただ、当時の俺は数年先に同じ空間にいたこの女と一緒に生活するなんてことを想像できるわけも無く、ただただ顔を知っている親戚程度の中に留めてしまう。
もし、それをあらかじめ知っていたのであれば俺も彼女のことを知ろうと心がけただろう。例えばなにが好きでなにが嫌いか、どんな音楽が好き? 少しでも自分と共通する部分を知ろうとしたはずだ。だがあくまでこれはもしもの話、ただのたらればだ。
「ねえ、私朝ごはんはパン派だっていったよね」
「知らないよ、俺は白米派だ。食いたきゃ自分で作れ」
「ちっ」
これは俺らが一緒に住むこととなった最初の頃の会話だ。
見て分かる通り些細な違いだ。
こんな違いも重なれば嫌な部分となる。塵も積もれば山となる……だな。
つまるところこの物語は俺と彼女が互いの違いを受け入れながら、時には喧嘩し時には仲良く、二人の間にあった溝を深めていくといった物語である。
「ねえ、そろそろいこうよ」
「ああ、わかってる」
「あっそ……」
いちいち反応が冷たい奴だな。元はといえばお前が――。
――まあいい。俺は机の上に置いた鍵を取り玄関へと向かう。
ずんずんと前を歩くこいつに一言言ってやりたいがすんでのところで抑える。
家の鍵をかけ、買い物へと向かう。
「朝は言いすぎた……ごめん」
「俺も悪かったよ……」
なんだよ急に……。
こんな感じで俺は、こいつにいやな部分を感じながらも一緒に生活をしている。
「それじゃあ、行くぞ……」
「うん」
俺とこいつの距離は、今は家族とも他人ともいえない微妙な距離感。
でもそれは今はまだ……というだけだ。
別に一緒にいく必要なんて無い。けれど俺らは変わらず一緒に家を出る。
切ろうとしても簡単に切れないもの、それこそ、家族の繋がりってものだと俺は考える。
親しくない家族は他人と同義ではあるとは思っているが、それでも……赤の他人と家族ってものの違いはそこなのかもしれない。
だからこれは、そんな他人と思っていた彼女と俺が、一緒に生活し本当の意味で家族となって行く。そんな家族の物語だ。
0
あなたにおすすめの小説
転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください
木野葛
恋愛
食事のあまりの不味さに前世を思い出した私。
水洗トイレにシステムキッチン。テレビもラジオもスマホある日本。異世界転生じゃなかったわ。
と、思っていたらなんか可笑しいぞ?
なんか視線の先には、男性ばかり。
そう、ここは男女比8:2の滅び間近な世界だったのです。
人口減少によって様々なことが効率化された世界。その一環による食事の効率化。
料理とは非効率的な家事であり、非効率的な栄養摂取方法になっていた…。
お、美味しいご飯が食べたい…!
え、そんなことより、恋でもして子ども産め?
うるせぇ!そんなことより美味しいご飯だ!!!
あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た
しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。
学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。
彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。
そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる