反りの合わない俺らが同棲生活をすることになった。

音の葉奏

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第1話 いきなり生活が変わってしまったという話

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 人というものは案外簡単に死んでしまう。

 俺、住谷すみやきずながそれに気付いたのは中学校に入って後のことだった。

 死とは平等に訪れるもので、人はただその順番待ちの列に並んでいる。なるほど実に的を射た表現だと思う。

 つまり順番なんて老若男女問わないわけで誰が先頭で誰が最後尾なのかもわからない。自分がその列のどこに並んでいるのかさえ。終わる直前になってようやく気付くのだ「あ、自分が先頭だったのか」と。

 そんな風に自分が考えるようになった理由が自分の母親の死だった。

 ある日まるでどこかに出かけていったかのようにさらっと居なくなってそのまま帰ってこなくなるのだ。あまりにも突然のことで何がなんだか分からなくなったのを覚えている。

 それを知ったのは俺が中学校から帰ってきて家に居た時だった。急に父さんからスマホに連絡が来たのだ、「一回外に出てきて欲しい」と。
 車内に流れる軽快な音楽が場違いなほど、父さんの顔は酷く暗かった。きっと父さんは音楽なんて耳に入って来ていなかったのだろう。

「母さんが、亡くなりました」

 俺が車に入ってから少しの間の沈黙、そこからの開口一番がこれだった。
 軽快な音楽とはあまりに不釣り合いな内容に頭がパンクしそうになった。

 は? 冗談だろ……? そうは思ったものの父さんのその顔がそれが事実なのだとはっきりと物語っていた。

 そのまま俺は妙に頭に残る軽快な音楽とともに、病院まで連れて行かれた。

 たまに来るのでよく知っている病院なはずなのにこんな場所があったなんてしらなかった。
 病院に入るや変な個室に通され、そこに母がいた。

 今にも動き出しそうなはずなのに、その身体はついぞ動くことは無かった。
 ……そして、そこから一年後くらいには自分の祖父が亡くなった。

 結果最初の感想に行き着いた。

 テレビで毎日のように人が亡くなっている。それをどこか別の世界のことのように俯瞰に眺めていた自分に不意に訪れた現実だった。

 それでも、ある日ふといなくなったと思えば帰ってくるかのように、母もそんなふうに帰ってくるんじゃないかと思っていた。
 しばらく経ってようやくそうした自分の考えは空想だと、自分の現状をしっかりと認識できるようになった。


 
 俺も高校生三年となりもうすぐ卒業を控えていた。

 ありがたいことにそのまま進学できることとなり、俺は少し遠くにある大学に通うこととなった。と言ってもそこには祖母の家があるのだが。

 俺が何故地元の大学に進学しなかったのかといえば、なんだかこの町に虚無感を感じていたからだ。母さんが居たはずなのにその母さんは居なくて……、最後の一ピースがなくなってしまったパズルのようにそこにぽっかりと穴が開いてしまっていたのだ。

 だから、その町では俺の中の小さな穴を埋めることはできないと思い、思い切って町を出ることにした。

 もちろん祖父が居ないということも穴の一つなのかもしれないが、この町ではその穴を埋めるものは見つからないのは分かっていたからこそあえて冒険することにした。

 祖母も、祖父が亡くなっていたこともあり寂しさからか俺をそこに招き入れてくれた……はずだった。

 ——そう、そのはずだったのだ。

 だが、現実とは非情である。祖母はまるで祖父を追うかのように亡くなった。それが高校三年の秋の暮れのことだった。

 進学先は既に決まっていたこともあって、俺が今更その大学に行かないというわけにはいかない。

 話し合いの結果、俺はそのままその祖母の家に住むこととなった。

 ただ、ここで誤算が生じたのだ。

 それが発覚したのはしばらく後のことで、それが起こるまではその家にかかる費用は父さんと半分ずつにして半分は自分で稼ぐということで納得していた。

 むしろかなり俺は得していたことだと思う。

 そもそもだが俺は祖母の家に住むことを前提に大学を決めたわけでなく大学を決め、受けた後にその家に住むことが決まったのである。

 俺は自分でアルバイトなどをしながら一人暮らし……を念頭に置いていただけにその申し出はありがたいことで、だからこそ得をしたというわけだ。

 俺は高校を卒業し、これから住まう家を父さんとともに見に行くことにした……。

 そして、その誤算が正式に発覚した。

 もっと早く発覚してくれればとは思うが、人生そう上手くはいかないことの方が多い。
 なんと、その祖母の家に住む予定だったのは俺と祖母の二人ではなかったのだ。

 そう親戚、えっと関係は何だったっけな……。それはまあ今はいいか。
 その相手も含めてその家に三人で住むことになっていたらしいのだ。

 ただ、今更そんなことを言われたところでどうしようもできるわけではない。
 結果的にその家に俺と父さん、向こうの娘と母の四人が揃い話し合うこととなった。

 とはいうものの、正直話し合うことなどほとんどこれから住むにつれての内容であって、このこと自体はどうしようもできない。時期の問題とぶつかってしまうからだ。

 この時期に俺らが引っ越すことが決まっていたため曜日もずらせない。そのためここから家を探すというのが現実的じゃない。

 それに、ここが一番の決め手だったのだが俺らがもういっぱしの大学生になるわけでそこくらいは当人たちの意見次第で決めようという話になる。

 というか選択肢がそもそも一つしかないのだ。
 現状を受け入れる。それに尽きる。

 向こうも母親ということもあり心配していたのだが俺らの「大丈夫」が決定打となりそのまま俺らの奇妙な同棲生活が始まることとなる。

 むしろここで駄々をこねたら向こう側にもこちら側にも迷惑がかかる。もちろんおばさんのことも知っていたし、この子のことも知っているからこそ迷惑をかけるのは嫌だった。

 その場はそのままお開きとなり再度改めてその家に荷物を運び込む形になる。
 十割納得というわけには行かないが、それでも大学に行くのを諦めることも自分が育った町を出ることを諦め無ければいけなくなったわけでもない。だから個人的にはほとんど問題ない……とそのときまでは思っていた。
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