心のままに

YUKI

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密なる時

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庭の木々は梅雨の訪れに
命を吹き込まれたように
緑をより一層濃くする
夏に向け、葉は勢いを増し
花々は色めき立つ
芍薬は薄いピンクの衣をまとい
ほのかな香りを庭に漂わす
玄関の一角では、
紫陽花が重たげに咲き乱れてる 
縁側で障子を背に霧に煙る庭を眺める
膝に安らかな寝息と、重みを感じ
いつまでもこのままであれと願う
彼の閉じた瞼にかかる髪を
そっと指に絡める
どんな夢を見ているのか
眠る彼の口元がかすかに緩む
誘われるように頬に手を伸ばす
擽ったそうに身じろぎして
寝ぼけ眼で見上げる瞳
吸い込まれるように
瞼に落とす唇
首にかかる彼の腕に辛め取られ
密なる時を漂う
頬にかかる甘い吐息に
我を忘れ、密なる時をただただ漂う
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