エーデルワイス〜戦後記憶を失った少女が自分とは何者か探しに行く物語〜

さかな

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メンダークス(1話)

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目を覚ますとそこには綺麗な白い花と男があった。

「あなたは誰ですか?」
その男は右目に眼帯をつけていた。男は涙を流しながら言う。

「忘れてしまったのかい?」

沈黙が続く。その後彼はゆっくりと口を開けて目を瞑ったまま言った。
「君の父さんだ。ルキウスだ。」
自分の父の名前すら覚えていないのか。さらには自分の名前すら思い出せない。私は彼に尋ねた。

「私は誰ですか。」

彼は驚いていた。またも沈黙が流れた。彼は目を瞑りつぶやいた。

「君の名前はローザだ。私の娘のローザだ。」


この後私は彼にいくつか質問をした。私のいる場所。私に何があったのか。あなたは何をしているのか。私の母親は。
彼は丁寧にひとつひとつ思い出しているのか目を瞑りながら答えてくれた。

私はバナフィットという小さな島で暮らしている。この島は綺麗な海に囲まれ避暑地としても使われる。この街の春は綺麗な花が咲き誇る。夏には豊かな自然と心地の良い海風が吹き渡る。秋には鮮やかな葉が島中を覆う。冬になるとこんこんと優しく雪が降り続ける。
私は家の前にある崖から落ちてしまい意識不明に。それが2ヶ月前のことらしくようやく目を覚ましたようだ。彼に心配をかけてしまった。父は普段しがない農家だそうだ。母は私が産まれてすぐに行方不明に。

これらを語る私の父という人は下を向いていた。辛そうだった。彼を幸せにできるのは娘である私なんだとその時思った。


手足が動くようになり本を読むようにした。しかし、読むことができなかった。喋れているのに読めなくなってしまったのかと不思議に思ったが忘れているものはしょうがないので読めないことを父に伝えた。父は一瞬驚いたが、すぐに私の読もうとしていた本を手に取り教えてくれた。あまりに長い物語だったので私は父に無理をなさらないように言った。すると父は私の目を見つめ無理なんかしていないと笑顔で言いました。私の父は優しい方なのだと思った。



時は流れ2年が経ち私は16歳になりました。
言葉も覚え今も本が大好きです。もう父に読み聞かせをしてもらっていませんが本を読む私の姿を見るのが嬉しいと父は言ってくれます。

ある日いつも通っている図書館で異国の言葉の本を手に取りました。大変古い本だったので興味本位で開きました。


私はその本を元の場所に戻し、家に帰りました。いつも通り父が美味しい料理を作って待ってくれていましたが食べる気にもなれず部屋に篭りました。

「ローザ?どうした。なにかあったのか。」
父はドアの外から話しかけてきました。
「ありました。」
「何があったのか教えてくれ。ほら、ご飯でも食べながら話そうじゃないか。」
父は心配そうにはなしかけてくれた。

いや、父らしく。


「私はどこ出身の人間なの。」
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