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ファーストステージ
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しおりを挟む仕事が終わって陣に電話をすると陣と堀越はもう終わって会社の前で待っていた。
「ごめんごめん遅くなっちゃった」
「もうう、おっそいよ。おなかすいたよ」
堀越が待ちくたびれて頬をふくらませて怒っている。
「ごめん、なかなか抜け出せなくて」
「飲み会に遅れる、これが仕事の出来る男のステータスやないか。堀越はまだまだわかってないわ」
遅れて来た気まずさを陣がすかさず冗談で吹き飛ばしてくれる。
「なによそれ、わかってます。でも仕事のできる男はプライベートに仕事を残さないとも言うわよ」
「わっ出た。堀越必殺の屁理屈返し」
「もぅ。行こう、羽津宮君」
「先輩、ご無沙汰してます」
「あっ越野君」
「あっごめん、越野君に聞かれちゃってさ、羽津宮君が来るならどうしても行きたいって言うから連れて来てあげたの。私たち3人の隠れ家なんだからダメだって言ったんだけど。絶対に他の人には内緒ねっって口止めしてあるから」
「はい誰にも言いません」
「もし他の社員と行ったりしたらホント許さないんだからね」
「堀越先輩がそんな風に言う店ってどんななんですかね、ホントわくわくしちゃいます」
「あんま期待せん方がええぞ、狭苦しい店やから」
「あっ、阿久津さんに言っちゃおう」
「あほ、オレは気に入ってるけどやな。あんまり期待させてがっかりされたらそれこそ阿久津さんに悪いやんけ。オレの優しさや。」
「んぅん・・なんだかまた陣君の口車にごまかされてる気がするわ」
「良いよ、越野君にも会いたかったし」
「ありがとうございます、羽津宮先輩」
店に着くと相変わらず心のこもった接客と料理で阿久津が優しい時間を用意してくれていた。たわいもない話をしながら食事を済ませた後、それぞれ好みのお酒を片手に仕事の話になって行く。
「羽津宮、どうや。派閥争い。完璧巻き込まれてるやろ」
「えっ、全然実感無いよ。派閥があるのも忘れてたくらい」
「中に入ってしまうとそんなもんなんかな、オレは編集部に出入りしてるけど他の部署の人間やから情報が入って来やすいのかもな。付き合いで編集部の人とも呑みに行ったりするんやけど、良く愚痴聞かされてんねん」
「そうなんだ、実際僕は他の編集長ともあんまり話さないし、違いがわからないよ」
「そうやろな、教えといたるわ」
「うん」
「ざっと言うと花谷現編集部部長対、山根編集長って事や」
「えっ、山根編集長と、花谷部長」
「一年半前に山根編集長が販促部部長の席を明け渡したやろ。あれ、自分から言い出した話らしいわ。」
「そうなんだ、会社の意向だと思ってたよ」
「山根編集長はな十数年前の事で役員とのパイプも太くて社内でも特別な存在ってのはまぁ嘘ではないんやけど、実際の所本人がずっと望んでいる編集部の部長の席には着いた事が無いらしい。どうも会社もそこは認めへんらしいわ。」
「えっえどういう事、なんだかサスペンスみたいよね。私ワクワクしちゃう。でっで」
「あほ。こんな事絶対社内で噂するなよ。」
「わかってるって。でっでどうなったの」
「おう、まぁ、なんで会社がそれを認めへんのかはオレにもよく解らんのやけど。その販促部の部長を辞めたとき、山根部長は創立四十周年の盛り上がりに便乗するかたちで編集部での業績を上げて編集部部長の座を本気で狙ってたらしいわ」
「そうなんだ、僕が移動になるまでの間の話だもんね。知らなかったよ」
そう言いながらモモさんが【嫌われ役をやれる人間を会社は手放さない】の時に言っていた事を思い出していた。
「自分自身が仕事が出来る訳ではないが後輩をこき使う人間は会社には都合がいい、中間管理職までならそれで行けるが会社も見抜いて利用してる訳だから、それだけの奴をそれ以上上にはしねぇ」
羽津宮は山根編集長が編集部部長に手が届かない事に妙に納得していた。
「花谷編集部部長は山根編集長にとって後輩に当たるから、他で部長の席が在ったとしても、結果今は部下って事になる。それがプライド的に許せへんのちゃうかな。」
「でも・・・」
「そうや、販促部の部長の席を捨ててまで奪いにかかった編集部部長の席に、それでも届かへんのが現状や」
「そう言う事なんだ」
「おう、そやから山根編集長の下の人間はキツいらしいな、よう愚痴ってるわ。それでも
山根編集長の可能性を信じて着いて行ってる他の編集長の下に着いてるチーフも居るけどな」
「そうだよね、部長が変わったら気に入られているチーフクラスは編集長の席も可能性在るもんね」
「そういうことや」
「大丈夫ですか、羽津宮先輩。先輩はどっちに着くんですか」
「あほ、羽津宮が山根編集長に着く分けないやろ。」
「そうよそうよ、あんな理不尽な人の部長なんて断固阻止だわ」
「そんな方なんですか、山根編集長って。何が在ったんですか羽津宮先輩。」
「やぁぁ、言い辛いな、まぁ僕が悪いんだけどね、悔しい思いをさせられたから。」
「お前はほんまに人がええな。どこがお前が悪いねん」
「うんでも、そう思うんだ」
「まあ、なんにしても椎名編集長の下で良かったな。あの人はああ見えて花谷部長派やからな」
「そうなんだ、意外だな。」
「意外に二人だけで呑みに行ったりしてるみたいやしな」
「そうなんだ、信じられないよ」
「でも気付けろよ、山根編集長は今でもなんかネットを利用した新しい形の出版とか言って役員に直接働きかけてるって噂や」
「あっ、花谷編集部部長も言ってたよ、今編集社はネットとの付き合い方で迷走してるって。」
「たしかにな、じゃあその答えをいち早く出した方がこの勝負に勝つんかもな」
「きゃぁぁ、なんだか興奮しちゃうね。私断然花谷編集部部長を応援しちゃうな。」
「凄いや、羽津宮先輩。そんな大きな話に加わって」
「なっななに言ってんの越野君。僕なんか全然蚊帳の外だよ。編集部の使いっ走りみたいなもんなんだから」
「そうなんですか、でも何かあったら言ってくださいね。僕先輩の仕事なら寝ないで働くって約束忘れてませんから」
「うん、頑張るよ」
「そう言えば羽津宮君、今でも書店に顔出してるの」
「あっそうです僕も聞きたかったんです。ピーアルに行くとみんな言うんですよね『羽津宮君頑張ってるね』って。顔出してるんですか」
「あっバレた。なんだかあれだけお世話になってたのに、部署が変わったからってそれっきりってのも気が引けて、近くに行った時や休みの日なんかにね。顔出すようにしてるんだ」
「マジで。そんな事してんの。どんなけ真面目やねん。びっくりするわ」
「ほんとまね出来ないわ」
「でも陣君だって色々呑みに行ったりしてるじゃない。それと同じ事だよ」
「そやけどそれは仕事に関わるからやで。」
「そうだね、でも何となく気になっちゃうから」
そう言ってごまかしてはいたがそれもモモさんの指示であった。
【未来より過去を大切にしろ】
羽津宮は編集部に異動になってからの半年も、お世話になっていた書店へ顔を出して回ったり青梅部長と呑みに行ったりと、入社してからの人間関係を大切にして来ていた。
特に青梅部長とは以前よりも事在るごとに相談に行ったりとプライベートでの付き合いを親密にしていたのだ。
いつものように終電の時間が近づき飲み会が終わると急いで羽津宮は家に戻りコピー用紙に陣から聞いた派閥の関係図を書いた。十数年前の出来事からのしがらみも合わせて記入し、現在のそれぞれが進めている企画の事なども事細かく記入し頭に叩き込んでいた。
翌日仕事が終わると昨日書いた派閥の関係図を持ってモモさんの元へ急いだ。
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