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ファーストステージ
感傷
しおりを挟む羽津宮は会社に戻るとすぐさま販売促進部へと向かった。入社して二年通ったフロアだがどこか懐かしさを感じる。
この季節になると忙しさを増す販促部は今年も例年通りのようで皆バタバタと書類を持って走り回っている。
「部長どこに居るんだろう」
羽津宮が見渡すと会議室から堀越が出て来て羽津宮を見つけるや走りよって来た。
「あっ羽津宮君、そろそろ来る頃だから会議室用意しておいたよ。もうみんな集まってるから」
「えっ皆って・・」
「いいから早く来て」
そう言うと堀越は羽津宮の手を引き会議室へ急がせた。
羽津宮は「少し遅れたかな」と思い頭を下げながら会議室へ入り「すみません遅くなりました」と詫び、顔を上げて羽津宮は驚いた。
部長を始め、陣や販促部時代に羽津宮を理解してくれていた先輩、羽津宮を慕っていた越野達後輩4人もそこに居た。
「ぶっぶ部長、皆さん」
「花谷部長から詳しく聞いてるぞ。お前の企画なんだってな。協力したいってやつがこんなに集まってるぞ」
「皆さん、ありがとうございます」
「羽津宮、何言うてんねん。あたりまえやろ。オレらがこれまでどれだけお前に助けられて来たと思ってんねん。それにこの企画は書店も巻き込んで行くんやろ、ブックトップの部長にもアポとっといたから任しとけやオレがやらんで誰がやんねん」
「陣君、ありがとう。ブックトップの部長さんなんか僕だけじゃ会えないよ。ありがとう」
「女性目線のポップなら私に任せてよね」
「堀越さん、うん」
「私も今や陣君に負けてないんだから」
「うん、噂は聞いてるよ。堀越さんがコーナー作ると盛り上がるって」
「そうよ。今回の企画は私にぴったりでしょ。やるわよ」
「ありがとう。本当に心強いよ」
「羽津宮先輩」
「越野君達まで」
「僕達じゃまだまだ力になれないかもしれませんが、先輩に指導してもらった通りしっかりイベントやって行きますから。任せてください」
「そんな、頼もしいよ。販促部が最前線だもんね。皆なら安心して任せられるよ」
「はい。僕達が成長した所。見てくださいね」
「うん。」
「羽津宮、すっかり追い越された感じだな。調子に乗ってんじゃないぞ」
「やっ先輩。全然そんな」
「はっは、冗談だよ。お前のおかげでな、販促部はすっかり変わったぞ。なんつーかチームワークっていうかな。こうして編集部との壁もなく企画に取り組めるのもいい刺激だよ。部長も情熱的だし仕事が楽しくなったし、まぁお礼と言っちゃなんだがオレらも気合い入れて行くぞ」
「そんな僕なんか何もしてないですよ。いつまでたっても青梅部長にたよりっきりなだけでいつも青梅部長に『編集部の話を持って来るなって』怒られてばっかりで」
「それは変だな、青梅部長は編集部に行ってもお前が頼って来てくれる事が嬉しくてたまらないって言ってたぞ」
「おい、余計なことを言うな。ワシはただ・・・まぁいい。羽津宮、一応花谷部長から聞いたことはざっくりと皆には伝えてあるが詳しいことを説明してやってくれ。さあ皆席に着いてくれ」
羽津宮は皆が席に着くのを待ち、嬉しさで泣き出しそうになるのを必死でこらえながら説明を始めた、その後いくつか質問等に答え、それぞれが動き始めるタイミングに関しては念入りに打ち合わせをして行った。
陣とは翌日にブックトップの部長の所に説明に行くことになり、書店の方へは堀越と越野と廻ることを決めた。
「僕の方の説明は以上なので特に質問がなければ後は随時連絡を取り合ってって事で宜しくお願いします」
「やぁぁぁほんと燃えちゃうな」
「なんや、堀越は普段の仕事には燃えてへんのか」
「あのね。そう言う事じゃなくて。今回は特別って事」
「さぁ、まだ打ち上げるには早いぞ。まだ仕事中だ、持ち場に戻った戻った」
「あっはぁい、部長。じゃあね羽津宮君」
会議を終え皆が持ち場に戻って行くのを羽津宮は見送っていた。
「羽津宮」
「青梅部長」
「花谷がな・・・羽津宮、お前を見ていると昔のワシのを思い出すってな、仕事っぷりがそっくりだと言ってくれたよ・・・ワシは嬉しかったよ。何だか間違いだったと思っていた自分の仕事への姿勢が認められたような気がした。ありがとうな」
「そんな、お礼を言うのは僕です。部長が居なかったら今会社に居られたかどうかもわからないんですから。いつもありがとうございます」
青梅は潤みかけた目頭をそっと押さえ、おどけるように言った。
「はっはワシこそ打ち上げ気分だな、何を感傷的になってるんだかな。よし羽津宮。この企画絶対成功させるぞ」
「はい」
青梅と別れ羽津宮は編集部に戻りスケジュールの確認とブックトップの部長や、書店廻りで使うプレゼン用の企画書を作り始めた。
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