契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ

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第8章

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 私は大広間の中央に立っている。
 冷たい石の床が足裏にひんやりと伝わり、微かな緊張感が身体を包む。高くそびえる天井には今、新しい紋章旗が掲げられ、王都の陽光を受けてゆらゆらと揺れている。これまで荒れ果てていた玉座の間だが、内乱と帝国軍の侵攻を経て、ようやく形ばかりの修復を終えた。床や壁の傷跡はまだ残っているけれど、そこにも修繕の手が入り、かつてのような華やかさを少しずつ取り戻そうとしている。

 そして今、大広間には人々の視線が一斉に集まっている。私の周囲には兵士や文官、地方領主の代表、商人の組合長など、国の未来を左右する立場にいる者たちがずらりと並んでいるのだ。皆の視線は期待や好奇の色に満ち、ある者は畏怖を、ある者は尊敬を、ある者は探るような険しさを湛えている。

 私は深く息を吸い、かつて血と火のにおいに満ちていた戦場で覚えた緊張とは違う、胸の奥にぎゅっと広がる熱を感じている。――ここが私の“最終決戦”の舞台かもしれないと思う。剣を振るわずとも、言葉と意志でこの国を導く覚悟を試される場所。

「リリア・エヴァレット様、こちらへ」

 クラウスの静かな呼びかけに応じて、私は玉座のほうへ一歩を踏み出す。床の石が足音を吸い、広間のあちこちで衣擦れや甲冑の金属音が小さく響く。大広間の奥に鎮座する玉座は、以前の王が使っていたものとは少しだけ装飾が変わっている。王家の紋章が取り外され、新たな意匠が施されているのだが、それはまだ完成と呼べる状態ではないらしい。

 ゆっくりと歩を進めると、視界の端にアレクシスの姿が映る。いつもと同じように厳めしい表情をしているが、その瞳にはどこか落ち着いた確信を感じる。目が合うと、ほんのわずかにうなずいてみせるので、私も小さく笑みを返す。――いつだって、戦場でもこの王城でも、彼は私の背を守り、必要なときには共に剣を振るってくれた。それは今でも変わらない。

 続いて、私の視線は廊下側に立つ帝国の使節団へ移る。彼らは皇帝ルキウス不在のまま、講和のために派遣された者たちだ。この国との不可侵条約を成すために、最近ずっと王都に留まっていた。黒い礼装に身を包み、こちらを見る目はやや緊張を帯びているように見える。何度か私と直接言葉を交わし、同時に私の改革の進捗をじっと観察してきたが、今日はその総仕上げと言っていい場だろう。

「――皆さま」

 大広間に響く自分の声が、緊張している。けれど、覚悟は揺るがない。私は何度も命を懸けた戦いを乗り越えてきたのだから、今さらこんな場で恐れるわけにはいかない。

「本日、この王都に集まっている方々は、エルヴェイン王国の行く末を共に担う人たちばかりです。私は、建国の女王リゼリアの生まれ変わりと囁かれ、帝国軍との大戦で剣を取って戦いましたが、その力だけで国を支配するつもりはありません。私が望むのは、民と兵、そして地方や王都が互いに支え合う国づくりです」

 言葉を継ぐたびに、口の中が乾くのを感じる。ここに至るまで何度も会議や協議を重ねてきた。地方領主たちの多くが、私の掲げる「中央集権の見直し」と「軍事力の統合」を半信半疑で受け止めているのも知っている。貴族の中には未だ権威を振りかざして抵抗しようとする者がいるし、帝国の使節たちが真に和平を望んでいるのかも、まだ分からない。

(それでも、ここで私が折れてしまえば、再び戦乱の火種が燻り続けるだけだ。絶対に後戻りはしない――!)

 私はおのれを鼓舞するように、もう一度口を開く。

「帝国との大戦を経験した今、私たちは改めて知るべきだと思います。――この国がどれほど弱り切っていたか、そしてもう二度と戦火に巻き込まれることを避けるために何が必要か。私はそのための“形”を、皆さまと創りたいのです。強制ではなく、力任せでもなく。私の“王威”の力を乱用せず、共に歩む道を探っていきたい」

 沈黙が広間を満たす。多くの者たちが息を呑み、私の言葉に耳を傾けているように見える。ふと、帝国の使節が小さく頷き、口を開いた。

「では、我々が提案した不可侵条約についても、その“共に歩む”第一歩と考えてよろしいのでしょうか?」

 その問いかけは、まさに彼らが最も重視している点だろう。私たちが帝国を再び敵視せず、帝国も大軍を差し向けない――暫定的でも構わないから、互いに干渉を控えることを確認したいのだ。
 私はアレクシスに視線を向ける。彼は無言のまま小さく頷く。軍事面を取りまとめる彼からしても、今は帝国と再戦するだけの余力はないし、国の改革を優先すべきだという結論になっている。

「もちろん、帝国が本気でこの国との共存を考えるのであれば、不可侵条約の締結を目指しましょう。ただし、そこにはいくつか条件があります。私たちの領土や民を一方的に脅かす行為を再度行うようであれば、私たちは自衛のために立ち上がることを否定しません。――これは、帝国だけでなく、どの国に対しても同じです」

 使節は真剣な表情で私を見つめる。やがて書類を取り出し、細かい条項を読み上げ始める。互いの領土線や通商路、軍の駐留範囲など、専門的かつ細々とした条件が並び、正直頭が痛くなる。けれど、これこそが戦争を避けるための現実的な下準備だと理解している。

 文官が次々と書類を受け取り、周囲で確認作業を始める。領主たちも交渉の行方を注視している。もし私が、この条約を結ぶ見返りに過剰な譲歩をすれば、国内からの反発は必至。逆に強硬すぎれば、帝国との対立を再燃させるかもしれない。――綱渡りのようなやり取りだ。

 ここで一度、私は深い呼吸をする。戦場と違って、一撃で決着がつくものではない。じわじわと地盤を固め、相手との駆け引きや、国内の理解を得るための丁寧な説明を重ねるしかない。

 クラウスが静かに耳打ちする。
「リリア様、現在のところ、帝国使節は穏健派として振る舞っていますが、交渉が長引けば彼らの立場も危うくなるかもしれません。できれば、早い段階で基礎合意を結び、帝国に持ち帰らせたほうが良いかと思います」
「分かりました。では、先に大枠の合意を得て、その後、細部の条項を詰める形にしましょう。帝国内の情勢を考えると、長期滞在はリスクが大きいのでしょうね」

 交渉の進め方をざっと頭の中で組み立て、私は改めて帝国使節へ向き直る。

「そちらとしても、長々と王都に留まるわけにはいかないでしょう。大筋で合意できる事項を先に取りまとめてしまいませんか? 不可侵とお互いの領土保全、そして通商路の再開など、急務の項目から先に合意しましょう」

 使節はホッとしたように笑みを浮かべ、小さく頭を下げる。
「大変ありがたい申し出です。我々も早期に書面を形にし、帝国内の争いが激化する前に帰還したい。そうすれば、こちらとしても“エルヴェイン王国との和平は成立しうる”と説得材料を得られます」

 こうして国際的な和平への道筋が、ゆっくりとだが確実に進みはじめる。もちろん、これだけで万事解決というわけではない。帝国の内部事情によっては条約が反故にされる可能性だってあるし、私たちの国内にも「帝国など信じられない」と声を荒らげる者がいる。だけど、少なくとも今は戦争を避けるための第一歩を積み上げることが最優先だ。
 和平交渉が一段落すると、次は内政の課題に移る。私が掲げた“中央集権の見直しと軍事力の一体化”をどう具体化するのか、領主や貴族たちがこぞって問い合わせをしてくる。中には「中央集権を弱めるということは、辺境の防衛も自力でやれということか?」と不安を口にする人もいるし、逆に「私の領地は十分に独立採算で回っているから、王都の口出しは不要だ」という強気の発言をする者もいる。

 私は一つひとつの声に耳を傾け、整理していく。もちろん、全員を満足させる方法などない。落としどころを探し、一歩ずつ合意形成を進めるしかないのだ。
 そんな折、ある領主が最前列に進み出て言葉を投げかける。

「リリア様、私どもの領地では先の戦火で大きく疲弊しており、民衆も困窮しています。農地が荒廃し、治安も悪化しています。国として支援をいただきたいのですが、優先順位の問題もあるかと思われます。……中央が新たに権限を小さくするとなれば、補助はどこから得るのか?」

 質問の意図は分かる。中央集権を見直すと言っても、まったく国庫からの支援がなくなるわけではない。むしろ、従来のように特定の貴族だけが優遇されるのではなく、必要な領地には必要な支援を集中させたいというのが私の考えだ。

「ご安心ください。軍事や外交の大枠は王都が責任を持ちますし、復興支援のための基金も新たに設立を予定しています。もちろん、あなたの領地が特に大きな被害を受けているのであれば、早急に調査と援助を行います。……ただし、その一方で領民を過度に圧迫する税制を敷いていないかなど、各地の財政状況も透明化していただきます。それが新体制の条件です」

 領主はうなずきながらも、ほんの少し表情を曇らせる。

「つまり、我々がこれまで王家に隠していた部分にもメスが入るということですか?」
「そうです。私が求めるのは腐敗や隠匿のない政治です。その代わり、民を守る本来の責務を果たしている領主であれば、必要な支援を受けられるようにします。それを不服と感じるなら、改めて申し立てをしてください」

 毅然と言い放つと、一瞬の沈黙が流れる。すぐそばで聞き耳を立てていた領主たちがざわざわとささやき合うのが伝わるが、誰も露骨に反対を口にしない。旧王族の陰謀や帝国との内通など、皆が何かしら隠し事を抱えているのは確かだろう。それでも国が本当に再建されるなら、そこまで強く反抗できないというわけだ。

(ここが踏ん張りどころだ。従来のように黙認ばかりしていては、また腐敗がはびこる。私は今、剣ではなく言葉と政策で腐敗の根源に挑んでいるんだ)

 踏み込んだ改革がどこまで通用するか分からない。でも、戦場をくぐり抜けて得た教訓は明確だ。国を守るために剣だけを振っても、内側が腐っていては再び同じ危機が訪れる。だからこそ私は、これまでの統治体制を変えたいのだ。
 会議が続くなか、ふと入り口付近でひそひそとやり取りをする文官の姿が目に入る。どうやら、宰相レオナールの一派と思しき貴族たちが再び動き出そうとしているという情報がもたらされたらしい。詳細はまだ定かではないが、陰謀の火種が完全に消えたわけではないのだろう。

 しかし、これからは私が王都を、いや国全体を監視し、腐敗や陰謀を防ぐシステムを作っていく。レオナールのような者が現れれば、その都度潰していかなければならない。それは大変な労力だが、逃げるわけにはいかない。
 そうして、長丁場の協議がいったん終了するころには、外の空がすっかり暗くなっている。王都の夜景が広間の窓から見え、灯されたランプや松明が町のあちこちで明かりを放っている。昔は貴族だけが明かりを独占していたが、今は露店や職人街にも灯が広がりつつあるという。わずかな変化かもしれないが、人々が希望を持ち始めた証のようにも思える。

 私は席を立ち、広間を出る。廊下では多くの兵士が警備にあたり、侍女たちが慌ただしく行き来している。誰もが疲れをにじませながらも、明日の糧のために動いているのだ。
 大回廊の突き当たりに差し掛かると、アレクシスが壁にもたれかかって私を待っていた。見ると、彼はいつも以上に険しい表情をしている。

「……どうしたの?」

 私が尋ねると、彼は一拍置いてから小声で答える。
「さっき、城外で不穏な動きがあったらしい。お前を“簒奪者”呼ばわりする奴らが集まって、兵士とちょっとした衝突を起こした。大規模な暴動にはならなかったようだが、放っておけばまた火種になる」

 私は眉をひそめ、胸に息苦しさが押し寄せる。私の改革を歓迎する者もいれば、王族の正統を失ったこの国を“偽の支配”と罵る者もいるのだろう。

「そちらはどう対応したの?」
「クラウスが派兵し、ひとまず沈静化させた。だが、裏で誰が糸を引いているかを突き止めねばならない。……王都の混乱はまだまだ続くぞ」

 アレクシスの苦い声が胸に刺さる。確かに、王家の血筋を正統視する勢力や、貴族同士の旧い繋がりを利用する集団が裏で暗躍している可能性は高い。私がいくら善意の改革を訴えても、彼らからすれば“新興勢力が既得権を奪うための策略”にしか見えないのかもしれない。

「分かった。これから官吏たちに指示して、まずは事態を調査するようにする。王都の治安維持をより厳重にしなければ……」

 そう言いかけたところで、廊下の奥から足音が聞こえ、クラウスが駆け寄ってくる。彼の額にはうっすらと汗がにじんでいて、よほど急いできたのだろう。

「リリア様、アレクシス様、先ほどの報告について追加情報があります。どうもレオナール派の残党が城外で動員をかけ、あなたを王の座から引きずり降ろそうとしているとの噂が飛び交っています。帝国の使節がいるこのタイミングを狙い、“国の混乱を晒す”ことで国際的な信用を落とそうとしているのかもしれません」
「レオナールの残党……。宰相本人は幽閉中だけど、仲間がまだ動いているのね」

 私が唇を噛むと、アレクシスが低く唸るように言葉を吐き出す。

「奴らにとっては、この国がまとまってしまうのが都合が悪いんだろう。腐敗を取り除かれてしまえば、利権を失う。だからこそ、帝国の使節がいる時を狙い、我々を混乱させたいのさ」

 胸の奥に怒りが燃え上がる。帝国との和平への最中、国内を混乱に陥れて何の得があるのか――そう思う半面、彼らにとっては私の支配基盤が揺らげば、自分たちが再び台頭できると考えているのだろう。

「……放ってはおけないわね。街の人々の不安を煽り、混乱を広げられる前に手を打たないと」

 クラウスは真剣な眼差しでうなずく。

「はい。こちらも兵を増員し、夜間の警備を強化しています。ただ、衝突が大きくなれば、民衆が再び戦火に巻き込まれる恐れがあります。できれば穏便に解決する手立てを探したいのですが」

 もう剣を抜いて内戦をするような真似はごめんだ。せっかく帝国との戦争を乗り越え、国の復興が始まったばかりなのだから。――私は、まずは情報戦で彼らの動きを封じることを選択する。

「それじゃあ、使節団も交えて正式に布告を出しましょう。レオナール派と明確に敵対するわけではなく、“対話に応じる用意がある”と宣言し、そのうえで武力行使を厳禁とする。もしそれを破り、武装蜂起を図るなら、我々も即座に兵を動かす、と」

 アレクシスはわずかに首をかしげる。

「……それで奴らが素直に応じるとは思えんが」
「分かってる。でも、一方的にこちらが“制圧”の姿勢を取れば、レオナール派を『武力で抑え込む独裁者』と宣伝されるリスクがある。そうなれば地方領主にも不信が広がる。だからこそ、表向きはあくまで対話を呼びかけ、和平や改革に応じない者を“反逆”として扱う形にしたいの」

 これは政治的な駆け引きだ。言葉を使い、道理を通す形を演出しなければ、私の求める“新しい国”が、結局は旧来の“力でねじ伏せる王制”と変わらなくなってしまう。レオナールの残党は敵だが、私も無闇に剣を振るえば、国民の心が離れてしまうかもしれない。
 クラウスとアレクシスは険しい顔をしているが、やがてアレクシスが短く息を吐いて同意する。

「……お前がそう決めたなら、俺はそれに従おう。戦場を飛び回るよりはるかに厄介だが、それが今の“戦い”なんだろう」
「ええ。ありがとう、アレクシス」

 実際のところ、レオナール派の残党は分裂しているようだ。宰相に近しい人物の中には、すでに国外へ逃亡した者もいるという。あるいは帝国に近づいて、再侵攻のきっかけを狙う輩もいるかもしれない。
 私は布告文を急ぎ作成し、夜通しで文官たちと校正を重ねる。そこには私の名でこう記してある――「改革に異議があるなら、正々堂々と話し合いの場に出てきてほしい。私はいかなる意見にも耳を貸す。だが、武力や陰謀で民を傷つける行為には断固対処する」と。

 翌朝、その布告が王都じゅうに貼り出され、地方にも伝令が送られる。帝国の使節たちにも正式な宣言を伝え、彼らは戸惑いながらも興味深げに見守っているようだ。――言うなれば、これは私なりの“公開の挑戦状”に近い。もしレオナール派が本当に国を思うなら、武器を置いて話し合いに来い。陰で騒ぎを起こしているのは、国を乱すだけの下策だ、と。

 結果として、残党の一部がこっそり王都を出ていったという報告も上がってくる。おそらく私の布告を受けて、堂々と出てきたところで勝ち目がないと判断したのだろう。裏工作ができなくなれば、ただの反逆者として処罰されるだけだ。
 もちろん、すべてが穏やかに収まったわけではない。町の一角で怪しい集会が確認されたり、夜陰に紛れて兵士に襲いかかった賊がいたり、まだ火種はあちこちに潜んでいる。だが、民衆が私の指針をある程度支持してくれている以上、大規模な蜂起には至らない。私が掲げる改革を支持する領主や商人たちが増えてきたのも大きい。

 一方、帝国使節は私の布告が成果を上げる様子を見て、「なるほど、あなたは力任せに民を従わせるのではなく、言葉と制度でまとめようとしているのだな」と感心している様子だ。先の大戦で私の“剣”と“王威の審判”を思い知った彼らは、その両方を使い分ける私を複雑な眼差しで見ている。

 そんな日々が続き、王城や王都の混乱が一歩ずつ沈静化していくにつれ、帝国使節との交渉も最終段階を迎えることになる。大枠の不可侵と相互尊重の条約締結、通商路の安全保証、戦時賠償の棚上げ――互いに利益がある部分をすり合わせ、譲れない部分を保留にする現実的な落としどころだ。

 そして、今日。使節たちが条約文の最終案を持って大広間へ集まり、私や文官が最後の詰めを行っている。つい先日まで剣を取り合っていた関係とは思えないが、これが“国際交渉”というものなのだろう。

 私が条約文を確認し終わると、使節団の代表が言葉を添える。
「リリア・エヴァレット様。これが成立すれば、当面のあいだ帝国軍がこの国に侵攻することはありません。ただし、帝国内部の情勢によっては新たな皇帝が誕生し、方針が変わる可能性も否定できないことをご理解ください」
「あくまで現行の皇帝陛下、もしくは彼の派閥が権力を握っている前提での講和、というわけですね。承知しています。私たちも、この条約を過信するつもりはありません。もし再び脅威が迫れば、国を守るために立ち上がるのみです」

 私が静かに答えると、使節は満足そうにうなずいてから、周囲にいる文官や兵士へと視線を走らせる。

「しかし、このように短期間で国をまとめ上げ、大戦のあとを復興へ繋げる力には、正直驚嘆しています。……辺境伯や騎士団、そしてあなたの剣と政治手腕。まさしく“覇王”の器と呼ぶに相応しいのかもしれません」

 私の胸に、かすかな誇りが宿る。同時に、かつて自分が“ただの契約結婚の道具”だった頃を思い出す。あのときは家を救うために仕方なく嫁いだだけなのに、今では帝国の使節すら私を“覇王”と称えるとは、運命は分からないものだ。

(でも、私は驕らない。私が誇るべきなのは“私自身の力”ではなく、“共に戦ってくれる仲間たち”と“国を変えたいと願う人々”の存在だ)

 そう思い直しつつ、私は穏やかな笑みを返す。
「ありがとうございます。けれど、私はまだ国を統べる途中です。――この国に真の安定と繁栄をもたらすには、これからが勝負だと覚悟しています」

 使節たちは敬意を示すように一礼し、条約文の確認を終える。そうして、いよいよサインが行われるときがやってきた。大きな机が大広間に運び込まれ、使節の代表が署名をし、私もそこに名を記す。最後にクラウスとアレクシスが証人となり、印章を押す。

「これで、帝国とわが国は当面の間、不可侵であることを誓いましょう」

 使節の代表が朗々と宣言し、周囲にいた兵士や文官たちが拍手のように手を合わせたり、感嘆の声を上げる。大戦の緊張感がまだ生々しい記憶として残るなか、これがどれほど画期的な合意なのか、皆が痛感しているのだ。

 その空気の中で、私は静かに目を閉じる。――帝国との壮絶な戦い、王家の裏切り、辺境伯アレクシスとの契約結婚。それらがすべて繋がった先に、この「新たな和平条約」が結ばれたのだと想うと、不思議な感慨が湧き上がる。

(私はまだ、正式に“王”として戴冠したわけではない。でも、こうして国を守り、導いている事実に変わりはない。それで十分なのかもしれない)

 やがて使節たちは帰国の準備を始め、国内に残る貴族や領主たちも、今後の方針を話し合うために王都に留まる者と領地へ帰る者に分かれていく。大広間が落ち着きを取り戻すと、私は開け放たれた扉の外に見える王都の街並みを眺める。
 気づけば、柔らかな日差しが石畳を照らし、風は軽やかな温もりを帯びている。長い冬が明け、季節はもう春を迎えつつあるのだろう。

 隣に立つアレクシスが、控えめに声を掛ける。

「これで一息つけると思うなよ。まだ課題は山積みだ。腐敗貴族をどう処遇するか、地方の独立意識を強めすぎれば逆に統制が利かなくなるリスクもある。講和を結んだとはいえ、帝国の後継者争いがどう転ぶかも分からない」
「分かってる。でも、こうしてまずは大戦の後始末をつけられたのは大きいわ。あとは、私たちがどれほど早く国を立て直せるかにかかっている」

 アレクシスは苦笑するように息を吐き、私の肩をほんの少し叩く。

「お前には見えているんだろう? どんなに険しい道でも進むしかない。それが“王”になるということだと、俺はそう思う。――俺は軍人でしかないが、お前が進むなら、その背は守る。今までも、これからも」

 力強い宣言に、私の胸はじんわりと熱くなる。血も涙も流し尽くすほどの戦いを共にくぐり抜け、今ようやく休息の兆しが見えかけたが、それでも道は続くのだ。

「ありがとう、アレクシス。あなたとなら、どんな障害だって乗り越えられる気がする。昔、契約結婚の相手として出会ったときは、まさかこんな未来が待っているなんて思わなかった」

 彼は目を伏せ、苦笑交じりに言葉を返す。
「俺だってそうだ。最初はお前をただの形だけの妻だと思っていた。……だが、今は誰より頼りになる相棒だと感じている」

 その言葉が嬉しくて、頬が少し熱くなる。かつて“鬼神”と恐れられ、冷酷だと言われていたアレクシスが、こうして私と同じ目線で歩んでくれるのは感慨深い。



 そして数日後。大広間ではない、もっと小さな謁見の間に私は通される。そこにはクラウスや文官、そして帝国使節の数名、さらに地方領主の代表が勢ぞろいしている。皆、少し落ち着かない様子で私を待っているらしい。

「リリア様、こちらです」

 案内する侍女に従って部屋に入ると、静まり返った空気のなか、一つの長机が置かれ、その上にシンプルな宝冠――王冠と呼ぶには質素な造りだが、私のために新調された冠が鎮座している。

 そう、今日は“国の新たな代表”を象徴する儀式の準備があるのだ。帝国使節が滞在するこのタイミングで、私が“暫定王”ではなく“正式な統治者”として認められることには大きな意味がある。国際的にも、内政的にも、“リリア・エヴァレット”という存在がこの国の頂点だと宣言するのだから。

 私はその宝冠を見つめ、静かに息を飲む。かつて王族が使っていた華美な王冠とはまったく異なる、武骨なほどシンプルな意匠だ。しかし、そこには私と同じく戦火をくぐり抜けた職人たちの思いが込められているという。金と銀が混ざり合い、縁には小さな宝石が散りばめられているが、必要以上に派手ではない。

 クラウスが一歩前へ出て、私に一枚の書状を差し出す。そこには、諸領主が連名で署名した“リリア・エヴァレットを国の統治者と認める”という誓約が記されている。

「こちらが、各地の主要な領主たち、そして貴族代表があなたを“王”として支持する旨の文書です。レオナール派の一部は除きましたが、実質的にこの国を動かす多数派が揃いました。……これがあれば、あなたが何者かと疑う声も大幅に減るでしょう」

 私はゆっくりと書状を受け取り、内容を確認する。確かにこれだけの署名が並べば、もはや“王の正統性”を否定する声は少数派となるだろう。もちろん、完全に反対を抑え込むわけではないが、国全体の大勢はここにいるというわけだ。

「ありがとう、クラウス。あなたの働きが大きかったのね」
「いえ、私だけでなく、各地を説得して回った兵や文官たちの功績です。何より、リリア様が“力をひけらかさない王”を目指したことが、民衆の支持を得た要因だと思います」

 そう言われると、やはり胸に込み上げるものがある。“王威の審判”の力で兵を圧倒し、敵将を膝つかせた私が、今はむしろ言葉や誠意によって国を率いている。――二つの顔を使い分けながら、ここまで来たのだ。
 帝国使節もまた、この場に同席し、神妙な面持ちで私を見つめている。もし私が正式に戴冠すれば、彼らとしても“リリア・エヴァレット”という一人の君主と不可侵条約を結ぶ形になる。これまで暫定的だったものが、一歩進んだ関係になるということだ。

 そして、最後に私が視線を向けるのはアレクシスだ。彼はいつもと変わらない無骨な軍服姿のまま、部屋の隅で腕を組んで見守っている。私が宝冠に手を伸ばすのを見て、わずかに視線をそらすようにして、しかし静かに微笑んでいるようにも見える。

 私は胸いっぱいに息を吸い、手のひらで宝冠をそっと持ち上げる。これを頭に戴くことは、私がこの国を全面的に背負う証だ。戦場の女王から“真の王”へ――それは新たな責任と試練を意味するけれど、もう決心はついている。

「――私は、リリア・エヴァレット。建国の女王の血を引く者として、そしてこの国を守り抜いた者として、今ここに宣言します。私が、エルヴェイン王国の統治者となり、国を導いていきます」

 自らの手で宝冠を頭に載せる瞬間、脳裏に様々な記憶がよぎる。貧しい屋敷で剣を握った幼い日々、契約結婚の道具として差し出された王城の大広間、辺境で“鬼神”と呼ばれた男との出会い、帝国軍との死闘、王家の裏切り……。思い返せば、あまりにも波乱に満ちた道のりだった。

 それでも今、私はこうして国の未来を選ぼうとしている。

 宝冠を戴くと、部屋の中に小さなどよめきが広がる。やがて拍手のような音があちらこちらで起こり、文官や兵士、そして領主たちが口々に「リリア陛下」と呼びかける。まるで、私という存在が国の中心に据えられた証を祝福するかのようだ。

 私は微笑みながら周囲を見渡す。まだ道半ばだ。帝国との条約、内政の改革、腐敗貴族への対処、民衆の生活向上――どれも一朝一夕に解決するものではない。それでも、この瞬間を経ることで、私がこの国を導く“覇王”として歩き出す礎は固まったと思う。

「皆さま、ありがとうございました。私は今この場を持って、この国をより良い方向へ導くことを約束します。どんな困難があろうとも、必ず――」

 そこで言葉を切り、視線を上げると、アレクシスがじっと私を見つめている。彼は口を開かないが、瞳にははっきりした意思が宿っているように見える。私もそれを受け止め、続きの言葉を紡ぐ。

「――必ず、私の責任と誇りを持って、この国を守り、成長させてみせます。どうか、皆さまの力を貸してください」

 すると、部屋に一斉に歓声が広がる。拍手や歓声が渦を巻き、帝国の使節も頭を下げ、地方領主たちも続いてこぞって敬礼を示す。つい先日までの混乱や反発を想像すれば、これは奇跡的な光景かもしれない。

 私はその熱気の中で、ゆっくりと瞳を閉じる。胸の奥で、王威の審判の力が穏やかに鼓動しているのを感じるが、もうこれ以上広間を金色の光で満たす必要はない。剣や魔法ではなく、人々の意思を背負うことで国を動かしていく――それこそが、今の私のあり方だからだ。

 戴冠式(といっても質素なものだが)が終わり、部屋を出るとアレクシスが近づいてくる。部下や文官たちは気を利かせてさっと距離を取り、私と彼だけの数歩分の空間が生まれる。


「王となった気分はどうだ?」

 彼の問いかけに、私は宝冠に触れながら苦笑を漏らす。

「まだピンとこないわ。頭が重いだけで、ずっと続く悩みも増えるばかりだと思うと、気が遠くなる」
「そりゃそうだ。戦場なら、敵を斬れば勝利だが、王の座はそうはいかない。もう“終わり”はない。ずっと責任を負い続けることになる」

 彼の言葉に、私は頷くしかない。まさにその通りだ。それでも、だからこそ私がやる意味があるのだと信じている。

「……アレクシス、これからも傍にいてくれる?」

 無意識にそんな言葉がこぼれ落ちる。以前の私なら、こんな弱気な問いかけはできなかった。けれど、もう彼の存在に頼らずにいられない自分がいるのも確かだ。
 彼は少しだけ驚いたように目を見開き、それから照れを隠すように顔をそらす。

「俺は最初からずっと、お前の『契約の夫』だ。今さら離れる理由がない。……それに、王が生きる世界で、俺は戦士としてしか生きられん。だから、これからもお前の剣として生きる」

 その答えがあまりにも素直で、私は思わず頬を緩める。

「それなら……ありがとう、心強いわ。あなたの剣に守られながら、私はこの国を動かしていく。いい形で住み分けができそうね」
「ああ。誰にも文句は言わせない。お前は俺の王で、俺はお前の剣。それで十分だ」

 そこに甘い言葉やロマンチックな愛の言葉があるわけではない。けれど、こうして契約結婚から始まった私たちが、今では強い絆を結び、国を背負うまでに至った――それだけで十分に意味がある。

 外に出ると、王都の街を見下ろす高いバルコニーから爽やかな風が吹き抜ける。空は青く澄み渡り、まるで新しい時代の幕開けを祝福しているかのようだ。下を見ると、兵士や民衆が私の戴冠を聞きつけ、少しずつ城下に集まっているのが分かる。興味半分、喜び半分、といったところだろうか。

「リリア様が本当に王になったって!」
「もう帝国は攻めてこないの? 平和になるの?」

 そんな声が遠くから風に乗って聞こえる。私は笑みを浮かべながら、彼らの期待に応えられる未来を作りたいと思う。きっと、この先も試練は絶えない。帝国との関係が再び悪化するかもしれないし、国内の腐敗を完全になくすことは難しいかもしれない。

 けれど、私は決して逃げない。あの大戦を乗り越え、内乱や暗殺を潜り抜けた自分を信じている。建国の女王リゼリアの生まれ変わり――それが事実かどうかは、もうあまり重要ではないのかもしれない。私は私の手で、国を守り、民を笑顔にする未来を作ると誓ったのだから。

「――さあ、ここからが本当の勝負ね」

 私は宝冠の重みを感じながら、バルコニーの縁に手を置いて街を眺める。兵士たちが手を振り、民の一部が歓声を上げるのが見える。まだ多くの人々は困惑しているかもしれないけれど、これから歩む道を“新たな王”として示していくのが私の務めだ。

 その背後で、アレクシスが黙って佇んでいる。彼の存在が私にとって最大の支えであり、共に戦場を駆け抜けた戦友でもあり――“夫”としての絆を結んだ相手でもある。

「リリア、そろそろ民衆の前に姿を見せてやれ。待ちくたびれてるぞ」
「ええ、行きましょう」

 私は踵を返し、城の正面へと続く階段を下りようとする。そこには私たちを待つ人々がいて、私は彼らに一言“王”としての挨拶を述べる予定だ。先の帝国との戦い、そして内政改革の話。難しいことは抜きにして、ただ「これから一緒にこの国を良くしていきましょう」と笑顔で伝えたい。

(戦場の女王、と呼ばれた日々は終わり。これからは“新しい時代の王”として、多くの笑顔を生み出すための戦いが始まるのだ)

 背筋を伸ばし、アレクシスと並んで歩き出す。鎧の音が控えめに響き、空には優しい光が降り注ぐ。私は今、国を変えるために必要な意志と力を得ている。あの“王威の審判”は最終手段として胸に秘め、日々の政治と誓いをもって世の中を動かしていこう。

 玉座に座るだけが王ではない。剣を振るだけが強さでもない。――私はその両方を学んだのだから、必ずや皆が安寧を得られる国へ導いてみせる。いつかこの国が、真に豊かで穏やかな場所になったとき、私が“覇王”ではなく、ただの平和な王として呼ばれる日が来るのを夢見ながら。


 ――こうして、辺境伯との契約結婚から始まった私の物語は、今まさに新たな段階に移ろうとしている。王族すら跪く威光を得た私が、力を示しながらも暴走させず、一人ひとりの声を大切に国を築くために歩んでいく。帝国も、貴族も、腐敗も、すべてを抱えつつ改革を進めるのは険しい道だ。けれど、私は誓う――もう二度と、王都や民を戦火に巻き込みはしない。

 ひんやりとした石段を踏みしめながら、私は微笑む。頭上には国の旗がゆらめき、遠くには城下の人々が私を待っている。ここが“最後の戦いの終わり”ではなく、“新しい国づくりの始まり”なのだ。剣を捨てはしないが、剣だけに頼ることもない。私の中で金色の光が穏やかに息づき、建国の女王の伝説が今の私を後押ししている。
 ――これから先も、きっと多くの困難が私を待つだろう。だが、私はアレクシスやクラウス、兵士や民衆たちと共に歩んでいく。そして、かつて家の借金を抱えただけの貧乏貴族の娘だった私が、この国を本当の意味で豊かにする日が来ると信じて疑わない。

 踏み出した先に柔らかな陽光が差し込み、私の宝冠を照らす。さらに先には、賑わう民たちのざわめきと、期待に満ちた声が待っている。
 私は剣の柄にそっと触れ、背後に立つアレクシスに小さく笑いかける。彼もうなずき返してくる。――こうして、新たな時代の幕は上がるのだ。

(今度は“剣と威光”だけではなく、“言葉と未来”を信じて歩き出そう。私が成し遂げるのは、戦場の勝利を超える大きな変革。その物語は、まだ始まったばかりだ)

 そう心の中で誓い、私は階段を下りて民衆のもとへ向かっていく。
 頬を撫でる風は爽やかで、まるで建国の女王が微笑んでいるかのように感じる。
 戦乱の渦中で見失いそうになったものを、私はようやく手に入れたのかもしれない。
 この国の未来は、今ここから変わり始めるのだ。私はそれを強く信じ、堂々と胸を張って歩みを進める。

 民と共に歩む“本当の王”となるために。

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