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夏祭り鑑賞会
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📘 三題噺のお題(第12弾)
夏祭りの屋台
朝焼けのバス停
空に浮かぶ手紙
―――――――――――――――――――
【本文】
少女はトラックと乗用車が正面衝突しているのを見つけた。トラックのほうが車線をはみ出しているから、おそらくトラックの運転手に非があるのだろうと思った。
トラックの運転手は気を失ってはいるが、大丈夫だろうと判断した。
乗用車には中年の男女が乗っていた。少女は夫婦だろうと思った。助手席の女性は、すでに事切れていた。運転席の男性もこのままでは危ないと思った。
少女はバッグからペンを取り出し、男性に近づけた。
その時、男性が目を開けた。少女を見ると頼み事をした。ほとんど聞き取れないような声だったが、少女には問題なかった。
少女は微笑むと、男性にうなずいて見せた。男性はそれを確認すると、息を引き取った。
少女は、車の中から飛行機のチケットとパスポートを取り出した。事故の衝撃で傷んでいたので、ペンで描き直す。それから空間にペンを走らせ、手紙とチケットとパスポートの入った封筒を描き出した。
少女は出来映えを見て微笑んだ。
赤澤凛は、時間になっても両親が来ないことを心配していた。電話はつながらず、メッセージも既読にならない。
待ち合わせて、一緒に空港に行く予定だった。
凛にとって、今夜がこの町で過ごす最後の夜だ。ちょうど神社の夏祭りをやっているから、良い思い出になると思っていた。だが、凛はすでに祭りどころではなかった。
凛は気休めに参拝でもしようかと思い、社に向かった。
その時、ふわりと封筒が降ってきた。凛は反射的に封筒を手に取った。結構しっかりした重さがあると思った。
「開けてごらんよ。あなた宛ての手紙だから」
後ろから声をかけられた凛は、驚いて振り返った。そこには、リンゴ飴を舐めている少女がいた。
凛は少女の外見に少し驚いた。歳は高校生くらい。腰まである長い髪にインナーカラーを入れている。右側が赤で、左側は水色。それをハイツインテールで結んでいる。服もネイルも個性的だ。凛は、オシャレではあると思った。
「私宛ての手紙って、どういうこと?」
凛は尋ねた。
「読めばわかるよ」
少女は笑顔で言う。
凛は封筒を開けた。便箋と飛行機のチケットと凛のパスポートが入っていた。飛行機のチケットもパスポートも両親が持っているはずなので、凛は困惑した。
少女を見たが、笑顔でリンゴ飴を舐めているだけで、何も言わない。
凛は便箋を読んだ。
それは、父親から凛に宛てたものだった。凛を残して逝くことへの謝罪。祖父母のところで元気に暮らして欲しいという願い。凛のことを愛している、ということがつづられていた。
凛は便箋から顔を上げ、少女を見ようとしたが、少女はいなかった。
夏祭りの喧騒が周囲を包んでいる。
凛はなぜか、手紙の内容は事実だと確信できた。
だから泣いたあと、一人で祖父母の家に向かうと決めた。
朝焼けに照らされるバス停のベンチに、少女は一人笑顔で座っていた。
あれから夏祭りを満喫し、インスピレーションを受けてタブレット、スマホ、ノートに作品を量産していた。
気がついたら太陽が昇り始めたので、帰ることにした。
少女は、自分の作品で涙する凛を鑑賞して満足していた。
「やっぱり、フィクションは現実を超えるね」
そうつぶやくと、少女は朝焼けに照らされる町からインスピレーションを得て、再び作品創りに取り組んだ。
―――――――――――――――――――
【感想】
「空に浮かぶ手紙」の扱いで悩んだ末、他の作品で書いた超常的なことができる少女に出演してもらいました。
一人称で書くことが多いので、三人称でストーリーを語るのに結構手間取りました。
短いけど、余韻や謎の残る終わりにできたと思うし、派手な少女のキャラを補完できたので満足しています。
夏祭りの屋台
朝焼けのバス停
空に浮かぶ手紙
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【本文】
少女はトラックと乗用車が正面衝突しているのを見つけた。トラックのほうが車線をはみ出しているから、おそらくトラックの運転手に非があるのだろうと思った。
トラックの運転手は気を失ってはいるが、大丈夫だろうと判断した。
乗用車には中年の男女が乗っていた。少女は夫婦だろうと思った。助手席の女性は、すでに事切れていた。運転席の男性もこのままでは危ないと思った。
少女はバッグからペンを取り出し、男性に近づけた。
その時、男性が目を開けた。少女を見ると頼み事をした。ほとんど聞き取れないような声だったが、少女には問題なかった。
少女は微笑むと、男性にうなずいて見せた。男性はそれを確認すると、息を引き取った。
少女は、車の中から飛行機のチケットとパスポートを取り出した。事故の衝撃で傷んでいたので、ペンで描き直す。それから空間にペンを走らせ、手紙とチケットとパスポートの入った封筒を描き出した。
少女は出来映えを見て微笑んだ。
赤澤凛は、時間になっても両親が来ないことを心配していた。電話はつながらず、メッセージも既読にならない。
待ち合わせて、一緒に空港に行く予定だった。
凛にとって、今夜がこの町で過ごす最後の夜だ。ちょうど神社の夏祭りをやっているから、良い思い出になると思っていた。だが、凛はすでに祭りどころではなかった。
凛は気休めに参拝でもしようかと思い、社に向かった。
その時、ふわりと封筒が降ってきた。凛は反射的に封筒を手に取った。結構しっかりした重さがあると思った。
「開けてごらんよ。あなた宛ての手紙だから」
後ろから声をかけられた凛は、驚いて振り返った。そこには、リンゴ飴を舐めている少女がいた。
凛は少女の外見に少し驚いた。歳は高校生くらい。腰まである長い髪にインナーカラーを入れている。右側が赤で、左側は水色。それをハイツインテールで結んでいる。服もネイルも個性的だ。凛は、オシャレではあると思った。
「私宛ての手紙って、どういうこと?」
凛は尋ねた。
「読めばわかるよ」
少女は笑顔で言う。
凛は封筒を開けた。便箋と飛行機のチケットと凛のパスポートが入っていた。飛行機のチケットもパスポートも両親が持っているはずなので、凛は困惑した。
少女を見たが、笑顔でリンゴ飴を舐めているだけで、何も言わない。
凛は便箋を読んだ。
それは、父親から凛に宛てたものだった。凛を残して逝くことへの謝罪。祖父母のところで元気に暮らして欲しいという願い。凛のことを愛している、ということがつづられていた。
凛は便箋から顔を上げ、少女を見ようとしたが、少女はいなかった。
夏祭りの喧騒が周囲を包んでいる。
凛はなぜか、手紙の内容は事実だと確信できた。
だから泣いたあと、一人で祖父母の家に向かうと決めた。
朝焼けに照らされるバス停のベンチに、少女は一人笑顔で座っていた。
あれから夏祭りを満喫し、インスピレーションを受けてタブレット、スマホ、ノートに作品を量産していた。
気がついたら太陽が昇り始めたので、帰ることにした。
少女は、自分の作品で涙する凛を鑑賞して満足していた。
「やっぱり、フィクションは現実を超えるね」
そうつぶやくと、少女は朝焼けに照らされる町からインスピレーションを得て、再び作品創りに取り組んだ。
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【感想】
「空に浮かぶ手紙」の扱いで悩んだ末、他の作品で書いた超常的なことができる少女に出演してもらいました。
一人称で書くことが多いので、三人称でストーリーを語るのに結構手間取りました。
短いけど、余韻や謎の残る終わりにできたと思うし、派手な少女のキャラを補完できたので満足しています。
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