バス停 | 三題噺Vol.7

冴月練

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バス停

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📘 三題噺のお題(第7弾)
閉じたノート
バス停の影
届かない声

🔍補足的なヒント(読み方に自由度を持たせています)
閉じたノート
 → 実際のノート、あるいは心の中にしまった記憶・夢・日記・罪など。

バス停の影
 → 物理的な場所、あるいは「誰かを待つ」という構図、「行きそびれた」過去の象徴にも。

届かない声
 → 文字通り声が届かない、LINE未読、亡くなった相手への思い、自己表現の挫折など。

―――――――――――――――――――

【本文】
 ぼんやり空を見ていた。それくらいしかすることがないから。
 7月の空は青く、どこまでも広かった。遮るものが無いから。

 暑い。私はバス停で友達を待っていた。バスは1時間に1本しか来ない。友達は余裕で間に合うだろう。
 ゴールデンウィークに、東京の親戚の家に遊びに行ったことを思い出す。バス停の時刻表を見て、私は我が目を疑った。10分と間を置かずにバスが来ていた。私は生まれて初めて、都会と地方の格差を実感した。

 視界の端に、使いこまれたノートが紐で縛られて置かれているのが目に入る。
 去年、この町を舞台にした映画が公開され、ヒットした。このバス停も映画に登場した。聖地巡礼でたくさんの人が訪れた。このノートはその人達に向けたもので、映画の感想とかが書かれている。
 私も友達も、最初は頻繁にこのノートを読んでいたが、最近は触ることもない。おそらくずっと閉じたままだ。

 映画は恋愛もので、幼馴染みの男女が成長して結ばれるという内容だった。ちょっときわどいシーンもあって、私はどきどきしながら観たのを覚えている。

 子供の声が聞こえた。男の子と女の子。このバス停はうちの高校専用みたいなもので、近くに民家は無い。
 私は確認することにした。調子に乗って遠出して、帰れなくなった子供かもしれない。
 声はバス停の裏から聞こえた。バス停の裏に回ったが、影になっていてよく見えない。

「誰かいるの?」
 私は声をかけた。すると、やはり男の子と女の子の声が聞こえた。笑っているようにも、泣いているようにも聞こえた。
「大丈夫? 出てきなよ。お姉ちゃんがうちまで送るから」
 二人は喜んでいるようだった。

 影から子供の手が出てきた。私はその手を握った。
 その手が私の手を握りかえす。子供の力ではなかった。
 私はバス停の裏に引きずり込まれた。

 何かが私の口の中に入ってきて、声を出せなくなった。指だ。子供の指じゃない。
 私の身体を何かがまさぐる。手だ。気持ち悪い。氷のように冷たく、ゴツゴツした手。男の人の手だと思った。
 その手が私の制服を、下着を剥ぎ取っていく。声を出そうにも、口に突っ込まれた指で声を出せない。

 その時、友達が私を呼ぶ声が聞こえた。
 必死に助けを求めようとするが、私の声は届かない。
 私は、バス停の裏のさらに奥へと引きずり込まれていった。

―――――――――――――――――――

【感想】
 「バス停の影」+「届かない声」で、ホラー路線に決定。
 お題を見てからストーリーにするまでが短い作品でした。
 ホラーへの移行が突然な気もしますが、短編ホラー小説をあまり知らないので、こんな感じなのかなと思っています。
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