5 / 63
第一章 家族で異世界へ
3話 再会
しおりを挟む
「圭一ッ! 私たちどうなるのッ!」
「うわあぁぁぁん!!」
「わんわんわん!!!」
車内は取り乱した未来の声、泣き叫ぶ碧、吠え続けるリーで混乱の極みにあった。
「逃げるしかないッ!!」
「逃げるってどこに!? いやあああ!!」
羽猿がドンという音とともにボンネットに取り付いた。醜悪な顔が牙をむき出しにする。
田崎はジムニーを蛇行させながら羽猿を振り落としたが、すぐに次の一匹が急降下してくる。
「きゃッ!!」
バコンッ! と助手席側から衝撃音が響いた。
「またか……」
あの雪の国道でぼろぼろになった愛車を思い出して身がすくむ。
羽猿が次から次へと急降下し突っ込んでくる。
ギャギャギャッと不快な鳴き声とともにボンネットに降り立ち、ルーフにしがみつき爪を立て歯をむき出しにする。
「上っ! 上から来てるよ!」
そのたびに未来と碧が悲鳴を上げた。
「つかまってろよッ!!」
田崎の心と体にあの十二年前の逃走劇が蘇る。
一気にアドレナリンが放出された。
——あの竜猿の追撃からも逃げ延びた!
すかさず高速四駆に入れ替えると、湿った草原にジムニーを走らせた。ジムニーのタイヤが草原に食いつき、舐めるように加速する。左右に振ると取り付いた羽猿が遠心力で落ちていく。さらにスピードを上げ、上空の羽猿の群れから距離を離していく。
「未来ッ!」
「な、なに?」
「理由ッ! ジムニーのッ!!」
「……はっ?」
「これがッ! ジムニーをッ!! 選んだ理由ッ!!!」
「知らないわよッ!! そんなのッ!!! きゃッ!!」
羽猿の群れはいっせいに上昇した。上空から旋回しジムニーを逃さないよう鋭い視線を向ける。
「どうするのよッ! これから?」
「小人の里が近いはずだ! 騒いでいたら結界を開けてくれるかもしれない」
田崎は、あてのない記憶を頼りにハンドルを切る。
そのとき、森の中から光がきらめいたのを視界の端に捉えた。
それは白い光の尾を引き羽猿に突き刺さった。
すかさず二本目の光が羽猿を撃ち落とす。
「……矢?! 誰かいる?」
田崎はジムニーを森に向けた。
——もしかしたら……リューシャ……?
田崎の胸に淡い期待が沸き起こった。
草原を走り回っていても上空から滑空してくる羽猿から逃げられない。
「いったん森の中に逃げ込む!」
倒木をギリギリかわし、斜面を登ると枯れた森の入り口が覗いた。
ヒュン! と再度、空気を切り裂く音とともに光の矢が放たれる。
森に入るとき、田崎は見た。
小柄な人影。銀髪の髪。尖った耳。緑色のチュニック。手に持つ弓……
「リューシャ……?! ……じゃない……」
思わず口に出た。視線がその姿を追う。
「圭一ッ!! 前! 前ええッ!!!」
「うわあ!!」
目前に大木が迫った。ブレーキペダルを床まで踏み込み、ハンドブレーキを引き上げた。同時にハンドルを思い切り左に切る。
「ズザザー!!」
タイヤが土と木の破片を巻き上げ、激しく半回転して横滑りしたジムニーは左後輪を浮かす。木に激突しそうな瞬間、ギリギリで停車した。右に傾いた車体はゆっくり横転しそうになったが、車体が木に当たって跳ね返りタイヤが着地する。
田崎はギアをニュートラルに入れると荒い息を吐いた。
「っぶな……」
車内には押し殺した息で疲れ切ったような妻と娘がいた。
エンジン音だけが響いていた。
「なん……なんなの? ここ……?」
未来が恐々と周りをうかがう。
「ヒック……ヒック……」
碧はリーにしがみついたまま固まっていたが、後ろを振り返ると涙声で言った。
「パパ……あの子……」
碧は、後部座席から戦う少年を見つめる。
「あの子、誰……?」
碧の声には怖さと不安と好奇心が入り混じっていた。
トンと音がたった。
ボンネットの上に小人の姿が見える。
田崎は目を擦った。
「チョ? ……チョーロー?!」
田崎が叫ぶのと同時に嫌な予感が脳裏をよぎるのを止められなかった。
小人がフロントガラスを叩いた。
田崎はパネルを操作し窓を開け手を出すと、すかさずチョーローが飛び乗った。
「ほっほっほ。誰かと思ったらおぬしか、タサキ」
ダッシュボードに移ると無邪気に笑う。
「久しぶりじゃのう……と、それどころではない!」
だが、その顔は一瞬で焦燥と後悔に満ちたものに変わった。
「小人……うそ……」
「……小人?」
未来が唖然とした顔でつぶやき、碧が疑いの目を向けた。
そしてチョーローが叫ぶ。
「ケイが——」
チョーローの声が一段と高まる。
「お前とリューシャの! 息子! ケイが! そこで戦っておる!!」
「は……?」
一瞬、頭が真っ白になった。
時が止まる。
息子……
俺とリューシャの?
「えっ……?」
未来が目を見開く。
「……ケイ?」
田崎はボソッとつぶやき振り返った。
少年は長剣を抜いていた。迫り来る羽猿に斬撃を与えている。
羽猿は上空からかわるがわる鋭い鉤爪を閃かし少年に襲いかかっていた。
サイドミラーに血が跳ねたのが映った。どちらのかは分からない。
防戦一方なのはミラー越しでも分かった。
「マジか……!」
はっと我にかえると田崎はギアをバックに入れ勢いよく後退した。
ドスン! と木にバックドアが激突した。
「きゃッ!」
「くそっ……」
車を切り替えすと正面に長剣を振りかざし戦う少年の姿があった。羽猿の爪が少年の背中を切り裂く。前からきた羽猿が少年に爪を突き立てた。
「ケーイ!!」
田崎は叫んだ。ギアをニュートラルに入れアクセルを踏む。
ブオンブオンヴオオオ……!!!
エンジンを盛大に吹かした。その音にケイと羽猿が振り向く。
即座に低速四駆に入れるとジムニーが急発進する。チョーローが座布団にしがみついた。
「きゃあああ!!」
そのまま飛ぶようにジムニーを走らせると、ケイの後ろにいた羽猿を弾き飛ばす。
そのまま少年の前方に回り込んだ。驚いた羽猿が一斉に飛び立った。
同時に田崎は運転席のドアを開け放つ。
残っていた羽猿が一匹背後から迫っていた。
「ケイッ!! 乗れ!!」
田崎は手を伸ばした。目の前に血と泥で汚れた少年の姿があった。
『ケイッ!! *****!!!』
チョーローも叫んだ。
「早くッ!」
少年は剣を素早く背中に収めると、意を決したように田崎の手を掴んだ。羽猿の鉤爪が少年に届くよりも早く田崎が引き上げる。
意外なほど軽く、少年の体は引き寄せられた。そのまま助手席に押し込む。
「未来ッ!! 頼む! 怪我してる!!」
車内に血の臭いが漂った。
ドアを閉めると同時にアクセルを踏み飛び出す。
バゴン! 羽猿が運転席ドアに激突した音が響いた。
少年の足が田崎の顔を蹴った。
「チョーロー!! どっちだッ!!」
チョーローの杖が右斜め前方を指す。
「そっちかッ!! 未来! 早く助手席に!!」
未来が少年の体を抱き上げ引き寄せた。同時にギアを高速四駆に入れ替える。
ジムニーは森を抜けて斜面を駆け下り草原に飛びだした。
ギャギャギャッ!!その背後に羽猿の群れが飛び上がる。
未来の腕の中で、少年が苦しげに顔を上げた。
銀髪に輝く長い髪。尖った耳。血と泥にまみれているが整った目鼻立ち。
そのくっきりとした碧色の瞳が未来を捉えた。
瞳の色、大きさはまるで違ったが——
「……圭一と同じ目の形」
揺れる車内でその言葉は雑音に遮られ、誰の耳にも届かなかった。
田崎の隣で未来の乱れた息遣いだけが漏れ伝わってきた。
「圭一の……子……?」
小声でつぶやく。
「ッ! ひどい傷……!」
はっと思考を振り切るように、未来は叫んだ。
「碧! タオルと救急箱! 早く!」
右肩から肩甲骨にかけて服が裂け、出血が続いていた。
『……リューシャ***……』
揺れる車内で少年が苦しげに呻いた。
「チョーロー!! 小人の里はどっちだッ!!」
「もうそこじゃ」
チョーローは杖を指し続けながら、歌うように詠唱を始めた。
ジムニーは草原を杖の指す方向に向かって跳ねるように走る。
背後から羽猿が迫っている。
「ママ! これで良い?」
未来は碧からタオルを受け取ると少年の服を剥ぐように脱がせる。
「我慢して!」
『ウッ……』
「十五センチの裂傷……」
揺れる車内で傷口を抑えつけるようにタオルを当てた。
みるみる血が滲んでいく。
そのとき、草原の空に亀裂が走った。
灰色がかった草原に、キラキラとした里山の光景が輝いた。
その光景に碧が息を飲み、未来が目を見開いた。
ジムニーはその亀裂に飛び込む。
背後で空間が歪み、結界が閉じる。
羽猿の羽音と鳴き声が止まった。
静寂がジムニーを包み込む。
田崎はブレーキをゆっくりと踏んだ。
ジムニーが停車するとシートにもたれて目をつむる。
呼吸が荒い。
心臓の激しい鼓動はしばらく治まりそうになかった。
——また、何かに巻き込まれた……
それは確信に近い予感だった。
これから始まる最悪で、そして長い家族旅行の、これが最初の夜だった。
「うわあぁぁぁん!!」
「わんわんわん!!!」
車内は取り乱した未来の声、泣き叫ぶ碧、吠え続けるリーで混乱の極みにあった。
「逃げるしかないッ!!」
「逃げるってどこに!? いやあああ!!」
羽猿がドンという音とともにボンネットに取り付いた。醜悪な顔が牙をむき出しにする。
田崎はジムニーを蛇行させながら羽猿を振り落としたが、すぐに次の一匹が急降下してくる。
「きゃッ!!」
バコンッ! と助手席側から衝撃音が響いた。
「またか……」
あの雪の国道でぼろぼろになった愛車を思い出して身がすくむ。
羽猿が次から次へと急降下し突っ込んでくる。
ギャギャギャッと不快な鳴き声とともにボンネットに降り立ち、ルーフにしがみつき爪を立て歯をむき出しにする。
「上っ! 上から来てるよ!」
そのたびに未来と碧が悲鳴を上げた。
「つかまってろよッ!!」
田崎の心と体にあの十二年前の逃走劇が蘇る。
一気にアドレナリンが放出された。
——あの竜猿の追撃からも逃げ延びた!
すかさず高速四駆に入れ替えると、湿った草原にジムニーを走らせた。ジムニーのタイヤが草原に食いつき、舐めるように加速する。左右に振ると取り付いた羽猿が遠心力で落ちていく。さらにスピードを上げ、上空の羽猿の群れから距離を離していく。
「未来ッ!」
「な、なに?」
「理由ッ! ジムニーのッ!!」
「……はっ?」
「これがッ! ジムニーをッ!! 選んだ理由ッ!!!」
「知らないわよッ!! そんなのッ!!! きゃッ!!」
羽猿の群れはいっせいに上昇した。上空から旋回しジムニーを逃さないよう鋭い視線を向ける。
「どうするのよッ! これから?」
「小人の里が近いはずだ! 騒いでいたら結界を開けてくれるかもしれない」
田崎は、あてのない記憶を頼りにハンドルを切る。
そのとき、森の中から光がきらめいたのを視界の端に捉えた。
それは白い光の尾を引き羽猿に突き刺さった。
すかさず二本目の光が羽猿を撃ち落とす。
「……矢?! 誰かいる?」
田崎はジムニーを森に向けた。
——もしかしたら……リューシャ……?
田崎の胸に淡い期待が沸き起こった。
草原を走り回っていても上空から滑空してくる羽猿から逃げられない。
「いったん森の中に逃げ込む!」
倒木をギリギリかわし、斜面を登ると枯れた森の入り口が覗いた。
ヒュン! と再度、空気を切り裂く音とともに光の矢が放たれる。
森に入るとき、田崎は見た。
小柄な人影。銀髪の髪。尖った耳。緑色のチュニック。手に持つ弓……
「リューシャ……?! ……じゃない……」
思わず口に出た。視線がその姿を追う。
「圭一ッ!! 前! 前ええッ!!!」
「うわあ!!」
目前に大木が迫った。ブレーキペダルを床まで踏み込み、ハンドブレーキを引き上げた。同時にハンドルを思い切り左に切る。
「ズザザー!!」
タイヤが土と木の破片を巻き上げ、激しく半回転して横滑りしたジムニーは左後輪を浮かす。木に激突しそうな瞬間、ギリギリで停車した。右に傾いた車体はゆっくり横転しそうになったが、車体が木に当たって跳ね返りタイヤが着地する。
田崎はギアをニュートラルに入れると荒い息を吐いた。
「っぶな……」
車内には押し殺した息で疲れ切ったような妻と娘がいた。
エンジン音だけが響いていた。
「なん……なんなの? ここ……?」
未来が恐々と周りをうかがう。
「ヒック……ヒック……」
碧はリーにしがみついたまま固まっていたが、後ろを振り返ると涙声で言った。
「パパ……あの子……」
碧は、後部座席から戦う少年を見つめる。
「あの子、誰……?」
碧の声には怖さと不安と好奇心が入り混じっていた。
トンと音がたった。
ボンネットの上に小人の姿が見える。
田崎は目を擦った。
「チョ? ……チョーロー?!」
田崎が叫ぶのと同時に嫌な予感が脳裏をよぎるのを止められなかった。
小人がフロントガラスを叩いた。
田崎はパネルを操作し窓を開け手を出すと、すかさずチョーローが飛び乗った。
「ほっほっほ。誰かと思ったらおぬしか、タサキ」
ダッシュボードに移ると無邪気に笑う。
「久しぶりじゃのう……と、それどころではない!」
だが、その顔は一瞬で焦燥と後悔に満ちたものに変わった。
「小人……うそ……」
「……小人?」
未来が唖然とした顔でつぶやき、碧が疑いの目を向けた。
そしてチョーローが叫ぶ。
「ケイが——」
チョーローの声が一段と高まる。
「お前とリューシャの! 息子! ケイが! そこで戦っておる!!」
「は……?」
一瞬、頭が真っ白になった。
時が止まる。
息子……
俺とリューシャの?
「えっ……?」
未来が目を見開く。
「……ケイ?」
田崎はボソッとつぶやき振り返った。
少年は長剣を抜いていた。迫り来る羽猿に斬撃を与えている。
羽猿は上空からかわるがわる鋭い鉤爪を閃かし少年に襲いかかっていた。
サイドミラーに血が跳ねたのが映った。どちらのかは分からない。
防戦一方なのはミラー越しでも分かった。
「マジか……!」
はっと我にかえると田崎はギアをバックに入れ勢いよく後退した。
ドスン! と木にバックドアが激突した。
「きゃッ!」
「くそっ……」
車を切り替えすと正面に長剣を振りかざし戦う少年の姿があった。羽猿の爪が少年の背中を切り裂く。前からきた羽猿が少年に爪を突き立てた。
「ケーイ!!」
田崎は叫んだ。ギアをニュートラルに入れアクセルを踏む。
ブオンブオンヴオオオ……!!!
エンジンを盛大に吹かした。その音にケイと羽猿が振り向く。
即座に低速四駆に入れるとジムニーが急発進する。チョーローが座布団にしがみついた。
「きゃあああ!!」
そのまま飛ぶようにジムニーを走らせると、ケイの後ろにいた羽猿を弾き飛ばす。
そのまま少年の前方に回り込んだ。驚いた羽猿が一斉に飛び立った。
同時に田崎は運転席のドアを開け放つ。
残っていた羽猿が一匹背後から迫っていた。
「ケイッ!! 乗れ!!」
田崎は手を伸ばした。目の前に血と泥で汚れた少年の姿があった。
『ケイッ!! *****!!!』
チョーローも叫んだ。
「早くッ!」
少年は剣を素早く背中に収めると、意を決したように田崎の手を掴んだ。羽猿の鉤爪が少年に届くよりも早く田崎が引き上げる。
意外なほど軽く、少年の体は引き寄せられた。そのまま助手席に押し込む。
「未来ッ!! 頼む! 怪我してる!!」
車内に血の臭いが漂った。
ドアを閉めると同時にアクセルを踏み飛び出す。
バゴン! 羽猿が運転席ドアに激突した音が響いた。
少年の足が田崎の顔を蹴った。
「チョーロー!! どっちだッ!!」
チョーローの杖が右斜め前方を指す。
「そっちかッ!! 未来! 早く助手席に!!」
未来が少年の体を抱き上げ引き寄せた。同時にギアを高速四駆に入れ替える。
ジムニーは森を抜けて斜面を駆け下り草原に飛びだした。
ギャギャギャッ!!その背後に羽猿の群れが飛び上がる。
未来の腕の中で、少年が苦しげに顔を上げた。
銀髪に輝く長い髪。尖った耳。血と泥にまみれているが整った目鼻立ち。
そのくっきりとした碧色の瞳が未来を捉えた。
瞳の色、大きさはまるで違ったが——
「……圭一と同じ目の形」
揺れる車内でその言葉は雑音に遮られ、誰の耳にも届かなかった。
田崎の隣で未来の乱れた息遣いだけが漏れ伝わってきた。
「圭一の……子……?」
小声でつぶやく。
「ッ! ひどい傷……!」
はっと思考を振り切るように、未来は叫んだ。
「碧! タオルと救急箱! 早く!」
右肩から肩甲骨にかけて服が裂け、出血が続いていた。
『……リューシャ***……』
揺れる車内で少年が苦しげに呻いた。
「チョーロー!! 小人の里はどっちだッ!!」
「もうそこじゃ」
チョーローは杖を指し続けながら、歌うように詠唱を始めた。
ジムニーは草原を杖の指す方向に向かって跳ねるように走る。
背後から羽猿が迫っている。
「ママ! これで良い?」
未来は碧からタオルを受け取ると少年の服を剥ぐように脱がせる。
「我慢して!」
『ウッ……』
「十五センチの裂傷……」
揺れる車内で傷口を抑えつけるようにタオルを当てた。
みるみる血が滲んでいく。
そのとき、草原の空に亀裂が走った。
灰色がかった草原に、キラキラとした里山の光景が輝いた。
その光景に碧が息を飲み、未来が目を見開いた。
ジムニーはその亀裂に飛び込む。
背後で空間が歪み、結界が閉じる。
羽猿の羽音と鳴き声が止まった。
静寂がジムニーを包み込む。
田崎はブレーキをゆっくりと踏んだ。
ジムニーが停車するとシートにもたれて目をつむる。
呼吸が荒い。
心臓の激しい鼓動はしばらく治まりそうになかった。
——また、何かに巻き込まれた……
それは確信に近い予感だった。
これから始まる最悪で、そして長い家族旅行の、これが最初の夜だった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話
タキ マサト
ファンタジー
実は普通の女子高生なのに、
古代日本そっくりな異世界で、神様として崇められています。
神様なんて、やってられない!!
夏休みが終わるまでに、四つの勾玉を集めて家に帰る!
——でも、神様じゃないとバレたら即、処刑……?
これは、三人の少女が神を利用して家に帰るまでの物語である。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる