軽四駆 × 異世界疾風録   season2 〜今度は家族全員で異世界へ! ランエボ乗りの妻がジムニーで無双する件〜

タキ マサト

文字の大きさ
4 / 63
第一章 家族で異世界へ

( 二 )

しおりを挟む
 一方その少し前、森の中では……

 チョーローが気づいたとき、そこは闇の森だった。
 傍らでうずくまっていたケイが頭を振って起き上がる。

『やれやれ、まだ里の近くで助かったというか……』

——あの膨大な影の量……禍々しい光
 そしてケイの左手背に乗り移った紋様の意味……
 チョーローは嫌な予感に表情を曇らせた。

『チョーロー? ここは……』
『わしとしたことが、転移場所を定めることができなかったわい……』
 嘆息したチョーローだったが何ものかの意思が介在しているような感覚があった。

 ケイが周りを見渡した、そのとき——

チリン……

 鈴の音が響いた。

 ケイとチョーローの耳がそのかすかな音を捉える。

『使い手じゃ……』
 その声にケイは緊張が走った。

ドクン……

 それと同時にケイの左手が再び疼いた。
 左手の手背に刻まれた紋様が光り出す。

『これは? カケラの紋様……』
 漏れ出す光を抑えるように右手で紋様を押さえた。
 しかし、光は指の間から漏れ出る。
『これは何? チョーロー……?』

『その詮索はあとじゃ……』
 チョーローが、空を見上げる。

 羽ばたきの音とともに嘲るような鳴き声を出して、上空に複数の羽猿が舞っていた。

『こんなにたくさんの羽猿……』
 ケイは疼く左手を気にしながら腰の小弓に手を伸ばし、右手は矢筒の蓋を開ける。
 チョーローが矢筒に手をかざし、低く詠唱を始めた。

 そのとき、上空を舞う羽猿の一匹目がケイの姿を捉える。
 鉤爪を剥き出して急降下したとき、

 弓弦がヒュンと鳴った。

 放たれた矢は開いた羽猿の口に命中し、頭を突き抜けた。
 どすんと落ちた羽猿はすでに絶命しているが、それを確認することなく二の矢を放つ。

 さらに降下する羽猿の胸に矢が突き立つ。

『影の力を打ち消す光の加護じゃ……』
 チョーローの光の加護を受けた矢は、次々と羽猿を落としていく。
 母親から手ほどきを受けた早撃ちの技だった。

 弓弦の音が響くたび、羽猿は撃ち抜かれる。
 気づけば十匹に及ぶ羽猿を撃ち落としていた。

『わしらを狙ってきておる……その紋様の光じゃな……』
 羽猿は次から次へと森の奥から湧き出すように飛来してきていた。枯れた木に止まり獲物を窺うように二つの影を狙っている。

 鋭い鳴き声の一声とともに、一気に複数の羽猿が急降下してきた。ケイは弓を腰に戻すと長剣を抜き払う。その長剣にチョーローの光の加護が宿る。
 頭上からケイに襲いかかる一匹を横っ飛びで避けながら、剣を振るうと付け根から片足が切断される。背後から狙う一匹を振り向きざまに突き刺す。左右から同時に来る羽猿を一息に薙ぎ払う。
 白く輝く剣の残像が閃くたびに羽猿の体から血が舞った。
 まるでダンスを踊るように軽やかに剣を振り回す。翼を絶たれ地面に這いつくばるもの、腹を抉られ臓物を撒き散らしながらもがくもの、首を刎ねられ地に落ちる羽猿が積み重なっていく。
 チョーローの光を一太刀でも浴びた羽猿は、洗脳が解かれたかのように恐怖に駆られ、散り散りに逃げ出していく。
 しかし数の差は次第にケイの体力を奪っていく。
 ケイの顔に焦燥と疲労の色が見え始めた。

『”使い手”に……見張られていたか……』
 チョーローがつぶやいた時、

ちりん……

 また鈴が鳴った。
『光が……』
 ケイの手の甲の紋様の光が消えた。

 翼の音が一瞬止む。

 次の瞬間、羽猿が一斉に飛び立った。
 そしてしばらくして、エンジンの爆音が森に轟いた。
 
『まさか……鉄の……車……』
 チョーローの表情が険しくなった。

『ケイ! 異界人が来ておる!』
 ケイはその言葉を聞くとすぐに走り出していた。

『標的が変わった?……何故じゃ?』

 ケイは剣を鞘に戻すと走りながら弓に矢をつがえた。

——ぼくたちのせいで……
 異界のものを巻き込んでしまった……

 ケイは唇を噛み締めた。
 森を抜けると視界が開ける。

 そこには羽猿に襲われて走り回る鉄の車の姿があった。

——母さんが言ってた、鉄の車……?

 小屋にある動かない鉄の車とは、形が違う。
 そして、母から聞いたその鉄の車の名は覚えていた。

——もしかして? あれが、ジムニー……?

 ケイは、狙いをつけながらも胸が高鳴るのを抑えられなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

神様やめたい ! 
〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話

タキ マサト
ファンタジー
実は普通の女子高生なのに、 古代日本そっくりな異世界で、神様として崇められています。 神様なんて、やってられない!! 夏休みが終わるまでに、四つの勾玉を集めて家に帰る! ——でも、神様じゃないとバレたら即、処刑……? これは、三人の少女が神を利用して家に帰るまでの物語である。

処理中です...