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第四章 暴走
29話 余波
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闇の森、入り口の草原。
グラン本隊三百騎弱が作戦の準備をしているときだった。結界に亀裂が入り、そして外部からの強烈な力で、さらに引き裂かれていった。
『使い手に居場所がバレた!』
ナヴィが叫んだ。ナヴィは斥候からの狼煙を、結界越しに確認していた。
グラン本隊はすでに臨戦体制に入っている。
『鉄騎軍が騎馬中心に攻めてきてる! その数、およそ千騎!』
『くそ! 伏兵は出来んか……』
グラン隊副長が引き裂かれた結界を見てつぶやいた。
『やむを得ん…… 結界を解除。作戦は二段階目からだ! 囮部隊は森の入り口で罠を張れ! 本隊は森の中で結界を張り側面待機!』
グラン本隊が結界を解除した瞬間、腐臭のような悪臭が漂った。風に乗って鉄騎軍の蹄の音と叫び声が届く。それは憎悪と怒りに満ちた声だった。
それぞれの部隊長が手勢を引き連れ、手はず通りに森の中に散っていく。副長も部隊を率い、森の木々の中に紛れていく。
そのとき——
竜猿の咆哮と衝撃波が部隊を襲った。悪臭が一瞬で流された。
パラパラと小石や小枝がグラン本隊に降り注いだ。
『竜猿……? 影の気配は感じないのに……』
ナヴィが首を傾げたとき、鉄騎軍の怒号が響いた。悪臭が再び強くなってくる。馬蹄と突撃のかけ声が草原に轟いた。
『副長! 縄を張りました!』
『囮部隊は、展開完了!』
『本隊は結界の中へ!』
『ここで食い止めるぞ!』
たった三百騎でおよそ後続を含めて三千騎の敵を足止めする。悪臭壺を直接受けた部隊はしばらくは嘔吐と腹痛で動けないはず。それでも、騎馬を中心に再編成し追撃してきていた。
『ここで蹴散らかされたら、イリナ様の元まで一直線だ』
森の小径は騎馬二列がやっと通れる幅、そこに幾重にも縄を張り巡らし馬の機動力を奪う。森の中は木々が密集し追撃速度は鈍る。森の中に誘導し乱戦に持ち込み、撤退しつつ敵を蹴散らしていく。それが作戦の概要だった。
『時間を稼げ! 弓、用意!』
囮部隊が隊列を組み弓に矢をつがえる。やがて馬蹄が轟き、馬が縄に足を取られていく。
人馬もろとも転倒し絶叫が森に響いた。馬がいななき、後続の騎馬に踏み潰される悲鳴が続く。鉄騎軍は倒れた仲間を飛び越えさらに突撃し、さらに縄に足を取られた。
そこに後続が衝突し落馬していく。そして囮部隊の矢の雨が降り注いだ。
敵の人馬の死体でバリケードを作り足止めをする作戦はうまくいくかに思われた。それでも仲間の死体を踏みつけ、怒号を上げて迫り来る鉄騎軍と囮部隊がついに激突した。
剣戟の音と馬のいななき、怒号が轟く。勢いのままに押し寄せる鉄騎軍に囮部隊は次々と倒れていく。その報告をナヴィから受けた副長の顔が強張った。
『ナヴィ、早く結界を解け! 側面を突く!!』
副長が剣を掲げたとき、ナヴィが叫んだ。
『副長! オムカから、連絡が!!』
ナヴィの顔には余裕が消えていた。
『スタンピードが! こっちにも来る!!』
ナヴィの声が裏返った。
『なんだと!?』
副長が凍りつく。
森が、揺れ始めていた。
木々が、大地が不穏に軋む。
『ナヴィ! どっちから来る?』
『北からだよ!』
『囮部隊を全力で南西に逃げさせよ!! 森から離れさせろ!!』
副長の絶叫を背に伝令が駆けていく。
鉄騎軍の猛追の中、果たして逃げ切れるのか?
——法王猊下のためにも一兵たりとも失いたくない。しかし、結界の中にいても、いつ使い手に破られないとも限らない……
そうなったら、猿に踏み潰されて終わる。
副長は決断した。
『結界を解け! 敵を蹴散らしてから逃げるぞ!』
地響きは、刻一刻と近づいていた。
*
その頃、街道上のヴォルノ隊。
峡谷の高台で土煙を上げる鉄騎軍の部隊が見えたとき、ヴォルノは覚悟を決めた。
一分一秒でも長く生き延びて、一人でも多くの敵を倒す。
峡谷の狭隘部に、ホーガイから提供された二台の馬車の荷台で簡単な柵を作っていた。
高台には峡谷を塞ぐような岩はなかった。
『岩落としは出来ない……』
工作する時間もなかった。
『弓の準備!』
荷台の影に百五十騎、崖上に百五十騎が矢を弓につがえた。矢も残り少ない。馬のいななき、馬蹄が響いてくる。
『およそ千騎! その後ろに本隊も!』
ここを突破されたら、封印も錫杖も敵の手に落ちる。
『死んでも通さん!!』
絶望的な戦いだった。
そのとき、かすかに竜猿の咆哮が轟いた。
それが戦いの号砲だった。
『射えぇ!!』
峡谷に入ってきた鉄騎軍に高台から矢を放つ、荷台の後ろの部隊もそれを合図に次々と矢を放った。峡谷に入ってきた先頭の騎士たちが次々と落馬する。
鉄騎軍は数で押してきた。一人が倒れても、二人が代わりに現れる。
『荷台を越えさせるな!』
荷台を境に両軍が槍を繰り出し激突した。そこに高台から矢を放ち続け、荷台の境に死体の山が積み重なっていく。
『退くな!! 一歩も退くな!』
荷台の影から騎士たちが必死に叫ぶ。しかし、死体の山は荷台を越え始めていた。
鉄騎軍が荷台を乗り越えようとする。
『突撃いいいッ!!』
矢を射ち尽くしたヴォルノ率いる百五十騎が高台から槍を揃えて駆け降りる。迎え撃つ鉄騎軍と激突した。死兵と化したヴォルノ隊は敵を次々と切り捨てていくが、次から次へと来る鉄騎軍の前に次第に押されていった。
『聖戒の光は常に我らにあり!!』
ヴォルノの馬が倒され地面に叩きつけられたとき、峡谷の入り口に新たな砂煙が上がるのが見えた。
——敵、本隊か? ……早すぎる
ヴォルノは覚悟を決め、震える足を踏ん張り剣を杖にし立ち上がった。どこからか出血しているが、痛みは感じない。馬蹄の地響きが峡谷を揺らし、砂塵が舞う。
だが、剣を構えたとき、その砂埃から聞こえてきたのは、懐かしい声の響きだった。
『死に急ぐな!! 若造どもッ!!』
忘れるはずもない、あの人のものだった。
『グ、グリファス団長……!?』
ヴォルノは目を見開いた。眼前に現れたのは、聖戒国南部守備隊の旗を掲げた大軍だった。
『法王猊下の仇打ちじゃ! 老骨に鞭打って駆けつけたぞ!!』
先頭をかける老騎士グリファスが、豪快に剣を振り上げた。
『者共! ヴォルノを死なすな! 鉄騎軍を押し返せぇぇ!!』
絶望が、歓喜へと変わった瞬間だった。
*
ジムニーは森の小径を爆走していた。運転は未来に代わった。スタンピードの影響で道は猿によってならされていた。ジムニーの爆音が轟くと、猿たちは次々と森の中に姿を消していく。後ろからグラン隊が追走するが、あっという間にバックミラーから姿を消した。
「ちょっと、未来、早すぎる!」
田崎が激しく揺れる後部座席で足を前席に押し付けて意識を失ったイリナを支えていた。シートベルトは根本からハンクに引き裂かれて使えない。クーラーボックスの上でリーが踏ん張り、バランスを取っていた。
助手席にはリューシャが弓を手にして、厳しい目で進行方向を睨んでいた。
スタンピードを回避したあと座席を変更した。
ジムニーを先に巌窟寺院方面に向かわせることにしたのだ。
巌窟寺院の近くに、協定を結んだ闇の民が待機しているというチョーローからの連絡が入ったのだ。闇の民は、碧とケイを一旦は使い手の元から助けたという情報も入っていた。ひとまず闇の民と合流するという方針が取られ、未来がハンドルを握った。
断続的に響く竜猿の咆哮に、一行は身をすくませた。
「その闇の民? って味方なのね?」
未来の声には抑揚がない。昨夜のことを考えないようにしているのが、田崎にも分かった。
「味方かどうかは分からないけど、使い手の敵であることは確かだね」
モーイが座布団にしがみつきながら答えた。
「オムカが鉄の車は楽だって言っていたけど、話が違うじゃないか……」
「何?! なんか文句ある?!」
モーイの不用意な一言は未来の逆鱗に触れた。
昨夜からの苛立ちが声に一気に溢れ出た。
「……それで、碧たちは無事なのね?」
一つ深呼吸して、未来が確認する。
「竜猿が復活したときに碧とケイは逃げたみたいだけど、ケイの影はまだ動いてるって。碧の光も確認済みってチョーローが」
「じゃあ、早くその闇の民とやらと合流しましょう!」
未来はさらにスピードを上げた。
ジムニーはさらに闇の森の奥に入っていく。スピードが出たジムニーのエンジンには今のところ異常は見られていない。
森は、異様に静まり返っていた。竜猿の咆哮は止まっていた。
「スタンピードの影響にしては…… なんか、変だ……」
モーイがつぶやいた。
「確かに、静かすぎるわね……」
まるで、森がまだ何かに怯えて息を潜ませているようだった。
「もしかして……」
モーイの声が震えた。
「竜猿が…… この先にいるのかも」
竜猿に気を取られていた一行は、誰も気が付かなかった。
ジムニーの頭上に一匹の蛇のような黒い影が、後をつけるように迫ってきていた。
グラン本隊三百騎弱が作戦の準備をしているときだった。結界に亀裂が入り、そして外部からの強烈な力で、さらに引き裂かれていった。
『使い手に居場所がバレた!』
ナヴィが叫んだ。ナヴィは斥候からの狼煙を、結界越しに確認していた。
グラン本隊はすでに臨戦体制に入っている。
『鉄騎軍が騎馬中心に攻めてきてる! その数、およそ千騎!』
『くそ! 伏兵は出来んか……』
グラン隊副長が引き裂かれた結界を見てつぶやいた。
『やむを得ん…… 結界を解除。作戦は二段階目からだ! 囮部隊は森の入り口で罠を張れ! 本隊は森の中で結界を張り側面待機!』
グラン本隊が結界を解除した瞬間、腐臭のような悪臭が漂った。風に乗って鉄騎軍の蹄の音と叫び声が届く。それは憎悪と怒りに満ちた声だった。
それぞれの部隊長が手勢を引き連れ、手はず通りに森の中に散っていく。副長も部隊を率い、森の木々の中に紛れていく。
そのとき——
竜猿の咆哮と衝撃波が部隊を襲った。悪臭が一瞬で流された。
パラパラと小石や小枝がグラン本隊に降り注いだ。
『竜猿……? 影の気配は感じないのに……』
ナヴィが首を傾げたとき、鉄騎軍の怒号が響いた。悪臭が再び強くなってくる。馬蹄と突撃のかけ声が草原に轟いた。
『副長! 縄を張りました!』
『囮部隊は、展開完了!』
『本隊は結界の中へ!』
『ここで食い止めるぞ!』
たった三百騎でおよそ後続を含めて三千騎の敵を足止めする。悪臭壺を直接受けた部隊はしばらくは嘔吐と腹痛で動けないはず。それでも、騎馬を中心に再編成し追撃してきていた。
『ここで蹴散らかされたら、イリナ様の元まで一直線だ』
森の小径は騎馬二列がやっと通れる幅、そこに幾重にも縄を張り巡らし馬の機動力を奪う。森の中は木々が密集し追撃速度は鈍る。森の中に誘導し乱戦に持ち込み、撤退しつつ敵を蹴散らしていく。それが作戦の概要だった。
『時間を稼げ! 弓、用意!』
囮部隊が隊列を組み弓に矢をつがえる。やがて馬蹄が轟き、馬が縄に足を取られていく。
人馬もろとも転倒し絶叫が森に響いた。馬がいななき、後続の騎馬に踏み潰される悲鳴が続く。鉄騎軍は倒れた仲間を飛び越えさらに突撃し、さらに縄に足を取られた。
そこに後続が衝突し落馬していく。そして囮部隊の矢の雨が降り注いだ。
敵の人馬の死体でバリケードを作り足止めをする作戦はうまくいくかに思われた。それでも仲間の死体を踏みつけ、怒号を上げて迫り来る鉄騎軍と囮部隊がついに激突した。
剣戟の音と馬のいななき、怒号が轟く。勢いのままに押し寄せる鉄騎軍に囮部隊は次々と倒れていく。その報告をナヴィから受けた副長の顔が強張った。
『ナヴィ、早く結界を解け! 側面を突く!!』
副長が剣を掲げたとき、ナヴィが叫んだ。
『副長! オムカから、連絡が!!』
ナヴィの顔には余裕が消えていた。
『スタンピードが! こっちにも来る!!』
ナヴィの声が裏返った。
『なんだと!?』
副長が凍りつく。
森が、揺れ始めていた。
木々が、大地が不穏に軋む。
『ナヴィ! どっちから来る?』
『北からだよ!』
『囮部隊を全力で南西に逃げさせよ!! 森から離れさせろ!!』
副長の絶叫を背に伝令が駆けていく。
鉄騎軍の猛追の中、果たして逃げ切れるのか?
——法王猊下のためにも一兵たりとも失いたくない。しかし、結界の中にいても、いつ使い手に破られないとも限らない……
そうなったら、猿に踏み潰されて終わる。
副長は決断した。
『結界を解け! 敵を蹴散らしてから逃げるぞ!』
地響きは、刻一刻と近づいていた。
*
その頃、街道上のヴォルノ隊。
峡谷の高台で土煙を上げる鉄騎軍の部隊が見えたとき、ヴォルノは覚悟を決めた。
一分一秒でも長く生き延びて、一人でも多くの敵を倒す。
峡谷の狭隘部に、ホーガイから提供された二台の馬車の荷台で簡単な柵を作っていた。
高台には峡谷を塞ぐような岩はなかった。
『岩落としは出来ない……』
工作する時間もなかった。
『弓の準備!』
荷台の影に百五十騎、崖上に百五十騎が矢を弓につがえた。矢も残り少ない。馬のいななき、馬蹄が響いてくる。
『およそ千騎! その後ろに本隊も!』
ここを突破されたら、封印も錫杖も敵の手に落ちる。
『死んでも通さん!!』
絶望的な戦いだった。
そのとき、かすかに竜猿の咆哮が轟いた。
それが戦いの号砲だった。
『射えぇ!!』
峡谷に入ってきた鉄騎軍に高台から矢を放つ、荷台の後ろの部隊もそれを合図に次々と矢を放った。峡谷に入ってきた先頭の騎士たちが次々と落馬する。
鉄騎軍は数で押してきた。一人が倒れても、二人が代わりに現れる。
『荷台を越えさせるな!』
荷台を境に両軍が槍を繰り出し激突した。そこに高台から矢を放ち続け、荷台の境に死体の山が積み重なっていく。
『退くな!! 一歩も退くな!』
荷台の影から騎士たちが必死に叫ぶ。しかし、死体の山は荷台を越え始めていた。
鉄騎軍が荷台を乗り越えようとする。
『突撃いいいッ!!』
矢を射ち尽くしたヴォルノ率いる百五十騎が高台から槍を揃えて駆け降りる。迎え撃つ鉄騎軍と激突した。死兵と化したヴォルノ隊は敵を次々と切り捨てていくが、次から次へと来る鉄騎軍の前に次第に押されていった。
『聖戒の光は常に我らにあり!!』
ヴォルノの馬が倒され地面に叩きつけられたとき、峡谷の入り口に新たな砂煙が上がるのが見えた。
——敵、本隊か? ……早すぎる
ヴォルノは覚悟を決め、震える足を踏ん張り剣を杖にし立ち上がった。どこからか出血しているが、痛みは感じない。馬蹄の地響きが峡谷を揺らし、砂塵が舞う。
だが、剣を構えたとき、その砂埃から聞こえてきたのは、懐かしい声の響きだった。
『死に急ぐな!! 若造どもッ!!』
忘れるはずもない、あの人のものだった。
『グ、グリファス団長……!?』
ヴォルノは目を見開いた。眼前に現れたのは、聖戒国南部守備隊の旗を掲げた大軍だった。
『法王猊下の仇打ちじゃ! 老骨に鞭打って駆けつけたぞ!!』
先頭をかける老騎士グリファスが、豪快に剣を振り上げた。
『者共! ヴォルノを死なすな! 鉄騎軍を押し返せぇぇ!!』
絶望が、歓喜へと変わった瞬間だった。
*
ジムニーは森の小径を爆走していた。運転は未来に代わった。スタンピードの影響で道は猿によってならされていた。ジムニーの爆音が轟くと、猿たちは次々と森の中に姿を消していく。後ろからグラン隊が追走するが、あっという間にバックミラーから姿を消した。
「ちょっと、未来、早すぎる!」
田崎が激しく揺れる後部座席で足を前席に押し付けて意識を失ったイリナを支えていた。シートベルトは根本からハンクに引き裂かれて使えない。クーラーボックスの上でリーが踏ん張り、バランスを取っていた。
助手席にはリューシャが弓を手にして、厳しい目で進行方向を睨んでいた。
スタンピードを回避したあと座席を変更した。
ジムニーを先に巌窟寺院方面に向かわせることにしたのだ。
巌窟寺院の近くに、協定を結んだ闇の民が待機しているというチョーローからの連絡が入ったのだ。闇の民は、碧とケイを一旦は使い手の元から助けたという情報も入っていた。ひとまず闇の民と合流するという方針が取られ、未来がハンドルを握った。
断続的に響く竜猿の咆哮に、一行は身をすくませた。
「その闇の民? って味方なのね?」
未来の声には抑揚がない。昨夜のことを考えないようにしているのが、田崎にも分かった。
「味方かどうかは分からないけど、使い手の敵であることは確かだね」
モーイが座布団にしがみつきながら答えた。
「オムカが鉄の車は楽だって言っていたけど、話が違うじゃないか……」
「何?! なんか文句ある?!」
モーイの不用意な一言は未来の逆鱗に触れた。
昨夜からの苛立ちが声に一気に溢れ出た。
「……それで、碧たちは無事なのね?」
一つ深呼吸して、未来が確認する。
「竜猿が復活したときに碧とケイは逃げたみたいだけど、ケイの影はまだ動いてるって。碧の光も確認済みってチョーローが」
「じゃあ、早くその闇の民とやらと合流しましょう!」
未来はさらにスピードを上げた。
ジムニーはさらに闇の森の奥に入っていく。スピードが出たジムニーのエンジンには今のところ異常は見られていない。
森は、異様に静まり返っていた。竜猿の咆哮は止まっていた。
「スタンピードの影響にしては…… なんか、変だ……」
モーイがつぶやいた。
「確かに、静かすぎるわね……」
まるで、森がまだ何かに怯えて息を潜ませているようだった。
「もしかして……」
モーイの声が震えた。
「竜猿が…… この先にいるのかも」
竜猿に気を取られていた一行は、誰も気が付かなかった。
ジムニーの頭上に一匹の蛇のような黒い影が、後をつけるように迫ってきていた。
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