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第一章
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「ところでリリィ。その巾着はなんだ? 陛下と謁見するのに持って出ることは出来ないぞ」
お父様が、私が脇に置いている巾着に目を向けました。お兄様もお義姉様も、そしてこの控えの間で聞き耳を立てている貴族の皆さんも、気になっていたようです。
「これは『証拠』ですわ。皆さんにも見て頂きたくて」
「─── 焼き増ししたのか?」
「焼き増ししたのとそうじゃないのもございますわ」
「そういえば、アレをウーレイは見ていなかったな」
「ええ。その前に出られたので」
そうなのです。ウーレイ男爵は途中退場していたのです。だから娘の淫らな写真を見ずに済みました。─── その代わり、その他多数の方々が見ています。ここでもお見せすることになります。それもお相手は、王太子殿下お一人だけではありません。
「そういえば、お兄様もお義姉様も、謁見されますの?」
「もちろん。我が家のことだからな」
「私もご一緒しますわ。義妹を蔑ろにされたんですもの。すぐにでも挙兵して、サンジェルス国を叩き潰したいわ」
「お義姉様。私の親友など、無実の方には手を出さないで下さいね」
「もちろんよ。狙うは王太子とウーレイ男爵令嬢の首!」
「それと男爵令嬢のお相手の方々もお願いしますわ。全員が婚約者持ちなのに不貞を働きましたの」
「まあ! 婚約者の令嬢を泣かせるなんて! 女の敵は裁判無しで去勢して労働奴隷よ!」
「イリア。新しい鉱山でも開けるつもりかな?」
「いいえ。愛しい旦那様。サンジェルスの周りに岩山なんかあるから、考え方も生き方も閉鎖的なんですもの。彼らにはその岩山を完全に崩して平地にして頂きます。もちろん、北の山脈は国境ですから残すことは許しますわ」
「そうだな。サンジェルスは滅び、我が国の領土となる。そうなれば、国内に『岩の要塞』はいらなくなるな」
「そうでしょう? それでお義父様。サンジェルスを手に入れたら、お義父様に進呈致しますわ。それを私からの持参金と致します。お受け取り頂けますか?」
「それはあまりにも……」
「あら? それでしたら、リリィ。貴女への『我が国からの慰謝料』でどうでしょう?」
「え? 私の、ですか?」
急に私の名前が出てきました。
「そうよ。いくらお義父様とお義母様がご結婚したお祝いとの理由で、それまでサンジェルスと良好関係だったアーシュレイ領をサンジェルス属領にしたことで『こんな騒ぎ』になったんだもの。本当、おじい様ったら迷惑なことをしてくれたわよね。生きていたら、真っ先にリリィの前に引き摺り出して土下座させているわ!」
「イリアは王墓を襲って、先代国王の棺桶を暴いて遺骸を引き摺り出そうとしたんだよ」
お義姉様……。先代国王陛下が亡くなられたのは五年前。さすがにご遺骨になられていらっしゃいますよ。
いえ。そんな問題ではないですね。
「お義姉様。そうなったら、サンジェルス国王一族はどうなりますか?」
「そうねぇ。元国王一族は、無抵抗で国を明け渡したなら一貴族として生存を認めてあげるわ。でも王太子たちはダメよ。許さないわ」
「─── 私も許せないな」
そうそう。ここは『王城の控えの間』と申しましたが、私たちを侮辱して追い出したサンジェルス国ではなく隣国 ─── 今回の一件で敵対国へと立ち位置が変わりました ─── にあたる、モーリトス国です。おじい様とおばあ様の結婚に反対した結果、モーリトスの従属国や領地が大量に増えました。そのため、モーリトス国はこの世界で一番の大国となりました。それでも『大国』と名乗らないのは、「我がモーリトス王家ではなく、アシュラン家の成果だから」だそうです。
特異的な地形のため貧困国だったサンジェルス国に対し、隣接していたアーシュレイ領は関税を引き下げて通行税を免除して流通させてきました。ですが、今回の一件ですべてを正規の値段に戻しました。その上での国交封鎖です。関税その他に追加して『国交のない国への通行料』が掛かります。
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