13 / 20
第一章
痛い目に遭わないとわからない
しおりを挟む作戦行動は案外簡単に決まった。
戦闘時に押されているギルドを周りがフォローするというものだ。
「足、引っ張んじゃねえぞ」
「それはこっちのセリフだ」
こんな状態で、早々に歩み寄りは無理だと判断されたことが一番の原因だ。
そして、部屋が公平に分けられた。
と言っても、私だけ特殊な部屋……じゃなかった。
「アイリスさんはこの部屋ね」
そう言って城内の地図の一ヶ所を指さされた。
そこは図書館を併設した……逆か。
図書館に個室がつけられた場所だ。
離れ? 離宮というのか?
みんなはそんなところで共同生活をするらしい。
中は個室になっていて、離宮ごとにキッチンもあるそうだ。
そんな中に一ヶ所花壇に囲まれたこじんまりとした建物があり、そこが私の場所だという。
たぶん広いと思われる庭を挟んで一番近いのが、ギルド『平和旅団』の離宮だ。
離宮といっても孤立して立っているわけではない。
城の廊下にある扉を開くとそこには少し横幅が狭いけど同じ廊下があり、その廊下の先に離宮の扉があるというものだ。
城の廊下が4メートルで、離宮の廊下が3メートル。
扉がついているのは、城で働くメイドが間違って入り込まないため。
離宮に住んでいたのは国王の側妃や王子・王女たち。
そこに迷い込んだら重い罰を受けるらしい。
「家具は残ってるから好きに使えばいい」
みんなの部屋が決まるとキュリオはそう言った。
三人はこの城で働いていたから詳しいそうだ。
「逃げ出した王たちはどうした? 頃合いをみて戻ってくるんじゃないの?」
「たぶん死んだよ。この城の周り、城壁の外は危険なんだ。この城壁に浄化の魔法石が設置されているんだ。だからここから離れて……そうだな、1キロまではいかないけど800メートルくらいまでは効果があると思う。その先に『黒い霧』があり、そこから先に人族の住む町や村が点在する」
「その『浄化されるもの』とは何だ?」
「────── よくわからない。黒い霧に影響されて変異したもの、とかいうけど。僕たちはそれが何か、何が真実なのかも知らないんだ」
シャーベットが左右に首を振る。
状況が状況なら庇護欲を掻き立てられるだろう。
この集団召喚の元凶の一人である以上、そうならないが。
「じゃあさ。私らは何と戦うのよ」
「それは、私たちが魔物と呼んでいるもの」
「ゲームみたいなボス?」
「いや、ボスはダンジョンにいる」
「えー! ダンジョンがあるのー!」
「うん、そのダンジョンで数は少ないけど魔法球がでるんだ」
「ちょっと面白そうだよね」
永遠と撫子の二人がキャアキャアとはしゃいで会話を脱線させていく。
正直なところ「いい加減にしろ!」と誰もが思っている。
二人のリアルで男友達だという&龍とレベッカは、もう二人とは関わり合いたくないのか。
彼女たちを放置して離れた場所にいる。
そんな二人に絡まれているのはキュリオだ。
何故か私が敵視されているが……
どうやらキュリオたちと私の関係が『馴れ馴れしい』そうだ。
キュリオをぶん殴ったことも、正論を吐かれたことも、洗脳できなかったことも。
すべてが原因で、私に刃向かえないだけなんだ、とは教えない。
勘違いして空回りしている状態は、周囲から孤立していることを自覚していない。
「永遠と撫子、うるさい。黙れ」
「なによ! 馬鹿ロミンの分際で」
「黙れないならここから出てけ」
静の嫌悪を含むロミンと違い、動の怒りを含んだレベッカの言葉に振り向いた撫子は周囲が自身に向ける白い目に動きが止まる。
同様に永遠も嫌悪感を隠しもしないで見つめる視線に恐怖を感じたのか身をすくめる。
「キュリオ、話を続けて。魔物とは?」
「あ、はい」
私が話を促すと、ホッとした表情をみせたキュリオが絡んでいた毒花二人から離れて説明を始める。
「魔物は黒い霧に取り込まれた生き物だと思う。そしてこの黒い霧を通ってたまに魔物が城壁の近くに現れる。それを倒してもらうのが当分の仕事だ」
「ちょっと、ダンジョンはー?」
「すぐ行けるわけないだろ」
「ちぇー」
危機感がなさすぎだ。
誰もがそう思っただろう。
それは表情にでていたが、決して口に出さなかった。
「痛い目に遭わないとわからない」
あとでそう思っていたと&龍が告白した。
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)
葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。
だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。
突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。
これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる