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第二章

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 ちゅんちゅんと小鳥のさえずりが聞こえる。
 爽やかな朝であるが、泣き腫らしたせいで、朝日が目にしみて憂鬱である。

 専属メイドのリリーが昨晩、今朝と目を冷やしてくれたが、腫れが残ってしまった。

 とうとう今日の午後から閨授業かぁと思いながら、ベッドを出る。

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 昨日は、あの後、目を覚ますと、身体が綺麗に清められて、ネグリジェを身にまとっていた。
 とにかく喉がガラガラで、サイドテーブルに置かれた水を飲み干し、そのままベッドで用意してくれた晩ごはんを食べた。

 妙にスッキリした身体に、胃が痛くなりそうだったが、そろそろ認めなくてはならない。
 私は快感に弱い体質なのしれない…と……。

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 リリーに身支度をしてもらい、食堂へ向かう。
 席に着くと、ララお兄様が後からやって来た。その後ろには、今1番会いたくなかった執事のノアが控えてた。
 ノアは何食わぬ顔をしているのに、私はつい反射的に顔を赤らめてしまう。

「メリア、おはよう」
「……ララお兄様、おはようございます」

 お兄様は、全て分かっているように、くつくつと笑いながら席に着く。

「今日もお父様とお母様は部屋に籠ってるみたいだよ。最近の朝食は、いつも2人だね」
「こ、困ったものですね…」

 ニヤリと意地悪そうな顔をして、ララが口を開く。

「メリアも昨日は楽しんだようだね」
「え、えぇ。……魔法の勉強もして楽しかったです」

 ――絶対昨日の報告を聞いてるんだわ……!
 お兄様に報告したであろう犯人ノアを涙目で睨む。

 するとタイミング良く、朝食が運ばれる。
 フレッシュバジルを練りこんだワッフルに、半熟の目玉焼きとブラータチーズ生モッツァレラ、トマトとアスパラとオニオンのオーブン焼きが添えてある。飲み物は珍しく紅茶ではなく珈琲だった。

 美味しそうな食事に、頭を空にして、食べ始める。
 ブラータチーズをナイフで割ると、とろんと中の生クリームが溢れてくる。それをワッフルに絡めて食べると、口の中が幸せだ。

 前世でも大好きだった、ブラータチーズを堪能していると、お兄様から爆弾を投下される。

「そうだ! ノアのことを気に入ったようだし、専属執事のいないメリアに付いてもらおうかなと思っていたんだよ」
「……!?」

 驚いた猫のような反応をするメリア。昨日のような事がノアは相変わらず澄ました顔をしている。事前に聞いていたようだ。

「わっ、私は、専属メイドのリリーにケイトもいるから充分だわ……!」

 専属執事は優先して閨授業の担当になることが多いので、恥ずかしくなって反射的に断ってしまう。

「ぷ、くくっ。ノア、お前いらないってよ」

 ララは侯爵家の令息とは思えぬほどゲラゲラ笑っている。
 ノアに至っては執事らしく笑みを浮かべるが、ブルークォーツの瞳の奥には、苛立ちの色を覗かせ、咳払いしてララを咎める。

 カオスな状況に、2人が仲良しそうで何よりだと、メリアは思う事にして、心を落ち着かせるため珈琲を味わう。

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 食堂から出た後は、屋敷の庭園を散歩する事にした。丁寧に手入れをされている美しい景色にうっとりする。
 以前庭師にお願いして植えてもらった、スイートピーと、かすみ草が、丁度見頃で可愛らしく咲きほこっていた。


 ――結局ノアは、私の専属執事になった。
 銀髪碧眼のイケメンをはべらかすなんて、とても贅沢だわ! と、無理やりプラス思考に考えようとする。

 そうしないと、昨日の甘美なファーストキスや、えっちなおねだりをしてしまったことを思い出して、頭をどこかに打ち付けそうになるからだ。


 ノアの仕事は、いわゆる秘書的なことや、宝石や貴重品の管理、給仕など行ってくれるらしい。
 業務内容を聞いて、確かに専属執事は必要だったかもなと、自分の感情しか考えが及ばなかった事を反省する。

 今までメリアは、必要事項やスケジュールなどを、メイド長のエミリーや専属メイドから聞いてた。
 それに宝石の管理は、万が一の強盗に備えて、執事と騎士が行う事になっている。
 これまでは、空いている執事に頼んでいたので、ノアが専属執事になることで、他の使用人の負担が減るだろう。

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 部屋に戻ると、閨授業に備えて、念の為シャワーを浴びる事にした。

 娼館から男女1名ずつ講師の方に来ていただいて、体位の授業をするといっていたから、肌を触れられるようなことはない思うが。念の為、念の為だ。
 ……特に、何かを期待してる訳では無いからねっ!

 体と頭を念入りに洗い、蜂蜜と砂糖とキャリアオイルで手作りしたシュガースクラブで、全身を優しくマッサージして流す。
 その後、ジャスミンの香りがふんわりするクリームを、お風呂に上がる前に塗る。

 バスローブを羽織ると、専属メイドのリリーがやって来て、髪を魔法で乾かし、湯冷めしないよう保温魔法を身体にかける。

「メリアお嬢様、昼食はいかがなさいますか?」
「部屋でこのまま軽めに食べたいわ。この後、リリーのタイミングで持ってきて貰えるかしら」
「それでは今から厨房へ行ってまいりますね」

 リリーが戻るまでストレッチをしていると、すぐ戻ってきた。

 自室にある白いラウンドテーブルに、パンチェッタがゴロゴロ入った野菜スープと、マッシュパンを添えた軽食が置かれる。

 椅子に座ると、スープの湯気がたっていて、良い香りだ。
 余りお腹が空いてなかったが、どんどん食欲がわいて、スプーンを口に運ぶ。

 食事中もリリーが控えていたので、思い切って気になったことを、聞いてみる。

「ねえ、リリーの時は、閨授業はどうだった?」
「そうですね…。実家は規模が小さい男爵家ですので、娼館からは講師は呼ばれませんでした。なので、使用人としょっちゅう実践形式でエッチをして、“考えるんじゃない!身体で感じて覚えろ!”という感じで教わりましたねぇ。
 その日の目標の性感帯を刺激されて、達するまで解放されなくて……数日ぶっ通しで乱交した思い出もありますわ」

 顎に手をあて、光悦とした表情で答えるリリー。
 そして、ピンクの瞳に欲を宿し、モジモジしながら口を開く。

「あの……もしよろしければ、また個人的に夜這いしてもいいですか? 実家で教わった事をぜひ御奉仕したく……!」
「な……! こ、にはダメよ!」

 美少女趣味のリリーは、メリアに断られて口を尖らした。

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 食事を終えると、じゃれてお触りをしようとするリリーを、かわしながら着替えをする。

 だが、おかしい。着替えのドレスが用意されていないのだ。
 今着せられているのは、見たこともないベビードール……。

「……リリー? 私はなんでこんなにきわどいベビードールを着させられてるのかしら?」
「閨授業の際に着るよう、講師の方から用意されたものでございますわ」

 用意されていたのは、3つのランジェリーだった。

 1つ目は、深いVネックのキャミソール型ベビードール。ギリギリお尻が隠れるくらいの丈。エプロンのように、後ろをリボンで結んで脱ぎ着するタイプだ。生地はレースで作られており、胸の頂だけギリギリ隠れるデザインになっている。

 2つ目は紐パンツ。ショーツと名乗るなら、もう少し布面積を広くするべき、と小一時間くらい問い詰めたくなるほどお尻が丸見えだ。
 3つ目はガーターベルト付きのストッキング。上部はレースで縁取られている。

 全てブラックで統一されているが、セクシーな中にも可愛らしさがある仕立てだ。


 講師からの指定ならばしょうがないと、着替えてそのままソファに腰をかけるが、布の少なさも相まって、ドキドキが止まらない。

 ショーツを濡らしてしまったら、直ぐにバレてしまうわと、ソワソワしながら、講師の到着を待った。


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