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第二章
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しおりを挟む折角お父様がお祝いしてくれていたのに、数分前まで美味しく頂いていた食事も残して、早歩きで食堂を後にする。
突然顔を真っ青にした私を、お父様もお兄様も心配してくれたが、兎に角なにも言えず、自室に戻って来てしまった。
前世の私は、“公開プレイを強要するなんて信じられない”と憤慨してるし、今世の私は……。
力尽きてベッドに横たわると、涙がぽろぽろ溢れてきた。
今世の私は、僅かに公開プレイを望んでいるのだ。
――やっぱり私はこのハレンチな世界の住民なのね。
自分が処女喪失しているところを、色々な人に見られると想像すると、少しだけお腹の奥が熱くなる。それが何よりショックだった。
.
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次の日も、何もやる気がしなくて、引きこもった。
専属メイドのリリーとケイトが、度々、扉をノックして、様子を伺いに来てくれたが、泣いていて返事が出来なかった。
こんな時でもお腹はすくが、食べる気は起きず、頭の中はぐちゃぐちゃのままだ。毛布を頭までかぶり、枕を濡らす。
どんどん淫らになっている身体が憎たらしい。ある意味では、閨の勉強が上手く進んでいるということだけれど……。
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いつの間にかそのまま寝てしまったが、ノックの音と声で起きる。
「メリアお嬢様、入りますよ」
入室を許可していないというのに、扉を勝手に開けて、専属執事のノアがやってきた。
布団を顔まで被っているメリアに諭すよう話しかける。
「いい加減部屋から…せめて、ベッドから出たらどうなんですか?」
「……いやよ」
「出てこないなら襲いますよ」
「貴方下半身が役ただずって噂されてるけど大丈夫かしら」
「…」
ノアは、軽くため息をつくと、突然布団を思い切りまくる。
「きゃあっ」
ビックリして、軽い悲鳴が出る。
そして、メリアの顔の横に両手をつき、組み敷く。
「初潮パーティーがそんなに嫌なら、私が今、処女を奪って台無しにしまいましょうか」
「っ!」
そういうと、甘い甘い、蕩けそうなほど、優しいキスをされる。ふわふわとした、暖かい人肌に、気持ちも落ち着いてくる。
ノアになら処女を奪われてもいいかもしれないな、とぼんやり考えていると、部屋の外から足音が聞こえ、ノックの音が聞こえる。
……ノアはベットから降りて、舌打ちをしていたが、聞こえなかったことにした。
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「メリア? お母様よ。入ってもいいかしら」
「お母様!? どうぞお入りください」
扉が開くと、お母様のマリア・ノックスが、使用人をつけず、1人で現れた。ノアがお辞儀をして、ベットの横に椅子を用意する。
お母様は、椅子に座ると、私と同じ薄紫の瞳に、涙をためて、私を抱きしめる。
「あぁ、メリア。会いたかったわ。中々お父様が解放してくれなくて部屋から出れなかったのよ…」
「お母様。私も会いたかったです」
「メリアが好きなアップルパイと紅茶を持ってきたの。あちらで頂きましょう?」
お母様は、涙ながらも、慈しむような上品な笑みを浮かべてカゴを持ち上げる。
.
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お母様は、部屋にある白いラウンドテーブルに、カゴを置くと、中から、お皿を出し、リンゴがバラのように飾られたアップルパイを運ぶ。
次に、リトルローズ柄のティーセットを取り出す。魔法で零れていないようにしているみたいなので、ポットの中身も無事だ。
慣れたようにお母様が、紅茶を高い位置から注ぐと、良い香りが漂ってくる。
「さぁ、メリア。椅子に座ってちょうだい」
お母様が先に座り、その後に私も座る。すると甘い紅茶の香りが漂ってきた。
「お母様、これは、アッサムティーですか?」
「えぇ。私はアッサムとアップルティーのマリアージュ組み合わせが大好きなの!」
フォークとナイフを渡されると、食べてみてとジェスチャーされる。
一口サイズに切って口へ頬張ると、パイ生地のバターの香りがふんわり口の中に広がる。
そして、次に甘みと酸味がくる。バラを模様したリンゴが上に飾られているだけではなく、その中にまでとろとろの甘いリンゴのフィリングがたっぷり入っている。シナモンが丁度良くリンゴの味を消さずに、風味を格上げしている。
その後に紅茶を飲む。アッサムのはっきりとしたコクが、アップルパイにあって至福だ……。
「お母様! アップルパイのバラの見た目も美しいですが、それだけではなくて、とっても美味しいです~!」
思わず笑顔で熱弁すると、お母様は嬉しそうな顔で喜んだ。
お母様も、私も、夢中で口に運び、ペロッと食べ終わる。
アッサムティーを飲み、アップルパイの最後の一口を堪能していると、お母様から話しかけられた。
「メリア、初潮のパーティーの事だけれどね」
「はい。お母様。」
「人前で処女はじめてを散らしたくないのなら、無理してやらなくてもいいわ。メリアの気持ちが1番大切よ。ただね、非処女になる過程を皆さんにお披露目する理由は、大人になったメリアを見届けるためなの」
そんな馬鹿な…! と思いつつも、そこに卑猥な理由はないようで、少し拍子抜けする。
「もしメリアが恥ずかしいなら、少しでも肌を見せないように、レースのアイマスクで目元を隠しても良いし、ボディストッキングも用意出来るわよ。
それに前もって非処女になって、当日血液がついたシーツを額縁に入れて、パーティー会場に飾ることもできるわ」
「お母様、色々考えてくださってありがとうございます。少し考えさせて貰えますか…?」
その後、他愛のない話を少ししてから、お母様は戻っていった。
.
.
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お母様が戻ったあと、再びノアと2人になった。
私は、考えていた事を聞いてもらいたくて、ノアの近くによって、ぎゅっと抱きしめる。
そして、ノアを見上げて、懇願するよう目線を合わせる。
「ノア、もし初潮のパーティーで、初めての相手をしてとお願いしたら、叶えてくれるかしら…?」
「勿論です。メリアお嬢様」
ノアは私の前で跪き、手の甲にキスを落とす。
私はノアの答えを聞いて、安心し、決意を固める。
――皆の前で、処女を散らすと。
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