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第三章
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しおりを挟む胡蝶蘭の部屋に戻って、私はひとまずお風呂に入った。
専属メイドのリリーとケイトが心配してくれて、身体を清めてもらった。
お風呂から出ると、外がなんだか騒がしい。
ケイトに身支度を手伝ってもらい、リリーに様子を見にきてもらうことにした。
小花柄の室内用のドレスを身に纏い、いつも通りノアからもらったネックレスをつける。すっかり肌に馴染んだネックレス。ずっとつけているよう言付けがあったら、お風呂以外は、寝る時も一緒だ。
「これが私を助けてくれたのよね」
ネックレスを傷つけないよう優しく両手で抱きしめる。
ノアがいなかったら、避妊魔法せずに、襲われるところだった。
助けてくれたみんなには感謝しかない。
髪を乾かしてもらって、ベットに腰掛けると、ドタバタと足音が聞こえてくる。リリーに様子を見にいってもらったけど、誰かいらしたのかな?
ノックもなしに扉が開けられる。思わず身を固くすると、泣きそうな顔をした、ララお兄様がそこに居た。
「メリア! 心配した」
「えっ!! お兄様?? わぁっ!?」
勢いよく抱きしめられる。ララお兄様は、汗ばんでいて急いで来られたことがわかった。
「どこを触られたんだ?」
「いえ、触られる前にノアのネックレスが……」
ララお兄様、とっても怒っている……?
私の全身見たところで、手首に気がついてしまった。
「なんだこの跡は!」
「ひゃぁ! そ、それは縄で縛られて……」
「クソ。メリアは僕とノアのなのに。赤の他人が傷つけやがって。全員殺す殺す殺す殺す殺す」
「お、お兄様!? こ、怖いですよ!?」
.
.
.
ララお兄様が少し落ち着かれると、ようやく状況を教えてくれた。
どうやら、情報が入ってから、すぐ早馬でララお兄様自ら超特急でいらしてくれたようで……。
そして、今縄で縛られたところを、魔法薬で治してもらってから、ずっと消毒してくれる。
「ララお兄様? 消毒などされなくてももう大丈夫ですよ?」
「いや、まだ男の魔力の気配が……」
「まさか。もう消えています」
「でも……」
「ラ ラ お 兄 様 ?」
「わ、わかった……」
ちょっと困った顔をしたら、バッと手を離してくれた。よかったよかった。
ケイトが入れてくれたジャスミンティーを飲んで、一息つく。
「それにしても、今回はなにが目的で、私が狙われてしまったのでしょう。あの男は、私と両想いだと仰っていました。妄言だと良いのですが、それとも……」
「メリア、それは私から説明するね」
「ソフィー!」
リリーがソフィーを部屋へ通してくれたようだ。
まずララお兄様を紹介して、寝室だと、ゆったり出来ないだろうから、応接室へ場所を移動をした。
.
.
.
「エリザ・トワイライト伯爵令嬢が、ご自身の罪を認められました」
「えっ」
あのオリオン皇太子殿下の恋人の……?
「やっぱり。メリアは、皇太子妃争いに巻き込まれたってことだね」
「メリア、助けるのが遅くなってごめんね……」
「ううん。ソフィーには、沢山守ってもらったわ。本当にありがとう」
「ソフィア・テイラー嬢だったね。姉君も被害にあわれたと聞いたよ。テイラー家にはお礼と謝罪の品をお送りすることを約束する」
「そ、そんな! 私が好きでやったことですから!」
ソフィーは、ララお兄様と目があって顔を真っ赤にして照れている。そうだよね。お兄様はかっこいいもの。
「ソフィア嬢にはお手間をかけるけど、事のあらましを詳しく教えてもらえるかな」
「はい! もちろんです!」
ソフィアからの話によると、エリザ・トワイライト伯爵令嬢は、オリオン皇太子殿下に心底惚れ込んでいたらしい。そしてトワイライト伯爵もその恋を応援していたとか。
そこで、皇太子直々に婚約の打診があった私のことが目に入ったようだ。断ったこともお気に召さなかったらしい。
エリザ様が、なぜそのような機密情報を知りえていたか、それは、オリオン皇太子の側近にエリザ様の手のものがいたようだ。
「エリザ様の指示で、オリオン皇太子殿下が書いたメリア宛の手紙を、側近の方が渡さずにいたようです。こちらが預かったお手紙です」
「う、うわぁ……。どうりで絡んで来ないと思ったのよね……」
ソフィーがどこからか出した手紙の束は、とんでもなく分厚い。皇太子、今までよく側近が手紙を出さず、裏切ってることに気がつかなかったな……。
「オリオン皇太子殿下は、メリアからの手紙の返事がなくて会ってもらえない。婚約も断られて、性器の模型しかもらえなかったので、失恋したと思っていたようです」
「いい気味だな」
「はい。そこで、エリザ様は、傷心中のオリオン殿下に、メリアのあることないことを吹き込んで、宥めて、学園のそこら中で交わっていたそうですよ。まぁオリオン皇太子殿下は、エリザ様のこと何とも思っていなかったようですが」
ソフィーもララお兄様も半笑いやめてあげて……!
「じゃあ、私に執着して嫌がらせした犯人は?」
「メリアに本当に片想いしていたらしいわよ。叶う恋のはずないと諦めていたところを、エリザ様が両想いだと誤解させたみたい。それで避妊魔法を使わずに致すのが好きって吹き込んだみたい。だからあんなに酷いことをしたんだわ。エリザ様に騙されたとはいえ、許されることじゃない……!」
人の恋心を利用するなんて酷い。あの青年もエリザ様に吹き込まれなかったら、こんなおかしなことにならなかったのかな。
「ソフィア嬢、話の腰をおってごめんね。ねぇメリア。もしかして、嫌がらせを受けていて、今日の犯行だったの?」
「え、えぇ。ララお兄様」
「何かあったらお兄様に相談するようにって言っていたよね。なんで相談しなかったんだ? そんなにお兄様は頼りないかな?」
ララお兄様が眉を下げて、悲しそうな顔をしている。
そうだ。もっと早くララお兄様に相談してれば……。
「ごめんなさい、ララお兄様。私、お友達に頼ってばかりで、家族に助けを求めればよかった。ソフィーもお姉様のことも危ない目に合わせて、ごめんなさい。ここにはいないけどカレン様とシエナ様にも改めて謝罪させてもらいます」
初めて、自分の対応が、完全ではなかったことに気がつく。
侯爵令嬢なのに、正しい判断ができなかったことを恥ずかしく思う。
「今後からは、まずお兄様に相談しなさい。わかった?」
「はい。駆けつけてくれてありがとう」
.
.
.
それから、ララお兄様が学園長とオリオン皇太子殿下らが、話を交えて、協議が行われたらしい。
その後、オリオン皇太子殿下が、王家に話を持ち帰り、この度の事件の行く末が決まった。
まず、お楽しみ部屋は、性行為禁止。仮眠室として正常に運用するよう、警備員が配置されることとなった。
次は処罰について。
ストーカー行為をしていた、青年アポロ・カーター男爵令息は、退学。また男爵領での謹慎。貴族としての権利の剥奪、平民となった。
続いて、私とカレン様を襲おうとした男子生徒二人も退学と自領での謹慎。
続いて、トワイライト伯爵家。
オリオン皇太子殿下を裏切っていた側近を行なっていた生徒は、調べに入ったところ、トワイライト伯爵家が、推薦していたらしい。
エリザの行いは、トワイライト伯爵が指示した面も認められること。元側近、トワイライト家は、皇族大逆罪が判決された。
それにより、爵位剥奪、領地没収、鉱山での強制労働が確定したと知らせが入った。
厳しい決断に言葉を失った。でも、正式なる罰が与えられて、ホッともした。
私が襲われかけたことは非公開になっているから、不思議なほど噂はされなかった。
それからというものの、オリオン皇太子殿下の付き纏いが始まったのはいうまでもない。
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