6 / 36
転生したら推しの〇〇になってた件(2021.3.17)/現代ファンタジー
しおりを挟む突然で本当に申し訳ないのだが、俺は死んだ。
どうして死んだのかは覚えていない。
ただ、気がついたら周りに何にもない、空の上みたいな空間にいて、目の前に真っ裸の少年が立っていた。
おいおい、いくら子供だとはいえ、丸見えだぞ?
こんな明るいところで、親は何をしているんだ……
少年は俺に意識があることを確認すると、にっこりと笑って、そりゃぁもう、天使のような満面の笑顔で言った。
「こんにちは。私が神です」
「は?」
「突然で申し訳ないのですが、今すぐ転生してください。異世界と、現実世界どちらがいいですか?」
「いや、ちょっと待って……!! まずはどうして俺が死んだとかの説明が先じゃないのか!?」
こういうのって普通、どうして死んだか把握した上で新しい世界に転生して物語が始まるものじゃないのか!?
「そんな説明聞いたところで、なんになるっていうんですか? あなたが生前どういう人間だったかなんて、そんなもの読者は興味ないんですよ。さっさと選んでください。どちらにしますか? 異世界ですか? 現実世界ですか?」
神と名乗った少年は満面の笑みを崩さずにそう言って、俺に選択を迫る。
「異世界か……現実世界か……?」
異世界に行ったら、モンスターとかに襲われたり、ヒロイン助けたり色々しなきゃなんねーんだよな、きっと。
でも、現実世界だったら、この前世の記憶を残したまま上手く行けば、成功して億万長者にだってなれるかもしれないなぁ……
「あーもう、判断が遅すぎます。面倒なので、ルーレットにしましょう」
「えっ!」
「はい、あー……はいはい、こっちね。いってらっしゃーい!!」
「え!? ちょっと待って!!」
結果を知らされることなく、俺の視界は真っ暗になって、目の前にいた裸の神の姿も見えなくなった————
そして、しばらく真っ暗な世界を彷徨ったあと、突然、光が差し込む。
「データの移行はしなくていいんですか?」
「大丈夫です。こっちはプライベート用なので」
「そう、気をつけてくださいね。また変なファンにはバレないように」
「はーい。気をつけます!」
俺の目の前に、信じられない光景が広がった。
少し垂れ気味の大きな二重の目、小さくて可愛い鼻、広角の上がった唇。
口元の小さな黒子。
俺がずっと推しているのアイドル・さぁちんの顔だ。
なんだこれは、最高か!?
最高なのか!?
毎日毎日SNSを見て、毎日毎日歌を聴き、動画を見て、ライブにも参加して、もちろんファンクラブにも入会している推しの顔が目の前にあるではないか!!
握手会は抽選漏れで参加できず、ライブでは今まで一番近い席でも、前から10列目以内には入れなかった推しの顔が目の前にある。
ここは天国なのか!?
「さーて、何から始めようかしらね……」
さぁちんの人差指が、俺の顔を撫でる。
はぁ……そんな……!!
さぁちんが俺にそんな!!
幸せすぎる。
もしかして俺は、さぁちんが飼っているペットに転生したのだろうか?
こんなに撫でられるってことは、小動物か何かか?
そういえば、さぁちんはハムスターを飼ってるってラジオで言ってたな……
推しのペットに転生するなんて、嬉しすぎるぞ!!
これだけ可愛がられているのだから、俺も何かしなくては!!
動かなければ!!
とりあえず声を出してみようとしたが、俺はきっと生まれたばかりなのだ、声は出なかった。
じゃぁ、体を動かそうと、手を動かしてみるが、それもなんだか上手くいかない。
ただただ、さぁちんに触れられたところに軽い電流が走ったようにビクビク反応してしまうだけだ。
幸せだけど、幸せなんだけど!!
俺はどうしたらいいんだ!?
そう思っていると、さぁちんの唇がどんどん近づいてくる。
「ヘイ、Siri……今日の運勢は?」
ん?
『今日の運勢は、大吉です』
俺の体から、無機質な女の声がする。
「やった!! 今夜のデートは上手くいきそうね。ヨシ君の番号だけ先に入力しておこう」
さぁちんは俺をどこかに置いて、ポケットから白いスマホを取り出すと、先ほど俺に触れたような手つきで、画面に触れて何やら探しているようだ。
「えーと、080の……」
左手の白いスマホの画面を見ながら、右手で俺の顔に触れる。
この動きは……まさか————
「おっけー! 早速電話しちゃおう! あ、でも先にこの番号私のだって教えないと出てくれないかもー。スマホ2台持ちって、こういうのちょっと面倒ね」
目の前に、さぁちんの耳がある。
————どうやら俺は、推しのスマホに転生したようだ。
「あ、ヨシ君? 私、沙彩だよ? もう、やだ♡ 誰とかひっどぉい♡ 彼女の声忘れたのぉ?」
それも、彼氏との連絡用のスマホだった。
何これ、辛い。
『なんだ、新しく買ったのか? もうあのストーカーは死んだんだから、気にしなくてもよかったのに』
「うん、でも、念のため♡ 本当に、ヨシ君ありがとうね、あのストーカークソキモ男……殺してくれて♡」
あぁ、そうか————
俺、このヨシ君って男に、殺されたんだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる