短編集(2020~2024)

星来香文子

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告白(2021.3.15)/ホラー

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「俺さ、実は霊感あるんだ」

「は?」

 3月中学の卒業式の翌日、真昼間の公園で、親友から突然そんな告白をされた。

 これが、普段からふざけたことを言うような、ノリのいい男からならわかるのだが、今俺の隣を歩いているこの男は、とても真面目な性格で、冗談なんて滅多に言わない。
 言っても寒いだけ……というか、俺の頭が悪すぎて、こいつのボケに使う言葉が理解できない。
 語彙力の差が激しいせいだ。

 来月入学する高校も、俺は近所で有名なバカが集まる高校だけど、こいつは県で一番の進学校。
 小学5年の時から、中学卒業までずっと同じクラスで、凸凹コンビと呼ばれていた。
 俺たちの間に、秘密なんて何もないと思っていたのに、突然そんな告白をされるなんて……

「何言ってんだよ、親友。お前、昨日の卒業式終わってからなんか変だぞ? 冗談だろ?」
「冗談じゃないよ……いいから、真面目に聞けって。例えばそう……あそこ」

 小学校の通学路だった交差点を指差す。

「あそこ、女の子が立ってるの見えるだろう?」

 でも、車がいつも通り通っているだけで、何も珍しいものはない。

「いや、何も見えねーって。それに、こんな真昼間から幽霊なんているわけないだろーよ」
「じゃぁ、あっちに座っている片足のない婆さんは?」

 次は公園のベンチを指差した。

「だから、どこにも幽霊なんていねーって。どうしたんだよ、ほんとにさ……何か変なものでも食ったか?」

 やっぱり俺には何も見えない。
 誰も座っていない、緑色のベンチがそこにあるだけだ。

「何も食べてないよ。そうか、見えないのか……それなら、仕方がない。俺もこんな話、初めて人にするんだ。信じられないだろうけど、とりあえず聞いてくれ。俺には、物心ついた頃から、人には見えないものが見えた……」
「お前、それなんかの漫画のセリフっぽくね?」
「……いいから、聞いてくれ」

 親友は真面目な顔をして、俺の目をまっすぐみて、今まで体験した怖い話を、真昼間の公園で語り始めた。

 誰かが死ぬときはいつも近くに黒い着物を着た男が立っているからわかるとか、子供の幽霊に連れられて裏山で遭難しかけたとか、天狗を見たとか…………

 あまりにも真面目な顔で、真剣に話すから俺も黙って聞いていたが、そのどれもが信じられない。
 今が夜だったら、中には背筋がゾッとしそうな話もあったが、俺には真面目なこの親友からそんな嘘みたいな体験談が次々と語られることの方が、恐怖だった。

「——だから、俺は霊感があるんだ。今まで、黙ってて悪かったと思ってる。本当に、すまない」

 最後にはなぜか謝られて、俺は全く意味がわからない。

「は? なんで俺に謝るんだよ? 意味わかんねーし、どうしたんだよ? お前、勉強しすぎて疲れてるんじゃねーか?」

「だから……そうじゃないんだって。いいか、じゃあ、もっとお前にもわかりやすく言うぞ? 俺には、霊感があるから、霊が見える。でも、お前は見えないんだよな?」

「初めからそう言ってるだろ?」

「じゃぁ、お前、自分の体、見てみろよ」

「は?」

 俺は下を向いた。



 足がない。

 腹もない。

 手もない。

 俺の体が何もない。


 雑草が生えた公園の地面しか見えなかった。


「……は?」

「ごめんな、もっと早く、言ってやればよかった。お前は、卒業式の後、あそこの交差点で————」



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