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書く家族~兄達が、私に隠れてラブコメを書いている~(2022.3.11)/現代ドラマ
しおりを挟む「あさちゅん、そろそろ時間だな」
「あぁ、そうだなあいにゃんにゃんこ——……いや、世紀末カヲル!」
私には、兄が二人いる。
それも、いい歳した大人だ。
まだ高生の私からしたら、歳の離れたこの兄達はおっさんだ。
そんなおっさん二人が、今月に入ってからなんだか様子がおかしい。
お互いのことを、よくわからない名前で呼び合い、だいたい昼の12時くらいになるとそれぞれの部屋に引きこもる。
私が気になってちょっとだけドアを開けて様子を見ていることにも気づいていないようで、真剣にパソコンで何かをやっているようだ。
部屋には、兄の独り言とキーボードを打つタイピングの音が響いていた。
「はぁ!? なんだこのお題は……!! 運営は何を考えている!?」
「くそ……これじゃぁネタが被ってるじゃないか!」
「こんなキャッチコピーじゃ、読者に読んでもらえない!」
どちらの兄も、こんなようなことを言っていた。
兄達が一体何をしているのか、さっぱりわからない。
私は首を傾げながら、自分の部屋に戻り考えた。
それでもやっぱりわからない。
あとで直接本人達に聞いてみようか……そう思いながら、スマホで最近友達に教えてもらったWeb小説が読めるサイトの新着画面を見ていた。
「……ん?」
◆ ◆ ◆
俺のラブコメが間違っているはずもないはずもなくもないけども妹のスカートの……/あさちゅん
最弱と呼ばれようと俺は異世界でエルフと一緒に村を守るために種を植え付けるだ……/世紀末カヲル
◆ ◆ ◆
「んんん!?」
この名前、さっきの!?
たった今更新されたばかりとなっているのだが、仲良く二つ並んでいる。
まさか、これなの!!?
その作者名が、まさに先ほどの兄達の会話に出てきたそのものだった。
まだこのサイトを知って日が浅い私は、それがどんな作品なのか予測もつかずにタップする。
そもそも、タイトルが長すぎるようで全部表示されていないのだから。
「は……?」
それは、どちらも2000文字くらいの短い話だった。
あさちゅんの方は青春ラブコメ、世紀末カヲルの方は異世界ファンタジー……
両方読み終わった後には、すでに星の評価がどちらもたくさんついている。
見覚えのない単語であるKAC2022で始まるタグ……
トップページに戻ったら、それが今月12時に11個発表されるお題に合わせて短編を書くというイベントのものだった。
お題ごとに5位以内に入ればリワードとかいうやつがもらえるそうだ。
私はゾッとした。
12時にごろになると部屋に引きこもるのは、これなのだと……!!
兄たちはこれをしているのだ。
「え、まって。ってことは、このラブコメ書いてるあさちゅんが……」
そう、ラブコメを書いてるあさちゅんは2番目の兄。
そして、世紀末カヲルの方は上の兄……ということになる。
あの兄が、あのおっさんがラブコメを書いている!?
それも結構えっちなやつだった。
むしろ、ゲーム好きのあの兄なら書くとしても異世界ファンタジーだと思っていた私は驚いて、信じられずに他の作品も見に行ってしまった。
女子高生と~とか、妹のおっぱいが~とかそいう系ばっかり。
上の兄の方が、純文学がどうのこうのって言っていたくせに、異世界ファンタジーというのも意外だったが……こんなラブコメをあのおっさんが書いているということの方がショックだった。
「ん? あいにゃんにゃんこ……?」
そうして、あさちゅんの他の作品のレビューを見て気がつく。
「そうだ、あいにゃんにゃんこ……とも、言われていたような……?」
今度は、あさちゅんに熱心なレビューを書いていたあいにゃんにゃんこのページを開いてみる。
◆ ◆ ◆
なぜか超絶美少女が毎日俺の制服を脱がしに来る件/あいにゃんにゃんこ
女子高生と同棲してるなんて言えないよ絶対……夏/あいにゃんにゃんこ
女神様と異世界で結婚するので、妻とは別れることにします/あいにゃんにゃんこ
◆ ◆ ◆
「んんんんん!?」
あいにゃんやんこ!?
お前もラブコメかよ!!!!!!!
私はスマホをベッドに叩きつけた。
「あのおっさん二人とも、ラブコメを書いてる!!!!」
なんということだ。
私の兄は、二人ともラブコメを書いているじゃぁないか!!
それも、めちゃくちゃ星ついてる!!
評価が高い!!!
兄達の意外な一面を知り、私はふと思う。
「……このイベント、リワードってやつもらえればお金になるんだよね……?」
兄二人がここまで人気なら、自分でもいけるのではないか……?
そう思ってしまったのだ。
「よし……」
そして、私はこの日初めて小説というものを書いてみた。
あの二人にできて、私にできないはずがない。
それから数時間後……
「おい、あいにゃんにゃ……大変だ! 兄さん!!」
「なんだ、一体どうした!?」
夕飯の準備を手伝っていたら、リビングで兄達がなにやら騒ぎ始めた。
「俺、今回1位だったのに! 抜かれた!! 一瞬で抜かれた!!」
「な、なんだって!?」
何をそんなに騒いでいるのかわからず、私は食器をテーブルに並べながら兄達の方を見た。
スマホの画面を見ながら、二人とも顔面蒼白になっている。
「だ、だれだ!? 誰だこいつ!! なんだこの星の数!! 俺たちの倍じゃないか!!!」
「誰だよ、このにゃんちゅん弟って!!!」
「現役の高校生って、プロフに書いてるぞ!?」
私の書いたラブコメが、兄達をたった2時間で抜いたらしい。
「ちくしょう!! なんでだよ!! こんな新入りに、どうして俺たちが……!!」
そりゃぁ、あんた達の弟ですから。
嘆いている兄達に、心の中でそう呟いた。
こんな楽しいことを、可愛い可愛い末っ子の弟に教えてくれなかった罰だよ。
「もう、そんなことよりご飯食べよう? あさちゅん兄さん、あいにゃんにゃんこ兄さん」
「えっ!?」
「おま……どうして、それを————!?」
終
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