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04.夢から覚めて
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久し振りの大学は、なんとも普通でいつも通りだった。退屈さと落ち着かなさと、騒々しさとくたびれた気配がする。
「ふぅ……変わらないな」
正門の前で、まるで遠い昔のことを懐かしむように目を細めて腕を組んでいるが、康平はただ失恋の傷を癒そうとサボっていただけだ。それもたかだか一週間。当然ながら、大学の空気が変わるはずもない。
横を通る学生達が、格好つけるように仁王立ちする康平を避けるように通りすぎていく。
「なぁにしてんだよ朝から」
「ん? おお、久し振り! 元気だったか?」
通行の邪魔になりながら悦に入る康平を現実へ引き戻したのは、後ろから聞こえた丹辺の声だった。
丹辺環は、康平の悪友だ。高校時代に塾で知り合い、志望校が同じだという話から仲良くなって、今ではすっかり気心知れて互いに遠慮がない。短い金髪を刈り上げている丹辺は、やや強面なのもあって近付きがたい雰囲気を醸し出しているが、明るく気の良い男だ。時々空気は読まないしデリカシーもないけれど。良いやつではあるが、清楚な彼女と中学の頃から付き合っていることだけは康平には憎くもあった。
かけられた声に康平が髪をかきあげながら振り返ると、丹辺は少し驚いたような顔をした。
「いや、こっちの台詞なんだけれども。なんで上機嫌? 昨日のメッセといい遂に気が触れて……?」
丹辺は、一週間前に康平がフラれた場面にも居合わせている。それどころかむしろ康平の隣に座っていた。康平の傷心中にも、気遣いなのかからかうためなのかメッセージをくれてはいたのだが、昨日の康平の『春が来た』は流石に心配したらしい。
「失礼だなお前」
ふうやれやれ、と妙に勿体ぶってわざとらしく溜息を吐く康平に、丹辺は少し眉を顰めた。
「大丈夫か、頭」
「おい言い方があんだろうが」
「あはは、悪い悪い」
二人が軽口を叩き始めたことで、康平は不審者ではなくてちょっと可哀想なやつだという印象に変わったのだろう。遠巻きにしていた学生が、安心したように距離を詰めて動き出す。ようやくスムーズに動き出した人波は、二人のことも学内掲示板の方へ押し出した。
掲示板には様々なものが張り出される。正式な申し出をマメに行うサークルの勧誘だとか、部活の勧誘、講演会のお知らせ、それから休講情報など。休講情報についてはスマホでも確認はできるが、稀に更新が追い付いていないこともある。そのため、休講を期待してかせざるか、一度は確認するのが学生たちのルーティンになっている。
今日は康平も二限目から五限まで講義が入っている。丹辺もほとんど同じ講義で、その内四限には、例の巫にフラれた講堂での講義だ。
四限は休みになってないだろうか。チラリとよぎった期待に康平は掲示板を見たが、そこまで康平に都合の良いことにはなっていなかった。
「それで、一週間何してたん? 傷心旅行?」
「そんな金ねえよ、お前じゃあるまいし」
「だってお前全然連絡寄越さないし。あ、ノートのコピーいる?」
「丹辺様、サンキューな」
ぴっと指を二本揃えて古い漫画でしか見ないようなウィンクをした康平に、もう一度丹辺は訝しむように片眉を持ち上げた。
「お前本当にどうした? もしや好みじゃないって言われたのが、ショックすぎて……」
「違ぇわ! それに、巫ちゃんは俳優の追っかけに忙しかっただけだもん!」
「もんはキモい。まあ、タイミング悪かったよな。せめてニュースのあとならなぁ」
「あ? ニュース?」
「知らないん? ちょっと、ほら、これ」
よく分からない格好付けを止めて首を傾げた康平に、丹辺が一度立ち止まる。そのまま康平を道の端へ引き摺ると、ポケットから取り出したスマホに何かを入力して手渡してきた。
「ほい。佐々原遊利、丁度一昨日から短期休養の発表だってよ」
丹辺のスマホに表示されていたのは、トップニュースの記事だった。
「……え?」
佐々原遊利、短期休養を発表。
表示された言葉は丹辺の言ったままの内容で、特別康平の気を惹くようなことではない。それよりも、どこかのマンションから出てきたところを撮影されたらしい佐々原遊利の小さな顔写真。そちらが問題だった。
「休養発表のあとだったらもうちょっとこう、落ち込んでるところ慰めるとかできたかもしんないのに。お前って本当にタイミングの合わない男っていうか……ドンマイ」
慰めるように康平の肩を叩く丹辺の言葉が、上手く頭の中に入ってこない。
康平は、記事の中でカメラから顔を逸らす佐々原遊利の、疲れたような、困ったような横顔を食い入るように見詰めていた。
ぎこちなく笑う口元、アンニュイで不安そうな目、ぎゅっと微かに眉間に寄った皴も、驚きと戸惑いと困惑が入り混じったような表情も。
どれもこれも、昨日の時点で気が付かなかったのが不思議なほど、ユキに瓜二つだった。
髪を短くしたユキがニュースの記事になっているようにしか見えない。かこまで寸分違わず同じ表情をする人間がいるとも思えずに、康平は頭がぐらぐらと揺れるのを感じた。
信じたくない。しかし、ユキにしか見えない。そういえば苗字が同じだ。いや兄弟とか。佐々原遊利に兄弟はいなかった。
次から次へと頭の中に浮かぶユキ=佐々原遊利の可能性が浮かんでは、代わりに康平の口から絞り出すような息が漏れる。
「ぁ……ぅ、あ……あ……」
「康平? まだ失恋パーティーキツイか?」
そのあまりにも苦し気な康平の様子に、からかい半分励まそうとしていた丹辺も本気で案じるような声を掛けた。
いつの間にか泣きそうになっていた康平は、ゆっくりと顔を上げると、震える手でスマホを丹辺へ付き出した。
「丹辺……悪いんだけど、今日も代返しといてくんね……」
掠れた声でそう呟くと、康平はそのままもう一度正門の方へ向きを変えた。
確かめなくてはならない。いや、間違いだと確かめたい。人生最高の奇跡は真実であって欲しい。
「は? いや、今日もサボんの? 大丈夫か? 顔色悪いけど」
「大丈夫じゃねえよオレの純情の危機だよ!!」
悲鳴のようにそう叫び、康平は祈るような気持ちで勢いよく駅へと駆け出した。
通勤ラッシュの落ち着いた駅前を飛ぶように走り抜け、電車の中では昨日の出会いをくれた神を恨んだり祈ったりしながら、康平は信じられないような速度で自宅のマンションまで戻ってきた。遅刻しそうになった時より、一〇分は早いだろう。
飛び出すようにエレベーターを降りて、自宅の隣に向かえば、扉越しに微かなカレーの匂いが漂っていた。
この扉の向こうに真実がある。康平はきゅっと唇を噛み、走った汗か冷や汗か分からない濡れた手を、ズボンの後ろで拭った。
震える指先を伸ばし、一度息を吸い込んでから。康平はゆっくりと五〇七号室のインターホンを押した。
キンコーン、と鳴る軽い音。扉越しに聞こえた小さな返事は、昨日より少し低い気がする。康平の目の奥が熱くなった。
「ユキちゃん……」
どうかそうであってくれ。
康平がドアの覗き窓を見詰めながら呟くのと同じタイミングで、近付いてくる足音が扉の前で止まった。
『はい……あ、えっ。こ、小山さん、どうしました?』
ドア越しに、くぐもったユキの声がする。
冷静な気持ちで聞けば、それは確かに男の声にも思えて、康平はくしゃくしゃに顔を歪めたまま深々と頭を下げた。
「今すぐ……キミの顔を見せてほしい……」
『ええ?! ちょ、ちょっと、今はあのっ。ええと、えっと、シャワー、そうシャワーを浴びたばかりで! お会いできる姿じゃなくて!』
一瞬。ほんの一瞬だけ、康平の頭の中にはユキの風呂上がりの姿が浮かんだが、そこに理性が佐々原遊利の姿を被せてきた。想像上のユキの柔らかそうな裸体の上に鎮座する、教師役をしたという佐々原遊利の生意気な俺様風の表情。
自分で想像したその姿に打ちのめされ、康平は叫びながら膝から崩れ落ちた。
「頼むよ……ッ。キミが! キミは佐々原遊利じゃないって、オレを安心させてくれよぉ!!」
その言葉に、扉の奥でガタガタと慌ただしく動く音がしたかと思えば、ガチャンと鍵が開く音がする。
「ちょ、ちょっと静かに! とっ、取りあえず中で話をするから……!」
ユキのような、知らない男のような声が聞こえてきて、康平は小刻みに震えながら顔を上げた。
そこに立っていたのは、薄手のシャツに紺のジーンズを履いた綺麗な顔の男……佐々原遊利だった。
「ふぅ……変わらないな」
正門の前で、まるで遠い昔のことを懐かしむように目を細めて腕を組んでいるが、康平はただ失恋の傷を癒そうとサボっていただけだ。それもたかだか一週間。当然ながら、大学の空気が変わるはずもない。
横を通る学生達が、格好つけるように仁王立ちする康平を避けるように通りすぎていく。
「なぁにしてんだよ朝から」
「ん? おお、久し振り! 元気だったか?」
通行の邪魔になりながら悦に入る康平を現実へ引き戻したのは、後ろから聞こえた丹辺の声だった。
丹辺環は、康平の悪友だ。高校時代に塾で知り合い、志望校が同じだという話から仲良くなって、今ではすっかり気心知れて互いに遠慮がない。短い金髪を刈り上げている丹辺は、やや強面なのもあって近付きがたい雰囲気を醸し出しているが、明るく気の良い男だ。時々空気は読まないしデリカシーもないけれど。良いやつではあるが、清楚な彼女と中学の頃から付き合っていることだけは康平には憎くもあった。
かけられた声に康平が髪をかきあげながら振り返ると、丹辺は少し驚いたような顔をした。
「いや、こっちの台詞なんだけれども。なんで上機嫌? 昨日のメッセといい遂に気が触れて……?」
丹辺は、一週間前に康平がフラれた場面にも居合わせている。それどころかむしろ康平の隣に座っていた。康平の傷心中にも、気遣いなのかからかうためなのかメッセージをくれてはいたのだが、昨日の康平の『春が来た』は流石に心配したらしい。
「失礼だなお前」
ふうやれやれ、と妙に勿体ぶってわざとらしく溜息を吐く康平に、丹辺は少し眉を顰めた。
「大丈夫か、頭」
「おい言い方があんだろうが」
「あはは、悪い悪い」
二人が軽口を叩き始めたことで、康平は不審者ではなくてちょっと可哀想なやつだという印象に変わったのだろう。遠巻きにしていた学生が、安心したように距離を詰めて動き出す。ようやくスムーズに動き出した人波は、二人のことも学内掲示板の方へ押し出した。
掲示板には様々なものが張り出される。正式な申し出をマメに行うサークルの勧誘だとか、部活の勧誘、講演会のお知らせ、それから休講情報など。休講情報についてはスマホでも確認はできるが、稀に更新が追い付いていないこともある。そのため、休講を期待してかせざるか、一度は確認するのが学生たちのルーティンになっている。
今日は康平も二限目から五限まで講義が入っている。丹辺もほとんど同じ講義で、その内四限には、例の巫にフラれた講堂での講義だ。
四限は休みになってないだろうか。チラリとよぎった期待に康平は掲示板を見たが、そこまで康平に都合の良いことにはなっていなかった。
「それで、一週間何してたん? 傷心旅行?」
「そんな金ねえよ、お前じゃあるまいし」
「だってお前全然連絡寄越さないし。あ、ノートのコピーいる?」
「丹辺様、サンキューな」
ぴっと指を二本揃えて古い漫画でしか見ないようなウィンクをした康平に、もう一度丹辺は訝しむように片眉を持ち上げた。
「お前本当にどうした? もしや好みじゃないって言われたのが、ショックすぎて……」
「違ぇわ! それに、巫ちゃんは俳優の追っかけに忙しかっただけだもん!」
「もんはキモい。まあ、タイミング悪かったよな。せめてニュースのあとならなぁ」
「あ? ニュース?」
「知らないん? ちょっと、ほら、これ」
よく分からない格好付けを止めて首を傾げた康平に、丹辺が一度立ち止まる。そのまま康平を道の端へ引き摺ると、ポケットから取り出したスマホに何かを入力して手渡してきた。
「ほい。佐々原遊利、丁度一昨日から短期休養の発表だってよ」
丹辺のスマホに表示されていたのは、トップニュースの記事だった。
「……え?」
佐々原遊利、短期休養を発表。
表示された言葉は丹辺の言ったままの内容で、特別康平の気を惹くようなことではない。それよりも、どこかのマンションから出てきたところを撮影されたらしい佐々原遊利の小さな顔写真。そちらが問題だった。
「休養発表のあとだったらもうちょっとこう、落ち込んでるところ慰めるとかできたかもしんないのに。お前って本当にタイミングの合わない男っていうか……ドンマイ」
慰めるように康平の肩を叩く丹辺の言葉が、上手く頭の中に入ってこない。
康平は、記事の中でカメラから顔を逸らす佐々原遊利の、疲れたような、困ったような横顔を食い入るように見詰めていた。
ぎこちなく笑う口元、アンニュイで不安そうな目、ぎゅっと微かに眉間に寄った皴も、驚きと戸惑いと困惑が入り混じったような表情も。
どれもこれも、昨日の時点で気が付かなかったのが不思議なほど、ユキに瓜二つだった。
髪を短くしたユキがニュースの記事になっているようにしか見えない。かこまで寸分違わず同じ表情をする人間がいるとも思えずに、康平は頭がぐらぐらと揺れるのを感じた。
信じたくない。しかし、ユキにしか見えない。そういえば苗字が同じだ。いや兄弟とか。佐々原遊利に兄弟はいなかった。
次から次へと頭の中に浮かぶユキ=佐々原遊利の可能性が浮かんでは、代わりに康平の口から絞り出すような息が漏れる。
「ぁ……ぅ、あ……あ……」
「康平? まだ失恋パーティーキツイか?」
そのあまりにも苦し気な康平の様子に、からかい半分励まそうとしていた丹辺も本気で案じるような声を掛けた。
いつの間にか泣きそうになっていた康平は、ゆっくりと顔を上げると、震える手でスマホを丹辺へ付き出した。
「丹辺……悪いんだけど、今日も代返しといてくんね……」
掠れた声でそう呟くと、康平はそのままもう一度正門の方へ向きを変えた。
確かめなくてはならない。いや、間違いだと確かめたい。人生最高の奇跡は真実であって欲しい。
「は? いや、今日もサボんの? 大丈夫か? 顔色悪いけど」
「大丈夫じゃねえよオレの純情の危機だよ!!」
悲鳴のようにそう叫び、康平は祈るような気持ちで勢いよく駅へと駆け出した。
通勤ラッシュの落ち着いた駅前を飛ぶように走り抜け、電車の中では昨日の出会いをくれた神を恨んだり祈ったりしながら、康平は信じられないような速度で自宅のマンションまで戻ってきた。遅刻しそうになった時より、一〇分は早いだろう。
飛び出すようにエレベーターを降りて、自宅の隣に向かえば、扉越しに微かなカレーの匂いが漂っていた。
この扉の向こうに真実がある。康平はきゅっと唇を噛み、走った汗か冷や汗か分からない濡れた手を、ズボンの後ろで拭った。
震える指先を伸ばし、一度息を吸い込んでから。康平はゆっくりと五〇七号室のインターホンを押した。
キンコーン、と鳴る軽い音。扉越しに聞こえた小さな返事は、昨日より少し低い気がする。康平の目の奥が熱くなった。
「ユキちゃん……」
どうかそうであってくれ。
康平がドアの覗き窓を見詰めながら呟くのと同じタイミングで、近付いてくる足音が扉の前で止まった。
『はい……あ、えっ。こ、小山さん、どうしました?』
ドア越しに、くぐもったユキの声がする。
冷静な気持ちで聞けば、それは確かに男の声にも思えて、康平はくしゃくしゃに顔を歪めたまま深々と頭を下げた。
「今すぐ……キミの顔を見せてほしい……」
『ええ?! ちょ、ちょっと、今はあのっ。ええと、えっと、シャワー、そうシャワーを浴びたばかりで! お会いできる姿じゃなくて!』
一瞬。ほんの一瞬だけ、康平の頭の中にはユキの風呂上がりの姿が浮かんだが、そこに理性が佐々原遊利の姿を被せてきた。想像上のユキの柔らかそうな裸体の上に鎮座する、教師役をしたという佐々原遊利の生意気な俺様風の表情。
自分で想像したその姿に打ちのめされ、康平は叫びながら膝から崩れ落ちた。
「頼むよ……ッ。キミが! キミは佐々原遊利じゃないって、オレを安心させてくれよぉ!!」
その言葉に、扉の奥でガタガタと慌ただしく動く音がしたかと思えば、ガチャンと鍵が開く音がする。
「ちょ、ちょっと静かに! とっ、取りあえず中で話をするから……!」
ユキのような、知らない男のような声が聞こえてきて、康平は小刻みに震えながら顔を上げた。
そこに立っていたのは、薄手のシャツに紺のジーンズを履いた綺麗な顔の男……佐々原遊利だった。
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